健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第17話 相反

「ん………」

俺が目を覚ますと、そこは俺に割り当てられた部屋の天井だった。

(確か、あの時、魔物を退治して倒れたんだよな)

俺は簡単に倒れる前の事を思い起こしていた。

「起きたか」
「あ、エクレール」

声をかけられた俺は、その方向を見るとそこには若干強張ったエクレールが立っていた。

「全く、いきなり倒れるから」
「心配してくれたのか?」

俺の言葉に、エクレールの耳が赤くなった。

「な、何を言う! ただ……驚いただけだ」

そう言うと俺が横になるベッドの横まで移動した。

「医療班が風邪だと言っていたが、いつからだ?」
「……明確な症状が出ていたのは起きた時からだ」

エクレールの有無も言わせぬといった雰囲気に、俺は正直に答えた。

「体調が悪いのならなぜ出る前に言わない」
「言った所で、治るわけでもない。これは寝ていて治るようなもんじゃない」

俺の言葉に、エクレールは首を傾げる。
俺は”それに”と付け加える。

「俺が頓挫したら、エクレール一人で出撃になるだろ。何だかそれが嫌だったんだよ」
「そうか」

エクレールが答えた後、部屋内が微妙な空気が漂っていた。

「その、何だ……背後から来た魔物から守ってくれただろ」
「ああ、あれか」

俺は、そのことを思い出しながら呟いた。

「その………ありがとう」

最後の方はすごく小さかったが、なんとか聞き取ることが出来た。

「どういたしまして」
「~~~~~~ッ!?」

その俺の答えに、エクレールは顔を真っ赤にして部屋を逃げるように出て行った。

(全く、あいつは……)

俺はそのことに笑いながら思うと、別の問題を考えた。
それは、起きた時から起こっていた症状だ。

「物体化抵抗症状か」

俺達は天界にいる時は実体のない………いわば魂のみの形で過ごす。
これを霊体と呼び、シンク達のような存在を物体と呼んでいる。
こういう世界では霊体でいる訳にもいかず物体化をしなければいけないが、物体化した自分に耐えきれなくなってしまう事が多々ある。
それが”物体化抵抗症状”と言われるものだ。
症状は発熱に眩暈、食欲不振と言ったものが主だ。
治すには天界へ戻るしかない。

(まあ、天界に戻れればの話だけど)

俺は苦笑い交じりに呟く。

(今日は一日ゆっくりと眠らしてもらおうかな)

俺はそう考え、部屋に高濃度の霊力を散布する。
これで、擬似的にではあるが天界と同じ空間を作り出すことが出来る。
勿論、微々たるものであるが、異常状態を直すのには申し分ない。
そしてもう一度ベッドにもぐりこんで寝ることにしたのであった。

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第16話 魔物退治

俺達は、ロランから言われた場所へと向かっていた。

「おい、渉」
「何だ?」

そんな時、エクレールが若干不機嫌そうに声をかけてきた。

「なんでお前だけは歩きなんだ?」
「なんでって、こっちのほうが万が一の時に迅速に行動できるから」
「それだったらこっちの方がよっぽどできるだろ」

俺の答えに、エクレールがツッコんできた。

「戦いのときに、剣を使って動物に乗っていない者が、動物に乗っている者に対して出来る攻撃って何だかわかるか?」
「それは………」

俺の問いかけに、エクレールが無言になった。

「動物の足を狙う事だ。そうすれば、動物が暴れて乗っているものを落としたりする。その時に奇襲をかければ勝利となるわけだ」
「つまり、渉はそれが起こらないようにしてると言う事か?」
「まあ、そういう事だ」

エクレールのまとめに、俺はそう答えた。
とうとう周りは、草木が生い茂る所となった。
所謂危険地帯だ。

「気を引き締めていくとしよう」
「言われなくても!!」

顔を赤くしながら答えるエクレールをしり目に、俺は神剣を展開して前に進む。










そしてしばらく進んだ時であった。

「「………」」

俺は周りの空気の変化を感じ取った。
どうやらそれはエクレールも感じ取っていたようだ。
辺りに立ち込めるのは、異様な威圧感だ。
どうやらこれが魔物なのだろう。
エクレールは無言でセルクルから降りた。

「安心しろ、お前の事は出来る限り守ってやる」
「なッ!? お、お前は何を言ってるんだ!!」

俺の言葉に、エクレールが動揺しながら言ってきた。

「俺も男だしな。女一人守れないようじゃあ……ねぇ?」
「ふ、ふん!」

エクレールがそっぽを向いた時だった。
俺達の目の前に、それは躍り出た。

「これが、魔物か」

それは色は黒くやや大きめの動物だった。
その魔物は、鋭い牙をむき出しにして威嚇している。

(攻撃は主に噛みついたり引っ掻いたりと言った所か)

俺はすぐに相手の攻撃パターンを読み解いた。
数は2頭だ。
これなら手分けすればやれるだろう。

「エクレールそっちの魔物を頼む」
「分かった」

エクレールの答えを聞いた俺は、魔物へと向かって行く。

「■■■!!!!」

魔物は、俺に向けて突進してくる。

(おそらく引っ掻くなこれ)

俺はそう考えると神剣、正宗を一閃する。

「■■■■■■!!!!」

魔物が雄たけびを上げる。
俺がやってのは足の爪の切断だった。
これで、引っ掻くと言う攻撃はなくなった。

「最終審判、レクリエム!!」

そして、俺は超必殺技を魔物に向けて放つ。

「■■■■■■■■■!!!!!」

魔物は断末魔のようなものを上げながら、跡形もなく消滅した。
俺のやった超必殺技は、一種の浄化だ。
今のは、魔物を浄化したことによって魔物は消滅したのだ。
光と言うのは大量にあれば人を殺す武器にもなるのだ。
それは、闇にも言えるが……

(ッく!?)

その時、めまいが俺を襲った。
めまいはすぐに収まったが、体の調子がさらに悪化していくのを感じた。

「渉、そっちはどうだ?」
「お、こっちは無事完了だ。そっちは?」

俺は、ふらふらになるのを必死に堪えてエクレールに問いかけた。

「私の方は大丈夫だ。これしきの事で後れを取るようではない」
「そう言えばそうだ――――」

その時、俺はエクレールの背後で、鋭く光るものが見えた。
よく見ればそれは魔物の爪だ!
しかも、魔物はエクレールに向けて飛び掛かろうとしていた。
それからは反射的だった。

「エクレ! 危ない!!」
「え!?」

俺はエクレールに注意を促しながら、魔物とエクレールの間に立つ。
防御は間に合わない。
ならば、俺自身が盾となればいい。
その瞬間、衣の切れる音が聞こえた。
その次の瞬間には、腕に痛みが走った。

「ッぐ!?」
「な!? 大丈夫か! 渉!!」

何が起こったかに気付いたエクレールが慌てた様子で、聞いてきた。

「大丈夫だ。礼装で攻撃は防いだ。それよりも少し下がって」

俺の傷は大したことでもなく、おそらくは擦り傷程度だろう。
なんせ、俺の着ている礼装は物理攻撃のダメージを幾分か抑える効果があるのだから。

「あ、ああ」
「行くぞ。最終審判、レクリエム!!」

俺は、エクレールが下がったのを確認して、もう一度超必殺技を行使した。
俺にもう一度飛び掛かろうとしていた魔物は前と同じように消滅する。

「ふぅ。大丈夫……か」

俺はエクレールに怪我がないかを確認しようとしたが、それは叶わなかった。
それは突然襲った前のとは比べ物にはならない眩暈の為であった。
そして俺は体から力が抜け、そのまま地面に倒れた。

「お、おい渉!?」

俺は、エクレールの慌てた様子の声を聞きながら、意識を失うのであった。

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第15話 些細な異変と特別任務

エクレールとの模擬戦の次の日、俺は姫様のご厚意で割り当てられた部屋で目を覚ました。

「………」

だが、最初に感じたのは、倦怠感だった。
体がまるで鉛のように重い。
しかも何だか体がほてっているような気も。

(風邪か?)

俺はそう解釈すると、自分の体に治癒能力を高める術式を組むとベッドから起き上がった。
風邪程度でどうにかなるほど、俺は軟じゃない。
そして俺はシンクが来ているようなトレーナーの色違い(青色)を着ると外に出た。










朝食を食べ終えた俺は、エクレールに連れて行かれたのはロランの所だった。

「魔物退治!?」

そして唐突に告げられた内容に、エクレールが声を上げた。

「そうだ。姫様によると、ここから少々離れた森の方で大きめの魔物が姿を現したようだ。まあ、野生動物とは思うが、危険であるため退治する様にとの事だ」

ロランが説明するが、俺はちっとも頭に入ってこない。
体の調子が起きた時よりさらに悪くなっているのだ。
食欲がなく、体も重くてまっすぐ歩けない。

(これってもしかして……)

俺はその症状に心当たりがあった。
だが、それは今の俺にとっては最悪な事態でしかない。

「――――る、渉!!」
「な、何だ!?」

考えに耽っていると、突然耳元で大きな声で呼ばれ、俺は驚きのあまり飛び退いた。

「『何だ』ではない! 話を聞いていたのか?」
「悪い、聞いて――――ごふぁ!?」

答えるよりも前に、エクレールに頭を殴られた。

「魔物退治だ! 私とお前の二人で向かうのだ!!」
「なぜに?」
「生憎、人員が割けないのだ。勇者殿も主席と共にお城内を歩いている。そこで二人に頼みたいのだ。引き受けてくれるか?」

俺の疑問に、ロランが答えてくれた。
俺の答えなど、既に決まっている。

「勿論ですよ。その任務、引き受けさせてもらいます」
「そうか。では、早速で悪いが準備を整え次第向かってくれ」
「「はい!」」

俺とエクレールは元気に返事をする。
俺の体調の事が心配だ。
何も起こらなければいいが。
こうして、突如湧いて起こった魔物退治が始まった。

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第14話 謁見と模擬戦

姫様奪回戦の次の日、シンク達はどこかに集められていた。
何でも姫様の謁見があるのだと言う。
俺も来るようにと言われたが、そこには行かず、外で景色を見ていた。

「おや、これは渉殿ではござらぬか。ここで何をしているのでござるか?」
「これはこれは、ブリオッシュ殿。空を見ているんですよ」

俺に声をかけてきたのは、ブリオッシュだった。

「そのブリオッシュ殿はよしてもらいたい。拙者の事はダルキアンで良い」
「分かりました。ダルキアン卿」

俺はダルキアン卿と呼ぶことにした。
”卿”を付けるのは、一応礼儀だ。

「謁見に出なくてよいのでござるか?」
「ええ。自分はそこに出るほど活躍はしていませんし、そう言うのは苦手な物で」

俺はダルキアン卿の問いかけに、そう答えた。
まあ、どれも本当の事だが、俺のようなものに出る権利はないしな。

「そうでござるか。向こうの方も終わったでござるよ」
「え?」

ダルキアン卿の言葉に、お城の方を見るとキレかかっているエクレールとその横にはシンクとリコッタ、ユキカゼがいた。

「ッた?!」
「この馬鹿者! 姫様の謁見に出ないとは何事だ!」

そして突然頭を殴られると、大きな声で怒鳴られた。

「俺はああいうのは苦手なんだって。なんというか固っ苦しいと言うか、なんというかよく分からないけど」
「まあ、よい」

俺の返答に、エクレールはため息交じりにそう言った。
どうやら諦めた様だ。

「あれ、シンク達は?」
「む、そう言えばユキカゼの姿も見当たらない」

どうやら俺を置いてどっかに行ったようだ。

「あ、ちょうどよかった。ちょっと頼みたいことがあるんだが」
「む、言ってみろ」

俺は顔をしかめるエクレールに頼みごとを伝えた。










場所は変わって騎士団の練習用の広場。

「兄上!」
「エクレール、それに君は確か……」

そこにいた肌色の髪をした男性が俺を見て名前を思い出そうとしていた。

「小野 渉です。以後お見知りおきを」
「これはご丁寧に。俺はビスコッティ騎士団の騎士団長、ロラン・マルティノッジだ」

騎士団長、ロランは俺と握手を交わすとエクレールの方を見た。

「で、どうした? 今日の訓練は俺の担当のはずだが」
「実は、渉と模擬戦をしようと思っているのです」

ロランの問いかけに、エクレールが答えた。
そう、俺の問いかけはエクレールとのお手合わせだった。
親衛隊長と呼ばれるだけあって、その剣筋は良いに違いないと思ったからだ。

「渉殿と? それはいい。皆、いったん休憩だ」

ロランは訓練中の騎士達にそう言うと、集まるように告げた。

「これから、渉殿とエクレールが模擬戦をするので、よく見ておくように」

何やら注目されているのが少々あれだが、まあやっていれば気にならなくなってくるだろう。

「それで、武器は何にするんだ?」
「俺は、この剣で行く」

そう言って取り出したのは、神剣の吉宗だった。

「分かった」

エクレールも剣を手にすると、お互いに牽制し合う。
やがて、エクレールが動き出した。

「はぁ!!」
「ほっと!」

エクレールの剣劇を、俺は体を横に動かすことによって回避する。

「っく!」

さらにエクレールは剣劇をさらに強める。
時には上から、また時には俺の脚を払いのけるように。
だが、そのすべての攻撃を俺は剣を使わず、体を動かすことで回避している。

「うむ、実に良い剣筋だ。さすがは親衛隊長だ」
「貴様、私を馬鹿にしているのか!」

俺の評価に、エクレールは剣を振りながら言い返してくる。
その顔は若干本気になっていた。

「いんや。逆に尊敬しているのさ。だが、所詮はそこまで。この俺にその剣を当てるのにはまだ早い」
「ッく!」

俺の軽い挑発に乗ったエクレールの表情が本気になった。

(俺も本気になりましょうかね)

俺はそう考え、吉宗をもう一度握り直す。

「はぁ!!」
「っふ!」

エクレールの剣撃を、今度は剣で受け止めた。
金属同士がぶつかり合う音がする。
それは、俺にとっては場を盛り上げる歌のようなものだ。
俺は、力の流れをそらしてエクレールの剣を払う。
俺が狙っているのは、剣を超えての攻撃だ。
戦いの中、一番有利になるのは、そのものの武器を失くすこと。
武器がなければ、こっちに武器が残っている時点で、それは大きなアドバンテージとなるからだ。
では、今回の場合はどうするか。
それは、エクレールの持っている剣を突き破ればいい。
力加減を間違えれば、エクレールに怪我を負わせるが、この吉宗は人体を切ることはできない特性を持つ。

「はぁああ!!」
「そこ!!」

そして俺はエクレールの剣に向けて吉宗を突き刺す。
すると、剣は真っ二つに割れた。
………俺の剣と一緒に

「!?」
「なッ!?」

俺はそのことに、驚いた。
神剣は並大抵の事では折れることは決してない。
なのに、エクレールの持つごく普通の剣を貫いただけで、真ん中から真っ二つに折れたのだ。

(何だか縁起が悪いな)

俺がそう思っていた時だった。

「今回は引き分けであったが。何なんだ! あの戦い方は」
「何だって、普通にかわしていただけだ。後半はちょっと本気で行ったけど」

俺はエクレールの問い詰めに、動じずに答えた。
そんな中、拍手が響いた。

「お疲れ様二人とも。素晴らしい戦いであった」
「あ、ありがとうございます。兄上」
「恐悦至極です」

ロランたちのお褒めの言葉に、俺とエクレールはお辞儀をしてお礼を言った。

「あ、でしたらついでに皆さんに、面白いものを見せましょうか?」
「俺は構わないが、何をする気だ?」
「ほんのちょっとした手品です」

ロランの問いかけにそう答えると、俺は地面に落ちた二本分の剣を手にする。

「エクレール、手伝って」
「し、仕方がないな、手伝ってやろう」

そして、俺は手品を始める。

「まずは、この剣の折れた部分をつなげます」

俺は全員に見えるように、エクレールが持っていた剣の刃が折れた部分をくっつける。

「で、エクレールこの部分を指でこすってみてくれる?」
「分かった」

俺の指示に、エクレールは渋々と言った様子でつなぎ目部分を人差し指でこする。

(物体、修復)

俺は心の中で、そう念じる。

「はい、もう離してもいいよ」
「なッ!?」

指を離したエクレールは、剣の刃を見て驚きの言葉を口にする。

「はい、この通り剣は元通りになりました」
『おぉ~!』

俺が剣を突き上げると、見ていた人たちが簡単の声を上げた

「同じ要領で、こっちの方もやりましょうね」
「そ、そうだな」

そして俺はエクレールと共に手品を続けた。
ちなみに、分かっているとは思うが、手品ではない。
これは俺の神術によるものだ。
そんなこんなで、模擬戦&手品ショーは幕を閉じたのであった。










おまけ

「あの二人仲がいいでありますねー」
「うん、エクレも楽しそうだ」
「仲良きことは良きかなでござる」

エクレールと渉が手品をしているころ、少し離れたところで笑顔で話しているオレンジ色の髪をした少女と、金髪の少年に茶色の髪をした女性がいたとかいないとか。

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第13話 あっけない結末と、新たな出会い

突然現れたレオ閣下。

「レオ閣下!?」

その突然のご登場に俺は驚きのあまり、よそ見をしてしまった。
………そう、神速を使っていることも忘れて。
その結果……

「ゴベラ!?」

壁に盛大にツッコみました。
そして、そのまま俺の意識は闇へと落ちた。

「お、おい! 大丈夫か、渉!!」

慌てながら声をかけてくるエクレールの声を聴きながら。










~♪

「ん………」

俺はやけにはっきりと聞こえてくる歌声に、目を覚ました。

「目が覚めたか」
「エクレールか。ああ、この通りな」

俺は立ち上がりながら答えた。

「壁に突っ込んで気絶とは、俺もまだまだだな。エクレールにも心配をかけたようだし」
「な、何を言ってる! わ、私はお前のことなど心配などしていない!」

顔を赤くしながら俺の言葉を否定するエクレール。
何だか可愛らしい。

「ま、そういう事にしておく。で、状況は?」
「………勇者が姫様をコンサート会場に送って行った。それで間に合った様で、今姫様が歌い始めたところだ」

エクレールの説明によれば、今回は無事解決と言うことになる。
そして今聞こえているのは姫様の歌だろう。

「中々、良い歌声だ」
「中々とは何だ! 姫様の歌はとても素晴らしいのだ!」

”とても”を強調して言ってきた。

(感じ方は人それぞれ何だから大目に見て欲しいものだ)

俺はそう思いながら、姫様の歌に耳を傾けているのであった。










「あ、渉さん!!」

歌が終わり、しばらくするとリコッタの声がした。
声のした方に目をやると、こっちに向かって手を振るリコッタと、その横には二段のたんこぶがあるジェノワーズに、銀色の髪をした少年とブリオッシュの姿があった。

「リコッタか、その様子を見ると、問題はないようだな」
「ハイであります。勇者さまのおかげです」

俺の言葉に、リコッタは嬉しそうに答えた。

「で、あんたは誰だ」
「お、俺!? って言うか、そっちから名乗るのがセオリーだろ!」

銀髪の少年の言う事に一理があるため、俺は自ら名乗ることにした。

「俺は、小野 渉だ。好きに呼ぶと良い」
「俺はガレット獅子団領の王子、ガウル・ガレット・デ・ロワだ。ガウルでいいぜ」

ガウルと名乗った少年は、ガレットの王子のようだ。
と言うより、こいつが首謀者か。

「ふん!」
「って! いきなり何すんだよ!!」

俺はガウルの頭を、神剣の柄で軽く小突いた。

「そこの三人に言ったはずだ。”機嫌が悪い時にちょっかい出すとどうなるか。たっぷりと叩き込ませて貰おう”とな。叩き込めなかったから王たるお前に叩き込ませてもらった」
「………俺は反省すべきなのか怒るべきなのか?」
「前者を取れば懸命だな」

ガウルのボヤキに、俺は素で返した。

「お館さま―!」
「ユキカゼ、戻られたか」

そんな時、後ろの方から少女の声がしたので振り返ると、後ろに束ねられた金色の髪にキツネ耳としっぽを生やした少女がブリオッシュの方に駆け寄っていた。

「……? こちらのお方は?」
「俺は勇者殿の”おまけ”の小野 渉だ。呼び方は好きするといい。ちなみにこんな喋り方だがこれはいつもの事ゆえ、気にしないでもらいたい」

俺はおまけの部分を強調して自己紹介をする。
もちろんこれは、ある種の皮肉だ。

「私はビスコッティ騎士団自由騎士、隠密部隊筆頭ユキカゼ・パネトーネと申します。ユキカゼとお呼びください」

自己紹介を返してきた少女……ユキカゼと握手をする。

「ッ!?」

手が触れあった瞬間、手に電気のようなものが走った。

「どうかされたでござるか?」
「あ、いや。なんでもない」

ユキカゼの声にハッとすると、俺はそう答えて手を離した。

「なによ、デレデレしちゃって」
「ん? なんか言ったか? エクレール」

俺は後ろの方で怨念もろもろの様子でつぶやくエクレールに尋ねた。

「何でもない! 私達も戻るぞ!!」
「あ、おい!」

歩いて行くエクレールについて行く形で、俺もミオン砦を後にした。
こうして、姫様奪還戦は幕を閉じたのであった。

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