「アクセルシュート!!」
「っと! ライトフレイヤ―!!」
なのはのアクセルシュートを躱し、なのは目がけて矢を5本射る。
『protection』
レイジングハートにより自動展開されたシールドに、俺の射た矢が激しくぶつかり合う。
なのはは、それを上空に移動して躱そうとするが、俺のライトフレイヤーは追尾能力もあるのだ。
よって、無駄だ。
そう思った瞬間だった。
魔法弾によって、矢は真っ二つにへし折られた。
(なるほど、俺が躱したのを防御として使ったのか)
俺は即座に納得すると、次の手を打つ。
だが……
「甘いよ、真人君」
「ちぃッ!」
俺に迫ってくるのは、5発のアクセルシュート。
「シールプロテクション!!」
俺は慌てて防御魔法を展開する。
「ッく!」
言葉には表しがたい圧力が、俺を襲う。
なんとかそれに耐えきれた俺だが、相手は待ってくれなかった。
「ディバイン、バスター!!!」
「ッげ!?」
なのはの十八番である『ディバインバスター』が俺に向けて放たれた。
シールプロテクションを展開する余裕もなく、俺はとっさにクリエイトを杖形態に戻すと前方……迫りくる桃色の砲撃の方へと掲げた。
「神性典・第1章、転輪せし円陣!」
俺の目の前に白銀の円が展開する。
それと同時に、ディバインバスターが円に触れた。
その次の瞬間、俺に迫っていたディバインバスターはなのはの方へと方向を変え向かって行く。
「なッ!?」
その光景に、なのはは驚きを隠せ無かったようだ。
だが、それでも経験によりなのははシールドを展開して防御する。
その為に土煙が立ち上がる。
「もう終わりにしないか?」
土煙が晴れかかった時、俺は何はにそう切り出す。
さっきはああも言ったが、実の所仲間同士と争うのは嫌なのだ。
其れゆえの停戦勧告であった。
だが………
「馬鹿にしないで!!!」
なのはの答えは、NOであった。
俺は致し方ないとばかりに、矢を射ようとした時だった。
「な、バインド!?」
突然の桜色のバインドに、俺は両腕両足を大の字に拘束された。
そして大きな魔力の流れを感じた終えが、恐る恐るその方向を見ると、ものすごく巨大な桜色の魔力球が出来つつあった。
「まさか、あれは………」
俺はそれに見覚えがあった。
彼女を白い悪魔とまで言わしめた要因の一つにして、彼女の必殺技。
その名も
「スターライト・ブレイカ―!?」
であった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「あれはまずいぞ!」
「いくらなんでもあんなのを食らえばただじゃすまないよ!!」
なのはが展開する『スターライト・ブレイカ―』を見た二人が慌てふためく。
その中、俺は魔力で構成した弓に、真人から渡されていた矢をセットしていた。
「執行人、四人を俺から離して」
「了解」
俺の頼み事に、執行人は四人を俺から少し離れた端の方に移動させた。
「何をするんですか、執行人さん!」
「お前達はそこから動くなよ? 死にたくなければな」
俺は徐に上空のやや浅いところに狙いを定めると、矢に魔力を注ぎ込む。
そして俺は、真人から矢を渡された時の事を思い起こした。
それは今日の朝の事であった。
「何だよ? これ」
俺は先が赤い矢を受け取りながら尋ねた。
「それは魔導師の能力を完全に消す”魔導殺し”の矢の効果を弱らせたものだ」
「大丈夫なのか?」
俺は真人の説明に少しばかり不安になる。
「大丈夫だ。その矢は着弾した場所から半径5キロ圏内で発動中の魔法を停止し、魔導師については強制パージされる」
「だけど、どうしてこんなものを俺に?」
俺は疑問に思ったことを真人に投げかける。
「もし、俺が仲間と争うようなことになったら、これを使って欲しい」
「それって、まさか」
「俺もそういう事は避けたい。だが、万が一にもそうなった時の保険だ」
俺は真人の言わんとすることが理解できた。
この先、なのはの魔王降臨があったはずだ。
とすれば、それを止めようと真人が出でば戦いに発展するのは否定できない。
だからこそ、俺はその矢を受け取った。
そして、今に至るのだ。
(出来れば、解決してくれればいいんだけど)
俺は、そんな事を考えながら魔力を注ぐのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
(どうしたものか)
俺は必死に考えをめぐらす。
今俺は両手を拘束されている。
今からバインドを壊そうとしても、発射までには間に合わない。
同じ理由でシールドなんてものも神のようなものだ。
だとすれば……
(あれしかないか)
それは、神性典の第2章に当たる『無を促す光の環』だ。
(これ、前は出来なかったんだけどな)
そう、この神性典は執行人が扱える物で、本来は俺には扱うことは不可能なのだ。
しかし、なぜか俺はそれの第2章までを扱うことが出来るようになってしまったのだ。
(どうしてだろう?)
そんな事を思っていた瞬間だった。
「スターライト……」
どうやら魔力のチャージが完了したようだ。
と言うより、でかいな。
「ブレイカ―!!」
そしてとうとう放たれた。
俺に向かってくる収束砲。
「神性典・第2章、無を促す光の環!!」
そして俺は、神性典を行使した。
膨大な魔力が俺の中に入り込んでくる。
「ッぐ!?」
その膨大な魔力量に、俺は顔をしかめる。
いくらなんでもこれはかなりきつい。
俺は、必至に意識を保とうとする。
未だに、なのはの込めた魔力量の半分も吸収していない。
魔力は確かに必要だが、莫大な量の魔力は本人を傷つける刃となるのだ。
(もう………限界)
俺は、重圧に耐えきれなくなったため、技を止めた。
魔力の吸収は止まったが、残された4割弱の魔力で構築された収束砲は『ディバインバスター』へと姿を変え、俺へと向かってきた。
俺はそのまま意識を手放してしまった。
その際に俺が見たのは、赤い矢によってすべてが
消去される光景だった。
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