ロストロギアの封印が完了したとのことで、はやてから正式に出張任務の終了宣言がされた。
そして俺達はミッドチルダへと戻っていた。
【どうだった、久しぶりのここは?】
【……そうだな。気兼ねなくのんびりできた。ただそれだけだ】
俺の問いかけに、執行人が完結に答えた。
それは受け取り方を変えるとやや不満足と言う意味でもあった。
【何が不満なんだ?】
【……愚かな転生者が出たことだ】
俺の問いかけに、執行人はそう答えた。
まさしくその通りだ。
なぜにあのタイミングで転生者が現れるのか、非常にタイミングが悪い。
【真人、あの海鳴市に転生者が何人いると思う?】
【……わからない】
執行人の突然の問いかけに、俺はしばらく考えたが、答えが出なかった。
【千人だ】
俺は、その答えを聞いて愕然となった。
海鳴市の人口が何人かは分からないが、かなりの数だ。
【その中には静かに暮らしたい、前世での間違いを正したいというごくごく普通の目的を持った者もいる。だが……】
【あの男のように不埒な輩もいる。だろ?】
執行人の言葉を引き継ぐ形で、呟いた。
【ああ、今は也を潜めているが、いずれその牙を出すかは分からない。まあ、出てきても消せばいいだけの話なんだが】
執行人の言うとおりだ。
転生者が出てきても、ただ消せばいいだけの話。
口にすれば簡単だ。
だが、消せば消すだけ考えてしまう。
(転生者は、どうして転生しようとするのか)
それほど死に対して恐ろしいのだろうか?
しかし、転生する時点ですでに死は迎えている。
だとしたら、一体何のために転生をするのであろうか。
それが俺がいまだにわからない疑問だった。
転生者、それは俺達の敵でもあるが、案外、人の醜い部分を映し出した存在なのかもしれない。
転生者の考える多くの事は偽善だ。
人を救えばその陰で悲しむ人がいる。
それを理解せずに、理想像を振りかざす。
これが偽善でないとすれば、それば一体なんなのであろうか?
【さあ、分からないな。考えるだけでも無駄だ。転生者如きの事をいちいち考え無くてもいい】
俺の考えが分かったのか、執行人がそう告げた。
確かに、今の時点では、執行人の意見が正しいのかもしれない。
【転生者の考えを理解しなくてもいい。奴らは世界を汚す塵なのだから】
執行人の言葉に納得する俺は、すでに心が壊れているのであろうか?
しかし、何と言われても今の俺には執行人の言葉が胸にしみるのだ。
そんなこんなで、突然湧いて出てきた出張任務は幕を閉じるのであった。
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