健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

IF-D 第5話 夢と宣戦布告

その日、俺は夢を見ていた。
それは、この間のような夢ではない。
目の前にあるのは暴れる巨大な生物。
おそらくは魔物だろう。
周囲には先端が凶器のようなものが付いているツタがひしめき合ていた。
その魔物は何ふり構わず攻撃の手を緩めない。
地面を破壊し、時には森をも破壊する。
まさに地獄絵図。
一瞬、その地獄絵図を醸し出した元凶でもある魔物の姿がはっきりと見えた。

(え?)

俺は動揺を隠せなかった。

(どうして……)

なぜなら、その魔物の姿は

(どうして、■■なんだ?)

■■■だったのだから。










「――――です!! 早く起きてください!!」
「わぁあああ!!?」

夢の中から引きずりだすように、突然耳に聞こえてきた少女の声に、俺は思わず飛び起きた。

(一体なんだったんだ? 今の夢は)

「渉さん!! 大変でありますよ!!」
「な、何!?」

思考に耽っていると、再びリコッタの叫び声に引き戻された。
その後、ドアをけり破るような勢いで中に入ってきたリコッタから、伝えられたことをまとめると次のようになる。
まず、突然レオ閣下が、ビスコッティに宣戦布告をした。
そしてそれの懸賞をガレットの宝剣、『魔戦斧グランベール』と『神剣エクスマキナ』が賭けられたとのこと。
しかも、それにはこっちもそれに見合うものをかけなければいけなくなり、それは宝剣であるということ。

「話は分かった。とりあえず、着替えたいから外で待っててくれる? 2分で終わらせる」
「り、了解であります!」

話を聞き終え、俺がそう告げるとリコッタは慌てた様子で部屋を出て行った。
俺はリコッタが出て行ったのを確認すると、一息ついた。

「今回の宣戦布告とあの夢が、関係がなければいいんだが」

俺は不安を感じていた。
俺が視たあの夢。
それが所謂”予知夢”であるか否かだ。
もっとも俺の場合、視ることはかなり少ない。
しかも見たら俺の場合は必ず現実のものとなってしまう。
つまり、もしあの夢が予知夢だったのなら、あのような魔物が現れるということだ。
その為に周辺はとんでもない状況に陥る。

「………それだけは防がなくちゃ」

俺は再びため息をつくと、着替え始めた。
そして、着替えが終わった俺は、急いで部屋を後にした。

(最悪の事態だけは回避しないと)

そんな、俺の決意と共に。

拍手[0回]

PR

IF-D 第4話 迷いと決断

あれから俺は、ベッドで横になっていることが出来ず、上着を着て部屋を後にしフィリアンノ城を歩いていた。

「はぁ……」

周りの景色はとてもよく清々しささえ感じさせるほどだった。
だが、そんな中で俺は思わずため息をついてしまった。
俺らしくもない。
ユキカゼの告白、そしてブリオッシュのキス……他にも色々と考えなければいけないことがあるはずなのに、さっきからこの二つの事が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
それはまるで呪いの言葉のように、俺に付きまとう。

(一体全体、俺はどうしてしまったんだ)

「はぁ……」
「何ため息をついてるんだ? 渉」

再度ため息をつくと、聞きなれた女性の声が聞こえてきた。
その声の方を見ると、そこには呆れたような目をして腕を組む親衛隊長のエクレールの姿があった。

「何だ、エクレール――かぁ!?」

俺の言葉を遮るようにして、エクレールに軽く頭を叩かれた。

「何だとは何だッ!」
「すみません」

エクレールの怒りように、俺は素直に謝ることにした。

「……怪我の方はいいのか?」
「ああ。おかげさまで何とか」

謝ったことでエクレールはため息をつきながら、心配そうに聞いてきた。

「そうか。ダルキアン卿やユッキーがとても心配しておられた。あまり無茶はするな」
「御忠告どうも」

俺のお礼に、エクレールは「ふんッ!」とそっぽを向いてしまった。

「そう言えば先ほどダルキアン卿が顔を赤くして走って行ったが、何かよからぬことをしたのではあるまいな?」
「ッ!?」

エクレールの問いかけに、俺は息をのんだ。
確かに何かがあった。
尤も、その何かを”した”のではなく”された”のだが。
それはともかく、俺の反応を見たエクレールの視線がさらに鋭くなった。

「渉、貴様まさか本当にダルキアン卿に―――――」

エクレールの声が、意識が一瞬遠くなった。
まるで双眼鏡で景色を見て外した時のように。

「――――かッ! 渉ッ!」

意識が戻ると、俺は地面にうずくまっており、体を揺すりながら心配そうに声をかけているエクレールの声が聞こえた。

「悪い、ちょっとした立ちくらみだ」
「そ、そうか」

俺はふらつきながらも立ち上がり、大丈夫だと告げる。
エクレールは渋々ではあるが納得してくれたようだ。

「渉、今日は大事を取って大浴場で汗を流し、安静にしていろ」
「そうする」

エクレールの言葉に、俺は素直に頷くことにした。
このまま動き回っていたらまた誰かに迷惑をかけるかもしれない。

「一応言っておくが、今は男の入浴時間だがあまり長湯をしていると女性の入浴時間になる。気を付けろ」
「り、了解」

頭の中に、エクレールに追い掛け回される自分の姿を想像し、頷いた。
取りあえずそれだけは防がなくては。
そして俺は大浴場へと向かった。










「ふぅ……久しぶりにゆっくりできる」

それもどうだとは思うが、俺はのんびりとお湯につかっていた。
念のために言うが、俺は体を一通り洗い終えている。

(やっぱり”世界”からは逃れられないか)

俺は自分の手を見つめながら心の中でそう呟いた。
俺の今回の一連の症状、それは世界と契約をしているがために起こったものだ。
”物質化抵抗現象”と同じだが、このままでは大変なことになる。

「それだけは防がないと」
「それとは、何でござる?」
「それはだな…………」

俺の呟きに自然に答える少女の声に、普通に答えようとして俺は固まった。
そしてゆっくりと横を見てみた。

「うわぁ!?」
「ひゃっ! い、いきなり大きな声を出してどうしたんでござる?」

俺の横には同じようにしてユキカゼがお湯につかっていたのだ。

「どうしてッ! なんで、ユキカゼがここにいるんだよッ!?」
「先回りしてエクレ達を驚かそうと思ったからでござるよ」

俺の半ば叫びながらの問いかけに、ユキカゼは屈託のない笑顔で答えた。

「にしたって、まだ男の入浴時間中に……」
「大丈夫でござる。この時間帯に入るのは渉殿ぐらいでござるから」

ユキカゼの言葉に、俺はあたりを見回してみた。
確かに、人の姿はまったくと言っていいほど見当たらない。

「それで、何を悩んでいるのでござる? 拙者で良ければ話を聞くでござるよ」
「……」

ユキカゼの言葉がきっかけとなったのか、俺は今まで心の中にとどめていた疑問を静かに口にする。

「どうしてユキカゼ達は、俺なんかにそこまで気を許すんだ? 俺に生きる価値なんてないのに、どうして――――」
「それ以上言ったら、さすがの拙者も怒るでござるよ」

俺の疑問を遮ったのは、怒気を含んだユキカゼの言葉だった。

「渉殿は拙者たちを、二回も身を挺して助けてくれたでござる。拙者やお館さまは渉殿の優しい心に引かれたのでござる。だから拙者は渉殿の事が好きになったのでござる」
「でも――」
「だから、渉殿。自分の事を『生きる価値がない』などと言わないでほしいでござる。もっと自分に自信を持ってほしいでござる」

ユキカゼの答えに、反論をしようとした俺の言葉を遮り、ユキカゼはすがるような声色で言ってきた。

「…………善処する」

それに俺が言えたのは、たったそれだけだった。
本当はお礼を言うべきなのに、俺は出来なかった。
自分の愚かさに、俺は悲しくなってきた。

「ところで、渉殿。できれば、その……拙者のこ、こ告白の返事を聞きたいでござるな……」
「………」

どもりながらも、ユキカゼは答えを促してきた。
きっとそういう流れだったのだろう。
聞かれたら応えなければいけない。

だからこそ、俺は答えた。

「ごめん」

それが、答えだった。

「そうでござるか」

その真意を悟ったユキカゼは穏やかな声色でつぶやく。

「もしかして、ほかに好きな人でもいるのでござるか?」
「それは……」

ユキカゼの問いかけに、俺の脳裏には一瞬一人の女性の姿が浮かんだ。
いつもはきりっとした武士のような女性で、時より見せる気が抜けた雰囲気の差が少し激しい女性の姿を。

「わ、悪かったでござる。これは聞いてはいけなかったでござるな」

応えようともしない俺に、ユキカゼは黙秘ととったのか謝ってきた。

「……そろそろ俺は上がるとする。聞いてくれてありがとう」
「また明日でござるよ。渉殿」

ゆっくりと湯銭から上がり大浴場を後にする俺の背中に、ユキカゼはいつもと変わらない声色で言ってきた。
そんなユキカゼに、俺は片手をあげて答えるのであった。

(俺も、覚悟を決めるか)

今、ひとつの問題が解決を迎えた。
だが、また新たな問題が出てきてしまったのだ。
しかもまだ、他の問題が解決はしていない状態だ。
だからこそ、俺は彼女から逃げてはいけない。
そう思ったからこそ、俺は決心をした。
ちゃんと自分と向き合おうという決意を。
そして俺は服を着ると、そのまま自室へと足を向けるのであった。


★ ★ ★ ★ ★ ★


「はぁ……フラれた、でござる」

渉が去っていき、一人になった大浴場の浴場でユキカゼは深いため息を漏らしながらつぶやいた。

「………」

つぶやいたユキカゼは自分の内心に負の感情が渦巻くのを感じた。

―どうして自分がフラれるのか―
―どうして自分ではないのか―

それを振り払うように、ユキカゼは顔を振る。

「はは、まさか拙者がこんな感情を抱くとは」

軽く言うユキカゼだが、その目はうるんでいた。

「おかしいでござるな。どうして拙者は泣いてるでござる?」

首をかしげながらも、頬を伝うものは止まらない。

「あ、そうか……」

そしてユキカゼは悟った。

「拙者は悲しいんでござるのか」

それは至極もっともな結果だった。

「う……うぅ……うあああああ!!」

そして、大浴場に彼女の嗚咽が響き渡るのであった。
それは、フラれたことに対するしがらみをすべて振り払うものなのか、それとも別の何かなのか。
それは定かではない
全てを知るのは当人のみだ。

拍手[0回]

IF-D 第3話 励ましとキスと

気づけば俺は立っていた。
俺はそこにいた。
”そこ”は、俺が最もよく知る場所。
”そこ”は、俺という存在を確立させる所以になった場所。
”そこ”は、俺にとって尤も思い出したくない場所。
”そこ”の風景が示すものは、きっと……

「ぅ………」

ふと目が覚めると、そこは天界ではなくよく見る天井だった。
周囲を見回すと、やはりフィリアンノ城内の俺に宛がわられた部屋だった。

(なんか変なものを見ていたような……)

俺は目覚める前に見ていたものを思い起こそうと頭をひねるが、記憶のかけらすらつかむことはできなかった。

(まあ、いいか)

重要なものであればいずれは思い出すだろうと思い、俺はそれ以上思い出すのをやめることにした。

「ッつ!?」

体を動かすと、体中に痛みが走るがそれを無視して起き上がるとベッドから出た。
上半身は白い包帯が巻かれていた。

「服は………あった」

俺はベッドの横に置かれた椅子の背もたれに掛けられていた服(とはいってもシンクが来ているジャージと、色違いの物だが)を着込んだ。
すると、扉が開く音がしたので、その方向を見る。
そこには桶のようなものを手にしたブリオッシュの姿があった。
ブリオッシュは俺の姿を見るや否や、信じられない物を見たように目を見開いた。

「渉殿ッ!」
「ブリオッシュか」

そして大きな声で叫ぶ彼女に、顔をゆがめながら声を上げた。

「何をしているでござるか!! 今日は絶対安静でござる!」

どうやら目を見開いたのは、俺がベッドから出て立っていたからのようだ。

「それは結構です。この通りもうほとんど完治したので………はい、分かりました」

俺の言葉を遮るように、ブリオッシュから無言のプレッシャーが襲う。
それに勝てるような俺ではなく、素直に従うことにした。
ベッドに横になった俺を見て、安心したのかほっと安堵の息を漏らすと、ベッドの横に会った椅子に腰かけた。

「渉殿が目覚めてくれてよかったでござる。もし私のせいで渉殿が死んだら、私は………」

ブリオッシュの表情は見えなかったが、彼女の両手が力強く握りしめられていた。

「あれはブリオッシュが悪いわけじゃない。単に俺が気を抜いていただけだ。あ、体調管理もできていなかったも加わるか」

後半はジョークのつもりで言ったが、ブリオッシュの表情は変わることはなかった。

「………はぁ。過ぎたことで後悔するのなら、先の事を考えよ」
「え?」

俺の言葉に、ブリオッシュはどういう意味だと言わんばかりに首を傾げた。

「失敗で後悔している時間があるのなら、しないようにしておけと言う意味。俺にとっての師匠が言った言葉」

本当は少しだけニュアンスが違うのだが、別にかまわないだろうと考えながら意味を説明した

「渉殿は、優しいでござるな」

だが、ブリオッシュを励ますことはほんの少しであっても出来たのだから、考えないでおこう。

「あ、今果物を持ってくるでござるから少し待っていて――キャッ!?」
「あぶなッ!」

徐に椅子から立ち上がったブリオッシュは、何かに躓いたのか前のめりに倒れようとしていた。
俺は慌ててベッドから飛び出ると彼女の前に回り込んで倒れないように支えようとする。

「うわッ!?」

だが、受け止める体制が出来ていなかったためかそれとも体が完治していないために、力が抜けているのか俺共々地面に倒れた。

「不覚でござる……渉殿、大丈夫で――」

ブリオッシュの言葉が、途中で途切れた。
何故かと思えば俺の目の前に、ブリオッシュの顔があったからだった。
眼は潤い頬を赤く染めたその姿は、何時もの大人の風貌を纏わせる彼女には似つかわしくない”一人の少女”を感じさせる物だった。

「渉殿……」

慌てて退くかと思ったが、ブリオッシュは俺の想像を超える行動をとる。
ブリオッシュは俺の名前をか細い声でつぶやくと、退くどころか目を閉じて逆に近づけてきた。

「え? んむっ!?」

驚いた瞬間には、俺の口はブリオッシュの唇に塞がれていた。

(これって、まさか……)

俺はそれが何なのかが分かったが、引き離すことが出来なかった。
まるで金縛りにあったかのように、体が固まってしまったのだ。

「ッ!?」

正気に戻ったのか、ブリオッシュは慌てて俺から離れた。

「こ、これは……その、えっと……」

慌てた様子で視線を俺から逸らすブリオッシュの姿に、俺は声も出なかった。

「も、申し訳ない渉殿ッ! わ、私急用を思い出したゆえ、失礼するでござるッ!!」

そして、そう言って逃げるように部屋を飛び出して行ってしまった。

「………」

俺に出来たのは、立ち上がって彼女が去った扉を見ている事だけだった。

拍手[0回]

第30話 毒と始まりの予兆

「すみません、戻りました」
「あぁ、パスタちゃんが用があるらしいわよ」

プリエに戻った僕は、厨房にいた主任に声をかけると用件を伝えられた。
どうやらパスタが僕に用があるようで呼び出したようだ。

「分かりました。パスタは?」
「パスタちゃんなら――」
「お、いいところに来たにゃ」

主任が答えているとひょっこりとパスタが姿を現した。

「お前らにはいろいろと迷惑をかけたのにゃ。そのお詫びにパスタの料理を食べてほしいのにゃ」
「パスタの?」

申し訳なさそうに言うパスタに、僕は意外だと思ってしまった。
根はいいやつなのはわかっているが、実際にわかりやすい行動を起こすとは思ってもいなかった。

(それに、パスタの手料理には少し興味があるしね)

それが本当の理由でもあった。

「それなら、ぜひご相伴させてもらいたい」
「じゃあ、ついてくるにゃ!」

そういって歩き出すパスタについていくとホールに出て一席に案内された。

「ちょっと待ってるにゃ」

そう言ってパスタは、厨房のほうへと向かった。

(パスタの料理か。楽しみだ)

僕はわくわくしながらパスタの料理が来るのを待った。
その間、せわしなく動くウエイトレスの姿を見かけた。

(ん? そういえば、神楽がいないな)

この時間帯であれば神楽も出ていなければおかしい。

「すみません」
「はい? なんでしょうか」

気になった僕は、近くを通りかかったウエイトレスを呼び止めた。

「神楽さんはどこにいますか?」
「西田さんなら、体調を崩したようで休憩室で休んでいますよ。何だか『体がしびれる』とか言ってましたけど」

ウエイトレスの人にお礼を言った僕は、首をかしげる。

(体がしびれる……なぜ?)

いくら考えても答えは出なかった。

「お待ちどうなのにゃ!」
「おぉ……」

パスタが運んできたのは、肉じゃがだった。
男性が女性に作ってもらいたい料理で、不動の1位と言う記録をたたき出すと言うので有名な料理だった。
目の前のテーブルには依然された肉じゃがは湯気を立てており、おいしそうな匂いが漂ってくる。

「それじゃ、いただきます」
「召し上がれにゃ」

満面の笑みを浮かべながら答えるパスタをしり目に、僕はジャガイモを口に運ぶ。

「………う!?」

口に含んだ瞬間、まるで爆発が起きたような錯覚に陥った。

「うまい!」
「へ?」
「おいしいぞ! パスタ。しっかりと煮込まれたジャガイモ。でも、柔らかすぎずかといって固過ぎずの中間点の煮込み具合はなかなか出すことができない芸当だ」

呆けているパスタをよそに、僕は味の評価をパスタに伝えていく。
それほどにおいしいものだった。

「これを食べたらどんな男でもいちころだろうな。まさしく男の胃袋をつかむ料理と言っても過言ではないだろう」
「い、いちころ……うにゃにゃにゃにゃ」

僕の言葉に、何を思い浮かべたのかパスタはしまりのない顔を浮かべる。

「でだ」

僕は、静かに箸をおくと切り出す。

「ジャガイモの味とは違う何かが入っているような味がしたが、一体どんな毒を盛った?」
「にゃ!? パスタの料理を食べてしびれたところを襲うという目論見がばれてるにゃ?!」

どうやら本当に毒を盛っていたようだ。

(なるほど、それで神楽は体がしびれているわけか)

パスタが口に出した言葉で、僕の疑問が解決した。
おそらく、つまみ食いでもしようとしたのだろう。
神楽は毒入り肉じゃがの餌食となったのだ。

「残念だったな。僕にはある程度の毒を中和する免疫があるから効かぬぞ」
「そ、そんなの反則にゃ!」

反則も何もそれが事実だ。

「さて、料理を馬鹿にするお前には罰を与えねばな」
「な、何する気にゃ!?」
「何、ねこ鍋にでもしてくれようと思ってな。ククク」
「ぎ、ぎにゃー!! こ、殺される」

そして、僕はパスタへのお仕置きを始めるのであった。










「それで、パスタさんは浩ちゃんに怯えてたのね」
「まあ、そんなところ」

数時間後、プリエの清掃作業をしながら毒入り肉じゃがの経緯を話すとあきれたような表情で答える。

「にしても、一体どんなお仕置きをしたのよ?」
「催眠術を駆使してねこ鍋の刑」
「あー」

僕の言葉に、神楽はすべてを悟ったような声を上げる。
具体的に言うとねこ鍋と言った後から彼女に催眠術をかけたのだ。
きっと彼女はねこ鍋にされた光景が頭の中に叩き込まれただろう。
これで毒入り料理は作らないだろう。

(ま、後でねこ鍋の記憶を消すか)

そう思いながら清掃作業を終わらせる僕たちなのであった。

「よし、こんなものだろう」
「うん。これで終わり。いやー毒食べてしびれた時はどうなるかと思ったけど、自浄できてよかったよ」

ちなみに神楽のような最上級神は自浄能力が備わっており、時間はかかるが毒の浄化ができるようになる。
劇薬の場合は効くまでの時間がゆっくりになりつつ、自浄作用で毒素が軽減されるくらいで無効化できなかったりもするが。
閑話休題

「ま、大した毒じゃなくてよかったよ。さて、そろそろ九条家の方に―――」
『浩ちゃん浩ちゃん、至急アジトまで~。早く来ないと――――』

僕の言葉を遮るように流れた呼び出しのアナウンスは、中途半端なところで終わりを告げた。

「あの人、本当にちゃんと言えないのか?」
「アジトってどこ?」

頭を抱えながらつぶやくと、神楽は首をかしげながら聞いてきた。

「たぶん理事長室だと思う。ちょっと言ってくる。神楽は先に戻ってて」
「分かった」

僕は神楽と別れるとヘレナさんの待つ理事長室へと向かうのであった。

拍手[0回]

『DOG DAYS~誤召喚されし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

大変お待たせしました。
本日『DOG DAYS~誤召喚されし者~』の最新話を掲載しました。
完全にハーレム編の内容とかぶっていますが、細かいところに微妙に加筆をしておりますので、少しでも楽しんでいただけると幸いです。
次話もこんな感じで行きたいと思います。

しかし、このユキカゼ・ダルキアン卿編の第2期はどうしましょう?
それぞれの話を書いていたら、確実に長くなるうえに、話が同じという結果になりそうな気が(汗)
とりあえずは、要検討ということで。


それでは、これにて失礼します。

拍手[0回]

カウンター

カレンダー

07 2025/08 09
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

最新CM

[03/25 イヴァ]
[01/14 イヴァ]
[10/07 NONAME]
[10/06 ペンネーム不詳。場合によっては明かします。]
[08/28 TR]

ブログ内検索

バーコード

コガネモチ

P R