それは6年前の事だった。
「……ん」
俺は唐突に目が覚めた。
(あれ?)
俺が疑問に思ったのは起きたのに目の前が真っ暗なこと。
夜だと思ったが、周りの喧騒からしてそれは違うと分かった。
そして次は腕が動かくのに足が動かないこと。
そこで俺は気付いた。
俺は色々な物を失ったのだろうと。
それは体の自由だ。
もう俺は人の顔を見たり動いたりすることはできない。
不思議と、悲しみなんてなかった。
いや、悲しむことが出来なかったと言うのが正しいのかもしれない。
その後医者に診て貰って言われたのが、両目の失明と下半身不随であった。
医者曰く、リハビリをする予定だが、しても回復する見込みがないとのこと。
まあ、目が見えないのにどうやってリハビリをするんだって話だが。
そして俺は2年間眠り続けていたらしい。
(どうしたものか)
俺はこれからどうしようかと考えていた。
それから数週間後。
目が見えない、下半身不随の生活に慣れてきた俺は、いつものように垂れ流し状態のニュースを聞いていた。
そんな時、人が入ってくる気配がした。
しかも俺のベッドの真ん前で立ちどまっている。
「誰?」
「………真人、見舞いに来たぞ」
俺の問いかけに答えたのは、声色からして健司だった。
健司はゆっくりと俺の横に移動すると、そこにあったパイプいすのようなものに腰かけた。
「どうだ? 調子は?」
「ああ、もう最高だよ。医者も完治まであと少しだって言ってたし」
俺は健司の問いかけに笑顔で答えた。
ただ、自分でも笑顔なのかは分からない。
体の節々に痛みは残るものの、日常生活が出来るほどには回復したと言うのが医者の話だ。
「まあ、女性を守ったんだから名誉ある傷だよ」
「ッ!」
俺の言葉に、健司は息をのむと逃げるように去って行った。
「………やれやれ」
俺はそんな健司に、呆れが半分相変わらずさが半分の気持ちでつぶやいた。
その後、退院するまで健司はお見舞いに来ることはなかった。
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