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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第18話 敵

「それじゃ、僕はこっち側の魔法陣を破壊してくる」
「私はこっち側ね」

夜、僕たちは久しぶりに魔法陣の破壊に動くことになった。
互いに拳を合わせて、僕たちはそれぞれ別の方向に足を進める。
その結果、僕はひどい現状を目の当たりにした。

「これで10個目……広範囲に仕掛けているようだな」

千軒院やほかの魔族たちの話では44の魔法陣が市街地に仕掛けられている。

「もう2時間30分。リミットは30分か」

たった10個だけでこれほど時間が掛かるということも想定外だった。
その理由は、魔法陣にあった。
この魔法陣はリ・クリエを加速させる可能性のあるものだということが分かった。
それと同時に、リ・クリエを安定させて発動できるようにする効果があることも。

(リ・クリエの加速の効果はともかく安定化の方は残しておいた方がいいな)

リ・クリエは強大な力を秘めている。
何よりリ・クリエは、代行者として天使・魔族・人間を憑代にする。
その為、普通では強大な力は手に余る。
それを安定化させることで、リ・クリエの成就がされやすくなると向こうは考えたのだろうが、それは逆にリ・クリエを止める際にこちらに有利になる。
暴走状態だと、止めるのに苦労するからだ。
よって僕が取った判断はそばにリ・クリエの進行を遅らせる効果等を持つ魔法陣の構築だった。
幸い、魔法陣の生成するスキルを持っていた僕は、それが可能だった。
神楽にはそれが分かったのと同時に念話で伝えた。
神楽には魔法陣の生成スキルが皆無だったため、九条家で待機してもらうことにした。

「天使の印を施せば……よし完成」

魔法陣に天使の印を結ぶことによって、誰にも破壊されないようにする。
天使の印は別名封印とも呼ばれ、その効果は人間にはもちろん魔族が破壊はおろか読み取ることが出来ない。
そして天使の文言(天界語)は、編んだ人物より下の者には解読こともできない。
僕は天使のさらに上の神族、更にその中でも最上級の力を持つ。
故に、これを破壊するのは神楽か創造の神であるノヴァの二人しか不可能だ。

「っと、タイムリミット」

時計を確認した僕は、合流予定時刻になったこと気付いた。
この日は結局10個の魔法陣の対処しかできなかった。

(最高神が聞いて呆れるな)

効率の悪さに、自己嫌悪を覚えながら僕は帰路につく。
そう、付くはずだった。










「「「「にゃー!」」」」
「っ!?」

流星学園に入って九条家の方に足を進めて行くと、僕は4体の魔族に囲まれた。

(姿が今までの魔族とは違う……第三勢力か)

その魔族は頭に耳、後ろの方には尻尾までついている、所謂猫のようなものだった。
何時もであれば一瞬でけりをつけるだろう。
4体程度で後れを取るほど弱くはないのだ。
だが……

(監視されてるな)

視られているような感覚が、僕に行動させるのを止める。

(今ここで天使の力も、魔族の力も使えない)

もし天使だということが知られれば、向こうは確実に動き出すだろう。
何せ、向こうには”天使”という仲間がいるのだから。
僕の事を知っているとは限らないが、知っていたとしたらまずい。
魔族の場合も同様だ。
僕はただの人間だと思わせておく必要がある。
そうすれば、相手には油断が生まれ、敵対した際に戦況はこっちに有利となる。

「だったら、やることは一つだけだ」

僕は懐から二本の刀を抜いた。
その刀は耐久力を少しばかり上げただけの、ただの刀だ。

「さあ、掛かってこい!」
「「「「にゃー!!」」」」

僕の声と同時に、猫魔族たちが鳴き声をあげて動き出す。
僕に迫るは紅く燃え上がる炎の魔弾と雷。

「ふっ!」

僕はそれを刀で捌く。
すると魔弾と雷はまるで最初から無かったかのように相殺された。

「「にゃ!?」」

攻撃してきた猫魔族たちは、驚きをあらわにする。

「高の月武術、」

その隙に僕は魔族たちの背後に移動する。

「斬っ!」

目にも留まらぬ速さで剣を数回振りきる。
それは僕が昔使っていた武術であった。

「やっ!」

その隙を狙っていた他の猫魔族たちの攻撃も、同様にさばくと素早く元いた場所に移動する。

(相手は隊列を組んでいるか。少々厄介だが何の問題もない)

相手にダメージを少しでは与えられているのだから、それは間違いなく言える。
だが、このままではじり貧だ。

(他に仲間を呼ばれでもしたら今のままでは戦局は大きく不利になる)

そう判断した僕は、撤退を取る。
神である僕が敵から尻尾を巻いて逃げるというのは、少々はばかられたが戦略的観点からとると、背に腹は代えられない。

「見なさいッ!」

僕は威勢よく叫ぶと、懐からカメラを取り出した。
それはポンポコというお店の主人の人から、ただで頂いたインスタントカメラだった。
最初は遠慮したが、『処分置き場所がなくて処分しようと思ってたところなんだ』という言葉でお言葉に甘えて頂くことにした。
ちなみにさすがにそれで帰るのは申し訳なかったので、他にも役に立ちそうなものをいくつかかったが。

閑話休題。

今、猫魔族たちの視線は僕の手にあるカメラに向けられている。
僕はそのカメラのシャッターを押す。

「「「「ニャー!!」」」」

次の瞬間辺りに走った閃光に、猫魔族たちは悲鳴を上げた。
それはカメラが発したフラッシュによるものだった。
その閃光によって猫魔族たちの視界は一瞬ではあるが塞がれた。
その一瞬が僕にとってはかなりの好機となった。
僕は素早く近くの茂みに飛び込んで身をひそめる。

(それにしても、監視されているとは………これは今後の活動方式を変える必要があるな)

近くをうろついている猫魔族に見つからないように息をひそめながら、僕はそう考えをめぐらすのであった。

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