健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第23話 過去(前編)

それは6年前の事だった。

「……ん」

俺は唐突に目が覚めた。

(あれ?)

俺が疑問に思ったのは起きたのに目の前が真っ暗なこと。
夜だと思ったが、周りの喧騒からしてそれは違うと分かった。
そして次は腕が動かくのに足が動かないこと。
そこで俺は気付いた。
俺は色々な物を失ったのだろうと。
それは体の自由だ。
もう俺は人の顔を見たり動いたりすることはできない。
不思議と、悲しみなんてなかった。
いや、悲しむことが出来なかったと言うのが正しいのかもしれない。









その後医者に診て貰って言われたのが、両目の失明と下半身不随であった。
医者曰く、リハビリをする予定だが、しても回復する見込みがないとのこと。
まあ、目が見えないのにどうやってリハビリをするんだって話だが。
そして俺は2年間眠り続けていたらしい。

(どうしたものか)

俺はこれからどうしようかと考えていた。
それから数週間後。
目が見えない、下半身不随の生活に慣れてきた俺は、いつものように垂れ流し状態のニュースを聞いていた。
そんな時、人が入ってくる気配がした。
しかも俺のベッドの真ん前で立ちどまっている。

「誰?」
「………真人、見舞いに来たぞ」

俺の問いかけに答えたのは、声色からして健司だった。
健司はゆっくりと俺の横に移動すると、そこにあったパイプいすのようなものに腰かけた。

「どうだ? 調子は?」
「ああ、もう最高だよ。医者も完治まであと少しだって言ってたし」

俺は健司の問いかけに笑顔で答えた。
ただ、自分でも笑顔なのかは分からない。
体の節々に痛みは残るものの、日常生活が出来るほどには回復したと言うのが医者の話だ。

「まあ、女性を守ったんだから名誉ある傷だよ」
「ッ!」

俺の言葉に、健司は息をのむと逃げるように去って行った。

「………やれやれ」

俺はそんな健司に、呆れが半分相変わらずさが半分の気持ちでつぶやいた。
その後、退院するまで健司はお見舞いに来ることはなかった。

拍手[0回]

PR

コメント

お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カウンター

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

最新CM

[03/25 イヴァ]
[01/14 イヴァ]
[10/07 NONAME]
[10/06 ペンネーム不詳。場合によっては明かします。]
[08/28 TR]

ブログ内検索

バーコード

コガネモチ

P R