健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第20話 緊急出動と深まる溝

俺の意識が戻ると、場所を確認するために目に魔力を通す。

「ん……」

視力を取り戻した俺が見たのは、無機質な天井だった。
そして周りを見渡して、置かれている器材から医務室であることが分かった。
医務官であるシャマルがいないことから、用があった出ているのだと解釈した。
上半身を起こして、腕の力でベッドの端の方に移動すると、壁に掛けられていた黒いステッキを手にベッドから起き上がった。
ベッドメイキングをしている最中、出入り口のドアが開く音がしたので振り返ると、そこには健司の姿があった。

「お、目が覚めたみたいだな」
「ああ、おかげさまでな」

健司の言葉に、俺はそう答えるとベッドメイキングを続ける。

「シャマルが怒ってたぞ、魔力回路に負荷をかける戦いしていたからな」
「げッ!? こりゃ後でお説教だな」
「ははは、諦めろ」

俺の表情を見た健司が笑いながらそう言う。
他人事だと思ってるな。

「ところで……だ」
「………こいつの事か?」

健司の声色がいつになく真面目なものになったので、俺はその内容に検討を付け親指で俺の横……カーテンがかかっている場所を指した。
おそらくそこにはティアナがいるはずだ。

「それもあるが、あの後の事を説明しないといけないだろ」

健司の言葉に納得しながら、俺は事の顛末を聞いた。
まず、あの後魔導殺しもどきの矢によって、強制解除に成功した。
ただ俺とティアナの場合は気を失っていたため医務室に運ばれた。

「なのはかなり思いつめてたぞ。自分のせいでお前に怪我をさせたってな」
「………」

俺は健司の言葉に、何も言えなかった。
健司の言葉の裏には、話し合えと言っているのは丸わかりだ。
そして俺は居た堪れなくなり、医務室を後にする。
空模様からもう夕方だろう。
俺は屋上に移動すると、オレンジ色に染まる空を見上げていた。










それからどのくらいの時間が経ったのか、もう辺りは真っ暗だった。
そんな時、アラートが鳴り響いた。

「こんな時に緊急出動かよ」

俺は愚痴りながら、ロングアーチのいる管制ルームに向かった。










「航空Ⅱ型、4機編隊が3体、12機編隊が1体」
「発見時から変わらず、それぞれ別の場所で旋回機動中です」

どうやらガジェットが現れたようで、モニターにはただぐるぐると同じ場所を旋回しているガジェットの姿が映し出されていた。

「場所はなんにもない海上。レリックの反応もなければ、付近には海上施設も船もない・・・」
「まるで撃ち落としに来いと誘っているような……」
「そやね……」

ロングアーチの副官であるグリフィスさんの言葉に、はやても頷いた。
確かにそう言う印象も持てなくもない。

「テスタロッサ・ハラオウン執務官、どう見る?」
「犯人がスカリエッティなら、こちらの動きとか航空戦力を探りたいんだと思う」

はやての問いかけにフェイトが答えた。

「この状況ならこっちは超長距離攻撃を放り込めば済むわけやし……」
「一撃でクリアですよ」

突然はやての横から出てきたリインが、元気いっぱいに答える。

「うん。でも、だからこそ奥の手は見せないほうがいいかなって」
「まあ実際、この程度のことで隊長達のリミッター解除いうわけにもいかへんしな……」

確かにわざわざ相手がこっちの戦力を見たいと思っているのにそれに乗る必要もない。

「高町教導官と山本二等空佐はどうやろ?」
「こっちの戦力調査が目的ならなるべく新しい情報を出さずに今までと同じやり方で片付けちゃう、かな」
「俺も同じく。相手の思惑に乗る必要もないだろうし、今まで通りにやることが一番かと」

俺となのはは、お互いに意見を述べる。
そしてはやてはグリフィスさんと頷くと

「それで行こう」

そう指示を出すのであった。










場所は変わってヘリポート前。
そこには部隊長を除く隊長陣と、フォワードたちの姿があった。

「今回は空戦だから出撃は私とフェイト隊長とヴィータ副隊長、山本二等空佐の四人」

健司は念のためと言う事で、この場に残ってもらうことにした。

「みんなはロビーで出動待機ね」
「そっちの指揮はシグナムだ。指揮を頼むぞ」
「「「はい」」」

なのは達の言葉に元気よく返事をするフォワードだったが、ティアナだけは浮かない様子であった。

「あぁ、それからティアナ……ティアナは出動待機から外れてとこうか」
「えっ……!?」

それを見たなのははティアナに出動待機からの除外を伝えた。
確かに今の様子では、任務に出たところで彼女を命の危険にさらすことは目に見えている。

「その方がいいな。そうしとけ」
「今夜は体調も魔力もベストじゃないだろうし……」

ヴィータもそれに賛同し、なのはは理由を口にする。

「……言うことを聞かない奴は、使えないってことですか?」
「はぁ……自分で言っててわからない? あたりまえのことだよ、それ」

ティアナの言葉に、なのはは表情を厳しくして答える。

「現場での指示や命令は聞いてます。教導だって、ちゃんとサボらずやってます。それ以外の場所での努力まで教えられたとおりじゃないとダメなんですかっ!?」

ティアナは涙をにじませながらなのはに詰め寄るが、言っていることに俺は納得も出来ない。

「私はなのはさんや山本二等空佐たちみたいにエリートじゃないし、スバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない。少しくらい無茶したって、死ぬ気でやらなきゃ強くなんてなれないじゃないですかっ!?」

俺は我慢の限界を超えて右手を強く握りしめるとティアナの方に向かう。
そんな時、鈍い音が響いた。
その音の主は……

「健司?」

右手を振りかぶっていた健司だった。

「餓鬼の駄々に付き合うから付け上がる。出撃するものはすぐに出撃しろ。ヴァイス陸曹、もう行けるか?」
「乗り込んでいただけりゃあ、すぐにでも」

健司の問いかけに、ヴァイスはヘリから顔を出して答える。

【こっちは任せておけ】
「三人とも、ここは井上一等空尉に任せて出撃しよう(分かった)」
「あ、ああ」
健司の念話に答え、俺達はヘリに乗り込んで出撃するのであった。

(それにしても、健司があそこまで怒った顔、初めて見たな)

俺は、向っている道中、そんな事を思っていた。

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