健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第16話 昼休み

11月1日

もう流星町に来て2週間ぐらいは経った。
朝は旦那様たちの朝食を作り、学園のプリエでは料理を作ったりする。
昼休みの地獄はなんとか慣れてきた。

「うぅ、なんで私がこんなことを……あ、いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ」

神楽も何だかんだ言いつつ、ウエイトレスをそつなくこなしていた。
そして今日も、いつも通りの一日が幕を開ける。

「あぁ、大森君」
「はい、何でしょうか?」

朝の連絡が終わり、各自準備に取り掛かっている中、僕は主任に呼び止められる。

「今日の10時から13時まではオフシフトで構わないよ」
「え? いいんですか?」

突然の休憩の連絡に、僕は嬉しさ半分不安が半分の心境で主任に尋ねた。

「構わないよ。いつも頑張っている君へのご褒美だよ」
「ありがとうございます」

僕は主任に頭を下げてお礼を言うと『さあ、早く支度をなさい』と言いながら去って行った。
そして僕も準備に取り掛かるのであった。










「それじゃ、休憩入ります」
「ゆっくりしてってね」
「ごゆっくりどうぞ」

主任に言われたオフシフトでもある十時、僕の呼びかけに、厨房にいたおばさんたちが口々に返してくれた。

「むぅ、浩ちゃんだけずるい」
「西田さん! てきぱきと動きなさい!」

神楽の恨み言とウエイトレスの先輩に当たる人の声を背中に受けながら、僕はプリエを後にするのであった。









「この辺りに来ると、静かになるんだな」

旧校舎の二階の廊下。
僕は休憩を取るべく静かな場所を探し求めていたらここにたどり着いた。
ちょうど生徒会室などがある校舎だ。
本当は図書館に行こうとしたが、あそこは逆に危険だ。
主に司書の人に怒られるという意味でだが。

「お、ここは鍵がかかってないな」

近くにあったドアに手を掛けるとすんなり開いたため、僕は中に入った。
そしてドアを閉める。
その部屋は奥の窓のそばにホワイトボードが置かれ、その左側には色々なファイルが敷き詰められている棚と、反対側にはポットの置かれたテーブル、その手前にはノートパソコンが置かれたテーブルがありさらに手前側にはソファーが置いてあった。

(どっかで見たような構図の部屋だけど、まあいいか)

疑問はあったが、今は眠気が勝っていたため、僕はソファーで横になると黒いマントを体に掛けて目を閉じた。
僕の意識は、すぐさま闇へと落ちて行った。


★ ★ ★ ★ ★ ★


浩介が眠りについた場所は、生徒会室。
生徒会の活動拠点の場所だ。
もしそのことを知っていれば、浩介はそこで仮眠をとるなどの事はしなかっただろう。
もっとも、知っていても浩介ならば平然と仮眠を取っていただろうが。
そして案の定、生徒会室に訪れる人物が現れた。
その人物は、黒いリボンでツインテールに結ばれた金髪の髪の女子学生だった。
腕には生徒会の腕章がつけられている。
その女子学生の名は聖沙・B・クリステレスだった。

「あれ? この人は……」

野菜スティックが入った容器を片手に入ってきた聖沙は、ソファーに横になっている浩介の顔を覗き込む。

「って、ここは生徒会室なのに、よく寝れるわよね」

あまりにも堂々と寝ている浩介に、聖沙は怒りを通り越して、呆れた表情でつぶやく。

「あの、起きてください。ここは生徒会室ですよ」
「すぅ……すぅ」

聖沙の呼びかけに浩介は起きるそぶりを見せなかった。

「………」

(きっと疲れてるのね。お姉さまの所で料理人をやってプリエの厨房で働いているんですものね)

無理矢理起こすのは川そうだと思った聖沙はいつも自分が座る椅子に、浩介を起こさないように静かに腰かける。
そして適当な資料を引っ張り出してそれに目を通しながら、野菜スティックを頬張る。
時々視線をソファーで規則正しい寝息を立てている浩介の方に向ける。

(本当に起きないわね)

そう心の中でつぶやく聖沙だが、その時浩介の様子が変化した。

「んぅ………」

どうやら眠りが浅くなっていたのか、紙の捲れる音に浩介は上半身を起こした。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「んぅ………」

髪の捲れるような音に、僕は目を覚ました。

(人はいなかったはずだけど?)

そんな疑問を抱きながらも、時間を確認しようと時計を探す。

「起きたんですね」
「ん?」

突然かけられた声に、僕はその声のした方へと顔を向けた。
そこには椅子に腰かけて野菜スティックのようなものを手にしている金色の髪の女子学生だった。

「ここは生徒会室ですけど、何か用事でも?」
「生徒会室?」

女子学生の言葉に僕の中にあった疑問が解けた。
一度僕はここを訪れていた。
理事長に言われて差し入れを持って行ったときにだ。

「あの」
「あぁ、悪い。用はない。ただ仮眠を取ろうと思っただけだ」

いつまでも応えない僕を不審に思ったのかおずおずと女子学生が声をかけてきたので、僕は単刀直入に答えた。

「はい? でも、プリエにも仮眠室はありますよね?」
「勿論ある。それと、僕には敬語は不要だ。敬語を使うほどでもないからいつも話している風に話して」

女子学生の問いかけに答えつつ、僕は女子学生にそうお願いをした。
敬語を使われると、なんとなく居心地が悪くなるからだ。

「分かりました……じゃなくて、わかったわ」
「仮眠室にいても外が賑やかすぎて眠れない」
「な、なるほど……」

僕の言葉に、女子学生は困ったような表情で相槌を打つ。

「ここなら近くに理事長室があるから、相当な馬鹿ではない限り騒ぐようなものは来ないかと思ったんだが、生徒会室だったとは」
「あなた、一度ここに来たことがあるはずよ」

女子学生に言われて、ふと記憶をたどってみた。

「ああ、確かにそうだった」
「……忘れてたのね」
「忘れてはいない。ただ思い出せなかっただけだ」

女子学生のジト目に僕は反論する。

「人はそれを忘れていたというのよ」
「確かに」
「ふふふ」

女子学生の言葉に頷くと、クスクスと女子学生は笑った。

「ところで」
「何かしら?」

僕は今まで気になっていたことを女子学生に聞くことにした。

「昼食は、野菜スティックだけか?」
「え? そうよ」

一瞬呆けた女子学生は、頷いた。

「極端な食事制限ダイエットは、体に悪いぞ」
「なッ!?」

僕の指摘に、女子学生が声を上ずらせた。

「バランスのいい食事制限の方が無理のないダイエットが出来る」
「か、勝手にダイエットって決めつけないでッ!」

僕の言葉に女子学生が反論する。

「だったら……趣味か? 食事を制限して自分を虐げる」
「違うわよ!」

さっきよりも強い否定の声が帰ってきた。

「オーケー、理由は聞かないようにしよう」
「わ、分かればいいのよ」

素直に認めればいいのにと思いながら、僕は折れることにした。

「ところで、今何時かわかるか?」
「えっと、13時10分前よ」

どうやら話し込んでいたら頃合いの時間になったようだ。

「それじゃ、休憩時間が終わるから僕はお暇するとしよう」

僕はそう呟いてソファーから立ち上がると、出入り口のドアまで歩いていく。

「そうだ」
「何かしら?」

僕の呟きに、女子学生が首を傾げる。

「バランスのいい昼食を今度持っていく」
「え?」
「だから、バランスのいい昼食を持っていくと言ったんだ」

固まっている女子学生に、僕はもう一度言い直した。

「別に、恩を着せようという物じゃない。ただここを勝手に使ったペナルティーだ」
「い、いいわよ。貴方に悪いし」

変なところで謙虚だなと思いつつ、僕はさらに食い下がる。

「今のままの食生活を続けたら体調を崩す。バランスのとれた食事がどういったものか、見た方が分かりやすいだろ。まあ、僕のエゴだが」
「………分かったわ。お願いするわね」

今度は女子学生が折れた。

「了解。次に昼休みに休憩が取れる日程は、分かり次第、リアさんに伝言を頼む」
「お、お姉さまに!?」

僕の言葉に、女子学生は複雑な表情をした。

「安心しろ。リアさんには詳しくは話さない。ただ単に、休憩が合う日だけを伝える」
「そ、それならいいのだけど」

やはり、あまり人には知られたくないようだ。
まあ、当然だろうけど。

「それじゃ」
「ちょっと待って」

今度は僕が呼び止められた。

「貴方の名前、聞かせてくれるかしら? 私は聖沙・B・クリステレスよ」
「僕の名前は、浩介。大森浩介。それじゃ」

時間がないことから、僕はクリストさんに一礼すると生徒会室を後にした。

(さて、午後もしっかり頑張りますか)

僕はそう気合を入れながら、プリエへと向かうのであった。

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巡回執筆予定作品

こんばんは、TRです。

今回の巡回執筆で執筆する作品は以下の通りです。


・ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~
・DOG DAYS~誤召喚されし者~
・魔法少女リリカルなのは~目覚めた力~RB


それでは、これにて失礼します。

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第41話 緊急任務

地上本部後悔意見陳述会まで、あと5日と迫っていた日の事。

「さて、デスクワーク、デスクワークっと」

俺はいつものようにデスクワークを始める。
なぜか俺だけデスクワークの量が多いような気がしなくもない。

(まあ、日ごろの行いと言うわけだがな)

サボっている日が多いので、こういう仕打ちになることは覚悟はしていた。

(俺としては、見逃してほしいところだが………)

俺は心の中で愚痴をこぼした。
俺がサボっている理由は、真人の下半身が動かないのを治すためだ。
その為に無限書庫で文献を読み漁っているが、なかなかいいのが見つからない。

「お、今日はちゃんとやってるんだな?」
「おいおい、言いだした言葉がそれかよ」

俺はデスクワークの部屋に入ってきて、俺の姿を見た瞬間に驚いた様子で声を出す真人に、苦笑い交じりで答えた。

「これ以外の言葉がなかった」

生真面目な顔で、そんな事を言えるのはさすがとも言えなくない。

「ん? 通信だ」

そんな時に俺の元に1通の指令が届いた。
俺の仕事柄、極秘事項の物も多いため指令は、このようにメールで届くことが多い。
いつものように俺はそれを開く。
そこに書かれていたのは、異世界の調査任務だった。
何でも異世界で違法魔導師が潜んでいるという情報を、入手したらしい。
俺はその情報が確かなものかを確認するだけが任務だ。
後は俺の上司でもある執行人が受け持つ。
それがいつもの流れだった。

「真人、悪いけど俺はちょっと出るな」
「ああ、気を付けて」

真人と別れて俺が向かったのは部隊長室だ。
俺はそこで任務のために、休みをもらう許可を取りに来たのだ。

「ほんまに任務なんやろうな?」

話を聞いた後、開口一番がそれだった。

「本当に決まってるだろ! 俺もそんなくだらない嘘はつかない!」
「………まあええわ。頑張ってな」

しばらく考え込んだ末に、はやてはそう言って許可を出してくれた。

「ありがとうございます」

俺はそう言いながら頭を下げ、部隊長室を後にした。
そして、俺は任務の場所へと向かうのであった。










そしてやってきた異世界。

「ここがその場所か」

俺は辺りを見回す。
そこは一面野原のような場所であった。
夜なのか、薄暗いためによく分からなかったが。

「さて、違法魔導師でも探しますか」

俺は気分を切り替えて、この世界に存在する魔力反応を確認する。
資料によれば、ここは無人世界らしい。
しかも、この世界に訪れたものはいないと言う事も分かっていた。
と言うことはここらへんには魔導師はいないと言うことになる。
なので俺は魔力反応を確認し、その姿を見れたら帰還して執行人に告げる。
これが今までの俺のやり方だ。

「ッ!!?」

そんな時に感じたのは、機械の音。
俺は慌ててその方向に目をやると、俺の方に向かってくるガジェットが姿を現した。
それはⅠ,Ⅲ型だった。

「ッく!! ルビー、セットアップ!」

俺は急いでルビーをセットアップしバリアジャケットに身を包む。
そして杖型のデバイスを手に、俺は一気に駆け出す。

「レイン・ブラスター!!」

執行人と考案して編み出した砲撃魔法を、ガジェットに向けて放つ。
広範囲に攻撃するため、撃ち漏らすことはない。
AMFに阻まれ20機あったガジェットは、Ⅲ型が3機、Ⅰ型が2機となっていた。

「っと!?」

ガジェットからのレーザー攻撃に、俺はその場を飛んで躱す。

「ブレイク・スレイン!」

俺の放った漆黒の一筋の光がガジェットに放たれる。
そしてそれはすべて命中し、ガジェットを破壊することが出来た。

「ふぅ、なんとかなった」

俺は周囲を警戒しながら一息つく。
執行人のサポートもあって、なんとか戦えるぐらいには強くなっていた。

「おやおや、なかなかにしてやるな」
「ッ!?」

突然俺の背後で声がし、俺は慌ててその場を離れる。
次の瞬間、俺が今まで立っていた地面は轟音と共に抉れていた。

「貴様! 何者だ!!」
「そんなの答える意味はないな」

俺の問いかけに、目の前に立っている黒のマントを着ている銀色の髪をした男は、そう切り捨てた。

「何たって、貴様はここで………」

そこで、男の姿が一瞬ぶれたように見える。

「死ぬのだからな」
「ッ!?」

そして次の瞬間、俺の耳元で囁かれた。
そこで俺の意識はなくなった。

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第45話 眠りし者、後悔する者

あの襲撃から2日経った。
もう、二日、やっと二日だ。
僕は、病室のお見舞いに来た人用のパイプいすに腰掛けていた。

「………」

僕の視線の先には、マスクのようなものをして眠っている真人の姿があった。

「くッ!!」

僕は無意識に両手を、力強く握りしめていた。
僕の胸にあるのは、マスターである真人をまた(・・)守ることのできなかった悔しさだ。
あの日、健司の病室警護をしていた僕は、マスターリンクで、真人の身におきた異変を感じたのだ。
その後急いで捜索した結果、血を流して倒れている真人を見つけ、病院に運んだ。
かなり危険な状態ではあったが、発見が早かったこと等があり一命をとい止めた。
だが、いつ目が覚めるかは分からないと言うのが医者の話だ。

(申し訳ない、真人)

僕は心の中で謝った。
あの日、僕が頭を使えばよかったのだ。
真人の指示に待ったをかけ、予想をし直せばこういった事態は防げたかもしれない。

(詭弁だな)

僕は自分の予想をそう罵った。
もしものときは、この僕が自分の手で動くしかない。
僕は世界最強と言う名だけで、転生者殺しと言う力は持っていない。
もし相手が、100回殺しても死なない能力を持っていたら、僕は倒せるのだろうか?

「ん?」

その時、病室のドアが誰かにノックされた。
魔力反応からして高町だろう。

「失礼します。あ、執行人さん」

中に入ってきた高町は、僕を見つけると”来てたんですか”と言い、僕の横に立つ。
彼女もまた、僕以上の被害者だ。
最愛の人が意識不明の重体なのだから。
それでも泣かなければ、僕を責めたりもしない。

「高町」
「何ですか?」

それが、とても歯がゆくて、つい言ってしまった。

「お前はどうしてそう平然としていられるんだ?」
「………」
「お前の一番好きな恋人がこうなったんだぞ? なんでそんな風にケロッとしていられるんだ? なんで僕を責めないんだ!」

それが、きっかけだった。

「……い」

肩を震わせて、小さな声で何かを言い出す。

「しょうがないじゃない!!」
「ッ!!」

突然の大声に、僕は息をのんだ。

「悲しいよ、ヴィヴィオはさらわれて、真人君までこうなって、とても悲しいよ!! 今すぐこんなことをした人の所に突撃してやり返したいよ!!」
「………」

それは、彼女の心からの本当の叫びだった。

「でも……でも、真人君はそんな事を望んでいない。だから真人君が目を覚ました時に笑顔で『お帰り』って言うんだって……そう思ってるんだよ」
「………そうか、悪かった」

僕は目を閉じて高町に謝った。
ある意味、僕以上に彼のそばにいる人物として、ふさわしいかもしれない。
僕はいつでも自分の事しか見れていない。
人の気持ちにまで目を向けられないのだ。
それは元々の事だから、と自分に言い聞かせていたが。
あるいは、僕は一番弱いのかもしれない。

「高町」
「何……ですか?」

未だに涙声の彼女に、僕は静かに告げた。

「絶対に、解決させよう。この事件を」
「………はい!」

その誓いだけが、今の僕にできる最大限の事だった。
そうやって、時間は流れて行った。
そして、この事件は佳境を迎えようとしていた。

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第44話 折れる翼

「はぁ……はぁ!!」

俺は急いでいた。
突然襲った地震。
それが襲撃だと言う事を悟った俺は、即座に合流地点へと向かっていた。
だが、そこに立ちはだかったのは、大量のガジェット。

(いくらなんでも侵入が早すぎる!!)

俺は心の中で愚痴をこぼしながら、ガジェットを蹴散らして進んでいく。
先ず俺がするべきなのは、スバルからクリエイトを受け取ることだ。
それをしなければ、万全な体制で戦うことなどまず不可能。

(スバルの魔力反応は……ここだ!!)

俺は、スバルの魔力反応を探すため、分かれ道の箇所で魔力反応を探し出しながら進んでいた。
その為、襲撃が始まってから既に2,30分は感覚では経っているはず。
そのことが、俺をさらに焦らせる。

「見つけた!」

最後の分かれ道で、より鮮明なスバルの魔力反応を感じた俺は、分かれ道の箇所を左に曲がり全速力で走った。
その先で見たのは、地面に広がる赤い液体と………

「返してよ………ギン姉を返してよぅ!!」

地面に四つん這いになって、誰もいない場所に向けて叫ぶスバルの姿だった。

「スバル! 大丈夫か!!」
「真人………さん」

俺の声に気付いたスバルは、こっちを見た。

「ギン姉が………ギン姉が!!」

スバルのその言葉だけで、何があったのかが理解できた。
おそらくナカジマさんは、何者かによってさらわれたのだろう。
目的は分からない。
考える時間もない。
俺のやるべきことはただ一つだけだ。

「スバル、クリエイトを」
「え?」
「クリエイトだ。俺がスバルのお姉さんを助け出す!」

スバルのお姉さんを、取り戻すことだ。

「本当………ですか?」

スバルの問いかけに、俺は頷いた。

「お願い……ギン姉を助けて」
「分かった。だから、そこで待っててくれ!!」

俺はクリエイトを受け取りながらスバルにそう告げると、すぐに起動させて転移魔法で表に出た。
中はAMFが高い。
だからこそ、それほど高くない表に出れれば、後は相手の魔力反応を追うだけだ。

「クリエイト、ナカジマさんの魔力反応を探しだして!」
『了解………出ました!! ここから北北西の方向で確認。現在移動中!!』

クリエイトの報告を聞いた俺は、即座に空へと飛びあがると、北北西の方向に向かって飛んで行った。










「このあたりのはずだが………見つけた!!」

北北西の方向を飛んでいた俺は、ボードのようなものに乗っている二人の人物を見つけた
そこに向かって俺は急降下すると、牽制用の魔法弾を数発放った。

「何!?」

銀色の髪に、をしている少女の背後に回ると、剣状のクリエイトを首筋に突き付けた。

「こいつが傷つけられたくなければ、ギンガ・ナカジマを解放しろ!!」
「チンクを人質にするなんて、卑怯ッス!!」

赤い髪の少女が非難してくる。
確かに、俺のやっていることは、どこぞの犯罪者と同じことだ。
だが、そもそも向こうが仕掛けてきたことなのだ。
これくらいはやって罰は当たらないだろう。
………処分はあるが。

「生憎とこっちには話し合いとかをしている時間はない。失礼だがこういう手段を取らせて貰った。さあ、早くしろ」
「分かったッスよ」

ピンク色の髪の少女は、仲間が人質に取られたことで、渋々と言った様子で歩き出した。

(よしッ!!)

俺が心の中でガッツポーズをとった時だった。

「ぐッ!?」

突然、俺は背後から何者かに殴リ飛ばされた。

「隙あり♪」

背中の痛みを堪え、背後を見ると、そこには水色の髪をした少女がいた。
どうやら、彼女の仕業らしい。
しかし、一体どうやって俺の背後を?
そして、俺は思い出した。

(地面から……出てきた?)

エリオを不意打ちのごとく襲撃し、さらには少女を奪い返した人物。
執行人が言っていたのは彼女の事だったのだ。

(これで、振り出しか)

「よくもチンク姉を!」

目の前にいる赤い髪をした少女は、殺気立った様子で、俺を見ていた。
見れば彼女やチンクと呼ばれた、銀色の髪に眼帯のようなものをしている少女は少なからずダメージを負っている。
おそらくは、スバルやフォワード陣のおかげだろう。
ならば、勝率も少しは高くなる。

「それだったら、徹底的に、やってやろうじゃないか!!」

そして、俺は瞬時に攻撃に転じた。

「刃呪縛!!」

俺は、少女たちに向けて複数の魔力刃を放つ。
しかし、それを少女たちは難なく躱した。
だが、やはり赤い髪の少女と、チンクと呼ばれた少女の動きは、ダメージを負っているためかどこかおかしかった。

「はッ!!」
「っと!?」

考え込んでいた隙を狙って、チンクと呼ばれた少女が数本のナイフをこっちに向けて投げてきた。
俺はそれをすべて躱した。
だが……

「IS発動、ランブルデトネイター!」

その呟きと同時に、背中に衝撃波が襲ってきた。
おそらく、避けたナイフが爆発したのだろう。

「でやああああ!!」

爆発の衝撃波を受け、体勢が崩れた隙を狙い、赤い髪の少女が攻撃を仕掛けてきた。

「ッく!! シールプロテクション!!」

それを何とか防御障壁を展開することで防ぐ。

「リフレクション!!」
「ッぐ!?」

反射の付加をかけ、少女の攻撃を、そのまま跳ね返した俺はピンク色の少女から放たれる誘導弾を躱しつつ、次の手を打とうとした。

「ッ!?」

しかし、俺はなぜか地面に倒れていた。

(直撃したのか?)

俺はそう考えながら、立ち上がろうとするが、立ち上がれない。
いや、足に力が入らないのだ。

(まさか!!)

俺は、いやな予感がして背中にあるはずの、ステッキを手にする。

(やっぱり)

俺が見たのは、煙を上げ時たま火花を散らしているステッキだった。
おそらく、先ほどの爆発の衝撃で、限界までかけていた付加に耐えられなくなり壊れたのだろう。

「地面に倒れたっスね」
「よく分からんが、止めを刺した方がいいだろう。私がやろう」

少女たちの会話が聞こえた。
今の俺では、立ち上がることもできない。
万事休すか?

『諦めるな。諦めたらそこですべては終わる。惨めでも足掻け、元々人は惨めな生き物なのだからな』

執行人の言葉が頭をよぎった。
そうだ、まだ魔力がある。

「うおおおお!!!」

俺は上半身に力を入れると、その場を離れ上空の方へと避難した。

「っとと!!」

下半身の力が入らないため、バランスがとりずらいが、これで急場はしのげる。

「しぶといッスね~」
「悪いな。あきらめが悪いのが俺の悪い癖だからな」

何故かそう言える余裕があった。

(そうだ。俺がやるべきことは、彼女たちを倒すことじゃない。仲間を取り戻すことだ!!)

幸い、俺にはその魔法がある。

「だから、こうさせてもらうよ!!」
「なッ!? バインド?!」
「何時の間に……だが、こんなもの!!」

俺は少女たちにバインドをかける。
速度を優先したため、かなり脆く子供の力だけで簡単に外れるほどの強度しかない。
だが、それでも俺には十分だった。

「天命が告ぐ、眠りを知らぬ民よ、眠りたまえ。スレイン・ヴェネレイア!!!」

弓状のクリエイトを構え、魔力で生成した矢を引く。
目標は、少女たちから離れた場所だ。
そして、それを射た。

「はん! どこを狙って―――――」

誰かがそう言ったが、その声は聞こえなかった。
なぜなら、矢が突き刺さった場所の周辺が眩い光に覆われたのだから。
そして、光が消えると、そこには地面に倒れ伏している少女たちの姿があった。

(間一髪だったな)

光を浴びた者達を一瞬にして眠らせるあの技は、執行人と健司と考えた技だ。
まさか、ここでその効力を発揮するとは思ってもいなかった。

「取りあえず、ナカジマさんを――――」
「へぇ、君があの”転生者殺し”か~」

ナカジマさんの魔力反応がするケースへと向かおうとした俺の声を遮るように、俺の真後ろから男の声がした。
それと同時に放たれるのは、殺気だ!

(まずいっ!!)

俺は慌ててその場を離れようとした。
だが………

「ッがは!!?」

体の左胸辺りに、焼き付けるような痛みが走った。
俺は、痛みをこらえながら、下を見るとそこには俺の平に胸を貫く、一本の黒い剣があった。

「おや、急所がそれたか。さすがは転生者殺し。あいつよりは見ごたえがあるな」
「あい……つ?」

男の言葉から、それが健司だと言うことはすぐに分かった。

「だが、それもここまで。散!!」
「ッ!!!?」

男の声がした瞬間、俺を言葉には言い表せないほどの痛みが走った。
おそらくは、俺に突き刺さっていた剣が、爆発したのだろう。
そして今俺は、地面に横たわっているのであろうか?

「これで、もう邪魔者はいない。これで、我が悲願が成し遂げられる!! ふははははは!!!」

男の狂ったような声がどんどん遠ざかっていく。
目の前も真っ暗になって行きかけている。

(スバル……すまない)

俺は、約束を成し遂げられなかったスバルに心の中でそう謝罪の言葉を上げ、意識を手放した。

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