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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第6話 楽器=性格?

平沢さんの入部で軽音部は、何とか廃部を免れた。
大型連休も終え、またいつものように学校生活が始まる。

「ちくしょう、お前はこれからハーレム道に――――」

何やら佐久間が喚きだすが、いい加減構うが面倒になったので無視して部室に向かうことにした。

「あれ? 高月君部活?」
「ああ。基本毎日部活だよ」
「頑張ってね」

クラスの女子とも色々と馴染んでいき、そこそこ充実した高校生活を送っている。
僕はギターケースを背負うと、軽音部の部室でもある『音楽準備室』へと向かうのであった。

「って、聞けよ!」

そんな佐久間の叫び声を背に受けながら。









「あれ? 僕が最後か?」
「うん、そうだよ」

どうやら、僕が一番最後だったようで手をひらひらと振りながら答える平沢さんの目からは、早く食べたいという声が聞こえきそうだ。
僕はとりあえず近くの壁にギターケースを立て掛けると、物置部屋方面に用意された椅子に腰かける。
何だか議長のような位置だ。
正確に言うと、平沢さんとムギさんの机の横の部分が僕の席となっている。
そして待ってましたと言わんばかりに平沢さんはケーキを頬張る。

「はい、どうぞ」
「ありがとう」

ムギさんによって僕の前にも、同じケーキと紅茶が置かれる。
僕は手を合わせるとそれらに手を付ける。
さて、僕が入部したこの軽音部のメンバーは僕を除いて四人だ。

「何で澪ちゃんはベースを弾いてるの?」
「だってギターは……恥ずかしい」

平沢さんの問いかけに恥ずかしそうに俯いて答える黒髪の女子高生が、ベース担当の秋山澪。
恥ずかしがり屋な性格で、H&Pのファンの一人だ。
僕が正体を隠すうえで、最も注意をしなければいけない人物。
というより、なぜに恥ずかしいのだろうか?

「ギターってバンドの中心みたいな感じで、先頭に立って演奏しなくちゃいけないから、観客の目も自然に集まって………自分がその立場になると考えただけで」

想像したのか、秋山さんは力が抜けたように突っ伏してしまった。

「ムギちゃんはキーボード上手いけど、キーボード歴長いの?」
「私、4歳のころからピアノを習ってたの。コンクールで賞をもらったこともあるのよ」

平沢さんの問いかけに、さらりと答える薄い金髪の髪の女子高生が、キーボード担当の琴吹紬。
ぽわぽわおっとり等、彼女を示す単語はいくらでもある不思議な人物だ。
でも、どうして軽音部に入ったのかが謎だ。
紅茶も入れ終わり、各々が口を付け始めた頃、平沢さんがこの部室に置かれているものが充実していることに触れた。
ちなみに、ここに置かれているほとんどの物はムギさんの自前だとか。

(後で琴吹家に関してサーチするか)

僕が保有する特殊ネットワークで調べてみようと心の中で決めた。

「律ちゃんは、ドラムって感じだよね」
「なッ!? 私にも聞けばすごく感動する理由があるんだぞ!」
「へぇ、どんなどんな?」
「それ……えっと……かっこいいから」

小さな声で明らかに本心ではないなと思うことを口にする栗色の髪をカチューシャで留める女子高生が、ドラム担当の田井中律。
元気で明るい、ムードメーカー的存在だ。
まあ、ひっくり返すとやかましいことになるのだが、それは考えないようにした。

「だって、ベースとかキーボードとか指でちまちまちまするのを想像しただけでだぁぁ!!! って感じになるんだよ!」

何となくしっくりくる理由だった。
田井中さんの答えに苦笑しながらも、僕は用意されたお菓子を口に入れる。

「それで、浩ちゃんはどうしてギターなの」
「……………」

今、平沢さんの口から幻聴が聞こえてきた。

「悪い、良く聞こえなかった。もう一回言ってくれるか?」
「う、うん。どうして浩ちゃんはギターを始めたの?」
「………」

空耳でもなかった。

「平沢さん」
「唯でいいよ」
「そんな事はどうでもいいんだよ平沢さん。大事なのは」
「唯!」

は、話が進まない。
どうして名前で呼びたがらせるんだ。

「………唯さん」

僕は結局折れることにした。
これで彼女も納得――

「唯!」
「少しは妥協しろよ!」

しなかったようだ。

「あ、分かった。それでどうして”浩ちゃん”なんだ? 唯」
「え、えっとね。かわいいから!」

顔を紅くさせるんなら言わせるな。
というよりなぜに呼び方に可愛さを求める?
突っ込みたいことは色々あった。
だが、僕が一番言わなければいけないのはたった一つだ。

「浩ちゃん禁止!」
「えー」
「い・い・な?」

頬をふくらませて不満げな彼女に、僕は少々卑怯な手段ではあるが、殺気を放って頷かせることにした。

「は、はい! 浩君!」

あまり変わっていないようにも見えるが、妥協点だと自分を納得させた。
問題なのは……

「こ、浩ちゃんだって。プクク」
「リ、律。笑ったら失礼だろ。ふふふ」

後ろで盛大に笑っている二人の姿だった。

「何がおかしい? ”律”」
「い、いやなにも……って、呼び捨て!?」

呼び捨てされたことに目を見開かせる律。

「目には目を歯には歯を、だ。お前はこれから律だ」
「うぐぐ……だったら私も浩ちゃんって――」

再び浩ちゃんと呼んだ律に、僕は彼女の前に置かれたケーキに目掛けてフォークを投げた。

「ちなみに、次は当てる」
「はい、わかりました。浩介」

ケーキを食べ終え、空になったお皿を構えながら告げると、呼び方を変えた。
とは言え、報復のつもりか呼び捨てだったが。

「ちなみに、そこで他人事のように座っているお前もだ、”澪”」
「っ!?」

あ、固まった。

「な、ななななな何故私まで」
「律と笑ってたから」
「はぅ……」

ものすごく動揺した澪はそのまま脱力したのかテーブルに突っ伏す。

「それで、どうして浩君はギターをやろうと思ったの?」
「三歳のころまで英才教育でバイオリンをやっていたから」

話題を戻すように聞いてきた唯の問いかけに、僕はそのまま答えた。

「待て待て! バイオリンとギターの関係が分からないぞ」
「バイオリンからチェロ、ハーブと行ってもう弦楽器が無くなったからギターの方に手を伸ばしてみたら意外としっくりきてやっているんだ」
「す、すごく手が広いな」

律が顔をひきつらせて突っ込んでくる。

「一度興味を持った事柄は、徹底的に調べたり極めるのが僕のくせだから」
「へぇ」

まあ、裏を返せば、興味のないことに関しては徹底して無関心という事だが。

「楽器選びにも性格が出るんだね」

唯が呟いた一言は非常に的を得ているものであった。





ティータイムが進み和やかな空気が流れる中、口を開いたのは澪だった。

「ところで平沢さん」
「唯でいいよ」
「え?」

唯に話し掛けると、唯は名前で呼ぶように言う。
何でも”澪ちゃん”と呼んでいるからとのこと。

「ゆ、ゆい」

視線をあちらこちらにやりながら、最終的には上目づかいで名前を呼ぶと、唯はそのしぐさにぐっと来たのか胸を抑えた。

「だったら僕の事も律みたいに”浩介”と呼んでみたらどうだ? 僕も澪って呼んでいるわけだし、そうすればおあいこだろ」
「………………こ、ここここ……」

僕は鶏なのか?
どう見ても無理そうだ。

「まあ、呼び方は澪の場合は永久の課題という事で、唯はギター買ったのか?」

話題を変えると、僕は澪が聞こうとしていた(というより僕自身が気になっていたこと)を問いかける。

「え? ギター?」

なにそれと言わんばかりの表情を浮かべる唯。

「あー! そうか、私ギターをやるんだっけ!」

ようやっと気づいたのか大発見した感じに声を上げた。
尤も、僕は呆れていたが。

「ここは喫茶店じゃないぞ」

澪の言う言葉は尤もだ。
まあ、目の前に広げられているティーセットやらお菓子やらがなければの話だが。

「値段はどのくらいするの?」
「そうだな、安いので一万円暗いのがあるけど安すぎてもいけないしな、五万円くらいがいいかも」

澪の”五万円”の言葉に唯の表情が引きつった。

「お小遣い十か月分」

それはかなり痛い出費だ。

「高いのだと数十万円するのもあるけど、あまりケチると僕みたいになるからやめとけ」
「どういうこと?」

ここで僕は切り札を切ることにした。

「僕の使っているギター、露店で2,500円で買ったんだ」
「に、二千五百円!?」

信じられないと言わんばかりに澪が声を上げた。

「露店の人曰く、百倍は下る代物らしいからかったんだけど」
「そんなのインチキだろ」

律が野次を飛ばしてくるが、うまく的を得ている

「買ってみたらネックとかが狂っていてチューニングも合わないし、何故か弦が切れやすいというある意味使えない楽器だったんだよ」
「ネック?」

唯は話そのものよりも単語自体に引っかかっているようだが、説明する暇はないので聞き流すことにした。

「新しいギターを調達するにも金銭的余裕の問題でできないから使い続けるしかないんだ」
「だ、大丈夫なのかよ?」
「まあ、度を超えた速弾きとかしなければ普通に使えるし大丈夫なんだけどね」

勿論、これまでした話は全てうそだ。
あの白いギターは僕が故郷で最初に勝ったギターだ。
それこそ二百万以上はするほどの高価な物だ。
どのような音色にも化ける特性がある、今の僕には非常にぴったりな楽器だ。
それもこの楽器をフェイクで使おうとした理由の一つでもある。

「部費で落ちませんか?」
「落ちません」

律に尋ねるも、バッサリと切り捨てられ唯は項垂れるが、ムギさんがすかさず出したお菓子でテンションが元に戻っていた。

「よぉし、今度の休みにギターを見に行こうぜ」

そんな律の一言で、僕たちは唯のギター選びに付き合うこととなった。

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第7話 楽器選び

その週の休み、集合場所に指定された場所に向かうと、すでに律たちが待っていた。

「後は唯だけか」
「みたい」

それからしばらく待つと、僕が来たのと同じ方向から唯が姿を現した。

「おーい唯、こっちこっち」

律が手を振って唯に場所を知らせると、唯も手を振り返しながら横断歩道を渡るが、渡っている人の方にぶつかったり犬をかわいがったりと、中々たどり着けない。

(あと数mなのに、なぜ?)

世の中には理解できないことが多々あるのだと、僕は改めて知ることになった。
結局、唯はお小遣いを前借してもらう形で五万円を調達したようだ。

「これからは計画的に使わないと………」

使おうと息込んだ唯はふらふらと洋服のお店の方へと、引き寄せられるように歩いていく。

「いけないんだけど、今なら買える」
「こらこら!」

律の制止を振り切ってお店の中に入って行った唯を追うべく、僕たちもお店の中に入るのだが。
洋服を一緒になって選んだり、置物などを見たり、食料品売り場で試食などに講じたり、ゲームセンターで遊んだり等々寄り道をし続けた。
そして、レストランに入ることになった。
唯たち四人の後ろのテーブルに僕は案内された。
僕は注文したチーズケーキを時間をかけて平らげた。

「あー、楽しかった」
「へへー、買っちった」

後ろから聞こえる満足げな声。

(まさかとは思うが、何をしに集まったのかを忘れてはいないよな?)

何となく不安に思えてきた。

「次はどこに……あれ、何か忘れてない?」
「楽器だ!」

本当に忘れてたよ。
そんな大きな寄り道をして、僕たちはようやく楽器店へと向かう。
楽器店の名前は『10CIA』だ。

(なるほど、ここか)

その楽器店は、バンド用に使っているGibson ES-339はこのお店で購入したのだ。
この楽器店での密かなセールスアピールに”あのDKの持つギターを購入した楽器店”があるくらいだ。
まあ、表だって書かれたりはしてないけど。
そしてギターなどが置かれているベースにたどり着くと、唯はギターを見て行く。

「唯、決まった?」
「うーん。何か選ぶ基準とかあるのかな?」

唯の疑問に澪が解説をするが、唯はそれを聞かずにギターの方を見ている。

「あ、このギター可愛い」

(Gibsonのレスポールか)

唯が興味を示したのは、僕が愛用するギターのメーカGibsonの物だ。

「そのギターは、かなりの重量があるけど大丈夫なのか?」

このレスポールは音が伸びやすく、多少のごまかしが効く初心者向けの楽器ではあるのだが、重量が約4,5キロするため彼女には少々厳しい楽器だ。

「それに、そのギター25万もするぞ」

レスポールは値が張るものが多い。
ビンテージものになれば百を超える物だってある。

「うーん。さすがにこれには手が出ないや」

律が付け加えるように言うと困った表情を浮かべる。

「このギターが欲しいの?」

ムギさんの問いかけに、唯は深く頷いた。
その後、律が他のギターを見るように促すが、唯は動くことはなかった。
ギターを買う上で重要なのは、ネックや音の響きなども当然だが、一番必要なのはフィーリング。
これだ! と直感的に思うギターに出会った時こそ、その人に最適なギターの一つでもあるのだ。
その後澪と律が楽器を購入する際の話をしてくれたが、正直律の値切り話にはここの店員の人に同情してしまった。

「よし! みんなでバイトしよ! 唯の楽器を買うために!」
「え? そ、そんな悪いよ」

律の言葉に最初は遠慮していた唯だが、”部活の一環”という律の言葉に圧され、ムギさんが賛成する形でアルバイトは決定したのであった。










「バイトぉ!?」
「ああ」

週が明け、休日に何をしていたかを聞いてきた佐久間に楽器選びの話をすると、驚いた反応が返ってきた。

「部活をするにはバイトもするのかぁ。大変なんだな、軽音部は」
「まあな」

楽器という高価な物を買う以上、資金面で問題はついて回る。
僕が出せばいいじゃないかとも思うかもしれないが、それでは意味がない。
重要なのは買うために努力をすることなのだから。
そうすれば、ギターを手に入れた喜びもさらに増す。

「やっぱりバイトってファミレスとかか?」
「知らない」

どのようなバイトをするかを決めていないため、そう答えるしかない。

「もしファミレスだったら、俺大量に注文するぜ!」
「………お前が来たら億単位で請求を出すことにしよう」
「ひど!?」

絶対に周りの迷惑になりそうだったため、牽制をかけておくことにした。
ちなみに、僕の場合は本気だ。










「アルバイトと言ってもどういうのをするんだ」

バイトをすると決まれば問題はどのような内容かだ。
放課後を利用して探すがなかなか見つからない。

「ティッシュを配るのは?」

律が提案した内容は僕はおおむね賛成だったが、約一名無理そうなのがいる。
現に今、想像したのか拒否反応を起こしているし。
渡そうとしているが全員素通りするため、あたふたとしている光景が浮かんできた。

「ファーストフードとかどうですか?」

ムギさんの提案に、再び拒絶反応を起こす澪。
僕も、いやだったりする。
長い時間敬語を使い続けなければいけないのは、微妙に苦痛だ。
しかもマナーの悪い客に対して何も言えないかと言えばそれは否だ。
確実に一悶着起こす。

「ダメ……かも」
「あ、そっか。澪にはハードルが高いかもね」

澪の頭の中では何が再生されているのだろうか、この間と同じように頭から何かが噴出して脱力した。

「ごめんね、澪ちゃん! 無理しなくていいから」

唯も慌てて澪に告げた。
それをしり目に、僕はバイトの求人広告に目を通す。

「わ、私、何でもやるよ!」

よさそうなものを見つけた僕の耳に、澪の声が聞こえてくる。
彼女にとっては一大決心なのだろう。

「あ、だったら」
「な、なに!?」

僕が声を上げると、澪が過剰な反応を示す。
というより声が裏返ってるぞ。

「こういうのはどうだ」
「何々……交通量調査?」

僕がみんなに見えるように内容の書かれた本を置くと、全員がそれを覗き込む。

「道を歩く人や車をカウントする仕事だ。これならば、極度の恥ずかしがり屋にでも出来ると思うが?」

僕の説明に唯が”野鳥の会だね!”と意味が分からないことを口にする。

「そうだな、これなら澪にもできるっしょ!」
「本当ですね」

話し合いの末、僕たちのアルバイトは”交通量調査”に決定するのであった。
ちなみに、この時澪がほっと胸をなでおろしていたのは余談だ。





『へぇ、バイトね~』

夜、中山さんから調子はどうだという内容の電話で、事の経緯を話すと意外だと言わんばかりの返事が返ってきた。

『懐かしいね~、私達もかなり昔に楽器を買うための資金源を確保するべく、よくバイトをしたな』
「そうなんですか?」

僕の記憶にないため、おそらくは僕がバンドに入る前の話だろう。
その為、僕はさらに話を掘り下げることにした。

『ああ。半年かけてバイトをして、ようやく目当てのギターを手に入れた時は、嬉しくてうれしくて仕方がなかったな』
「分かります。自分もほしいギターを手に入れて喜んでいましたから」

中野さんの嬉しい気持ちに、僕は共感を感じた。
最初にギターを手に入れた時、僕は肌身離さずにギターを持ち続けていた。
音色もそうだが、形のどこかに僕を引き込むものを持っていたのだろう。
それが何なのかは自分にもわからないが。

『それじゃ、そっちの方でサポートとかはするのかい?』
「ええ。でも様子を見てから決めることにします」

中山さんの問いかけに、僕はそう答えるにとどめた。
サポートとは”資金援助”の事だ。
するつもりではあるが、現在は様子を見ている状態だ。
少なくとも、努力せずにギターを手に入れるよ言うなことはあまりよろしくない。
なのでタイミングを見なければいけないのだ。
本当に難しいことをすると我ながら思う。

『まあ、頑張りなさいな』
「ありがとうございます」

その後、世間話を少しして、電話は切られた。
次の日の学校の授業の準備を終えた僕は、きっと今週はあっという間に終わるだろうなと思いながら、眠りにつくことにした。

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『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

大変お待たせしました。
本日、『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』の最新話を掲載しました。
本篇では久々の更新です。
そして、本篇を引き継いでおまけの方でも最新話を掲載しました。
内容的には、ちょうどターニングポイントと言ったところです。
ここから、ようやく次の段階に話が進みます。


それでは、これにて失礼します。

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第26.5話 STAGE03:策略の先に

――ステータス―――



数:3体
HP:4000
属性:闇(Aと明記)、雷(Bと明記)、水(Cと明記)(いずれもLv.2)
EX:100%


味方

数:2人(名義上、聖沙A,Bと表記)
HP:2000
攻撃属性(聖沙):雷(二人ともLv.2)
守護属性:雷
EX:50%
ASSIST:浩介

―――――――

start

魔族三体のフレーム数

A:81F
B:52F
C:91F


味方二人のフレーム数

聖沙A:60F
聖沙B:65F

猫魔族Bはユニゾンを選択。
聖沙Aは行動可能になった。

「行くわよッ ライトニングシューター!」

聖沙Aは猫魔族Bに対して攻撃を放つ。

魔族

HP:3956↓44
A:21F
B:0F
C:31F↑20
EX:102%↑2
STUN:8

味方

聖沙A:0F
聖沙B:5F
EX:58%↑8
Rush:1
0%

「おまけだ! 鎮」

さらに浩介のアシスト攻撃が炸裂する。

魔族

HP:3351↓605
A:21F
B:40F↑40
C:31F
EX:102%
STUN:7

味方

聖沙A:12F
聖沙B:5F
EX:63%↑5
Rush:2
1000%

聖沙Bが行動可能状態になった。

「意識を高めてみるわ」

聖沙Bは詠唱を選択した。
さらに聖沙Aが選択可能状態になった。

「謝っても済まないんだから」

聖沙Aも詠唱を選択した。
そして聖沙Bは猫魔族Aに対して攻撃する。

「ボルトメガストリーム!」
「にゃー!」

魔族

HP:1272↓2079
A:5F
B:24F
C:11F
EX:112%↑10
STUN:6

味方

聖沙A:0F
聖沙B:7F
EX:105%↑32
Rush:3
2000%

「おまけだ! 圧」

さらに浩介のアシスト。
これによって猫魔族Aのノックバック量が2倍になった。

魔族

HP:761↓511
A:85F↑80
B:24F
C:11F
EX:104%↑0
STUN:5

味方

聖沙A:13F
聖沙B:7F
EX:110%↑5
Rush:4
3000%

聖沙Aは猫魔族Cに対して攻撃する。

「痺れちゃうわよ!」

魔族

HP:0↓5531
EX:114%↑10
STUN:4

味方

EX:147%↑37
Rush:5
6111%

「これでも喰らえ! 斬」

さらに浩介のアシストにより攻撃が加えられる

魔族

HP:0↓3517
EX:114%↑0
STUN:3

味方

EX:152%↑5
Rush:6
5051%

「もう動けない筈よ」





「にゃー!」

猫魔族たちは、まるで逃げて行くかのように僕たちの前から姿を消した。
おそらくは、僕たちを倒すのは無理だと思ったのかそれとも何らかの目的を達成したのか。
どちらにせよ、なんとかしのぐことが出来た。

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第26話 戦闘

「あ、こっちこっち」
「は、早いわね」

驚いたような眼差しを向けながら駆け寄ってくる聖沙さん。
その手にはやや大きめの黒い手提げバッグがあった。
勿論、僕のだが。

「はい」
「ありがとう」

僕は聖沙さんから黒い手提げバッグを受け取る。

「ところで」

聖沙さんはそこでいったん区切ると鋭い視線を向けてくる。

「ちゃんとティーポットとカップは戻したんでしょうね?」
「勿論だとも」

聖沙さんの問いかけに、僕は応える。
確かにちゃんと戻している。

「一体どうやって戻すのよ」
「それは企業秘密」

勿論魔法で。
具体的には転送魔法だが。

「企業って、あなた何か会社でも始める気?」
「それはいいね。預かってから全国各地に1時間以内にお届けしますって」
「………」

冗談で答えたら呆れられてしまった。

「冗談だからね?」
「高月君が言うと冗談に聞こえないのよ!!」

(そこまで言わなくても)

聖沙さんの言葉に、僕はため息をつく。
確かに、一瞬考えたりはしたが。

「ところで、高月君はどうやって―――――モゴゴッ!?」

僕は聖沙さんの言葉を遮るように、口を塞いだ。

「何をするのよ!」
「静かに。聖沙、戦闘準備を」

僕の手を振りほどいて怒鳴る聖沙さんに、僕はそう告げる。
理由は微弱ではあるが感じた魔力。
これは魔族が現れたと見るのが妥当だ。
そして、数瞬後にそいつは姿を現した。

「「にゃー!!」」
「ま、魔族!?」

突如現れた猫耳を付けた二体の魔族に声を上げる聖沙さん。

「ほら、戦う準備を。その為のクルセイダースなんでしょ?」
「うぅ、でも………」

僕が促すが、聖沙さんは躊躇っている。
その隙にも魔族たちは徐々に距離を縮めて行く。

「オーケー。だったら僕がやる」
「え?」

僕の言葉が意外だったのか聖沙さんは声を上げる。

「ほ、本気なの!? 相手は魔族なのよ!」
「本気も本気だ」

僕は聖沙さんに答えながら、手提げバッグを地面に降ろして、中から鞘に収まる一本の剣を取り出す。
鞘から剣を抜く。
やや長めの西洋風の剣は、こういった時のために用意していたお守りだ。
剣を抜いた瞬間に、こちらに近寄る魔族たちの動きが一瞬止まる。
本能から、この剣の恐ろしさを感じたのかもしれない。

「掛かってこい!」
「「にゃー!!」」

僕の声に反応して、猫魔族たちは一斉に動き始める。
放たれるのは螺旋状に渦巻く水流とこちらに迸る電撃。

「せやっ!」
「「にゃ!?」」
「え?!」

気合と共に剣を横に振りぬくとそれらすべてはまるで壁が出来たかのように何かに・・・阻まれる。
その事に驚きをあらわにする猫魔族たちと聖沙さん。
この剣は、魔法などの攻撃を無効化することに特化された物だ。
昔、人間で効果は違うが同じような剣を持って世界を救った英雄がいた。
なので、人間だと思い込ませるのにある種好都合な物であった。

(とは言え、このままでは埒が明かない)

あくまでも、僕がやっているのは”時間稼ぎ”だ。
後ろにいる彼女が決定打を与えない限り、これは永遠に終わらない。

(だったら、無理矢理決定打を与えさせるか)

僕はそう思いつくと、早速行動に移すことにした。

「ニャー!!」
「ッつぅ!?」
「高月君!」

一体の猫魔族が放った火炎が僕の左腕を直撃した。
後ろの方で聖沙さんが悲鳴を上げる。
だが、これは僕の予想通りだ。
彼女に戦わせるために、ワザと僕は左腕に直撃させたのだ。
成功率は低かったが、何とか始まりは良かった。
後は相手の攻撃を避け続けるだけだ。

「「にゃー!!」」

二体の猫魔族は攻撃が当たった事に気をよくしたのか、攻撃の勢いを強める。
僕はそれを紙一重で避けて行く。

(どうでもいいけど、ヤバいな)

左腕を動かす度に鈍い痛みが走る。
どうやら、少々傷が深かったようだ。

(これは覚悟を決めるか)

聖沙さんが決定打を放たない時の対処法を行うことの覚悟を決める。
それは僕の力を解放すること。
そうすれば、この危機を脱することが出来る。
ただし、その後に待ち受ける事態は覚悟しなければならない。
そんな時だった。

「気高く在れ、ノーブレスレイザー!!」

後方から雷撃が放たれた。
それは猫魔族の一体に見事命中した。 

「にゃー!」

そんな猫魔族たちは、まるで逃げて行くかのように僕たちの前から姿を消した。
おそらくは、僕たちを倒すのは無理だと思ったのかそれとも何らかの目的を達成したのか。
どちらにせよ、なんとかしのぐことが出来た。

「あ、ありがとう。助かったよ」
「ありがとうじゃないわよ、馬鹿! あと少しで大怪我してたのよ!」

お礼を言うと、若干露出度の高い黒と白を基調とした戦闘服に身を包んだ聖沙さんが大きな声怒鳴ってきた。

「分かってたけど、僕がやらないで誰がやるんだ? 仲間を呼ぶにしても時間が掛かる中で」
「う゛」

僕の切り返しに、聖沙さんは言葉を失う。
確かに、僕の行為は無謀だ。
だが、それでもこの場でできる人がいないのであれば、それをしなければならない。
それが、僕たちに課せられた使命なのだから。

「……約束して、絶対に今後無茶なことはしないって」
「…………善処する」

聖沙さんの言葉に、僕はそう答えるにとどめた。

「さあ、保健室に行くわよ。その怪我を直さないと」
「ありがとう。心配してくれて」
「なッ! べ、べつに、貴女の事を心配なんてしてないんだからね! ただ、私のせいで怪我をさせたお詫びなんだから!」
「はいはい、分かりました」

顔を赤くして否定してくれる彼女に、僕はさらりと流した。

「~~~~~っ! いいから行くわよ!」
「うわッ!?」

さらに顔を真っ赤にした彼女は、僕の腕をつかむとずんずんと歩き出す。

(掴んでいる腕は怪我をした方なんだけど、黙っておくか)

そう思いながら、僕は保健室へと向かうのであった。

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