健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第1話 始まり

「ん……」

窓から差し込む眩しい光に、俺は朝であると思いベッドから起き上がった。
俺、結城 竜介はどこにでもいる高校生だ。
ある一点を除いてだが。

「ふわぁ~」

しっかりと寝たはずなのだがあくびが漏れてしまうのは、まだ寝たりないからなのだろう。
だが、別に俺は夜更かしをしたというわけではない。

「竜介、起きてる?」
「ああ、ちゃんと起きてる」

そんなどうでもいい疑問を考えていると、ドアを開けて入ってくる黒髪を後ろの方に束ねる真面目そうな雰囲気をまとっている少女。
彼女は、俺の妹にあたる美柑だ。

「………」
「な、何だよ」

じーっと俺の事を見てくる美柑に、俺はその視線の理由を聞く。

「いや、竜斗じゃないかなって」
「話しているだけでわかってくれよ。あいつじゃないだろ?」
「そうだね。竜斗がまた昨日の夜家の中を歩き回っていて、びっくりしちゃって大きな声で叫んだら睨まれたから。だって、いきなり目の前に出てきたら誰だって驚くよ!」

美柑は俺に不満をぶつける。
ある意味正しいけど、言う相手を間違えている。

「………それはあいつに直接言ってくれ」

そんな美柑に、俺はげんなりとため息をつきながら返す。

「まあいいや。朝ごはんで来てるから、早く降りてきてね」
「分かった」

俺はそう告げて部屋を後にする美柑にそう答え、手早く制服に着替える。
それは何時も繰り返された日常のサイクルだ。

「っと、そうだった。日記日記っと」

ただ違うのは、そのサイクルの中に日記を確認するのがあること。
机の上に置かれた一冊のノートは通称『交換日記』だ。
とは言っても、他の誰かと交換日記をしているわけではない。
していたとしてもする相手がいない。
そんな俺が交換日記をしている相手は|自分自身《・・・・》とだ。
俺はノートをめくり、昨日の日付のページを見る。
そこには読みやすく文字が綴られていた。

『その願いは取り下げだ。私が手を貸したら意味がないだろ? しかも男として最低の行為だ。そもそも私は恋愛関係は苦手だ』

俺の頼みはあっさりと却下された。
先日付のページに、”とある女子への告白をしたいから力を貸してほしい”ということを書いたのだ。
俺としては、冗談半分で書いたのだが、こうもあっさりと却下されると何だかショックだ。
その女子の事に関しては、またの機会に説明するとしよう
さらに、下の方に文字が続く。

『追伸:お前の妹に、いい加減慣れろと伝えてくれ。会うたびに悲鳴をあげられる身にもなってほしい』

(あいつも気にしてたのか)

その文章に、俺は思わず苦笑してしまった。
さて、俺のたった一つ普通の人と異なる点。
それは、俺の中にいるもう一人の”俺”の存在だ。

その兆候が出たのは俺が10歳の誕生日を迎えてからだ。
誕生日を迎えて数日後を境に、妹の美柑が俺を畏怖の目で見るようになったのだ。
その理由は”俺がまるで人が変わったかのように、怖くなったから”らしい。
その後もそんな事が頻繁に起きた。
それに伴って、俺自身も記憶が途切れたりすることが自然と多くなった。
そして記憶が戻った時には決まって周りの人が怯えたような目をする。
たまに帰ってきた両親に事情を話したところ、精神科で見て貰うことになった。
その結果、俺にはもう一人の人格が出来ているという診察結果が出た。
そして医者の勧めで交換日記を始めたところ、その人物と俺は今のような文談が可能となった。
ここまでなら、俺は普通の二重人格だろう。

普通のとは違うのは、もう一人の俺には不思議な力があること。
そして、俺の判断で自由に入れ替わったりすることが出来ることだ。
その方法も、もう一人の俺が教えてくれた。
何でも、体のどこか(手の甲などでもいい)に五芒星を描けば力のみを行使できるようになり、地面に描けば人格を任意に入れ替えることが出来るらしいのだ。
入れ替える際には地面に五芒星を描いた後にしゃがみ込んでどちらか片方の手でその場所に触れなければいけないという制約はつくが。
最初は俺も信じてはいなかったが、試しにやってみたら普段の俺にはできない芸当(100mを5秒で走ること)が簡単にできたのだ。
それ以来、俺は自分の手には負えないほどの問題(何故か看板が落ちてきたときや、階段から滑り落ちたりした時など)が起こった時に、もう一人の俺の力を借りるか、入れ替わったりしている。
その代り、夜に俺が寝た後はもう一人の俺の時間と決めている。
その時間は、彼が何をするのも自由な時間だ。
ちなみにもう一人の俺の名前が”竜斗”だ。
もっともこれは本名ではなく、俺がつけた名前だ。
理由としては俺の名前の、竜介と二つ目を示す”Two”の頭文字を取ったからだ。
彼曰く『どうでもいい』とのことなので、俺と美柑は彼を竜斗と呼んでいる。
一番不思議なのは、家族が俺達を受け入れた事だった。
病院に行く時まで怯えていた美柑でさえも、気づけば普通に接する(竜斗に対しては別だが)ことが出来るようになっていた。
だが、それは社会ではそれが通じない。
社会は俺のような異常な人物には厳しいのだから。
だからこそ、俺は学校などで不用意に力を解放したり、入れ替えたりしないように過ごしているのだ。

「竜介~!!」
「あ、ああ。今いく!!」

下の方から聞こえる声に、俺はそう返すと、慌てて自室を後にするのであった。
……この日を境に、力を解放したり入れ替えたりすることを迫られる状況が頻発することも知らずに。

拍手[0回]

PR

『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』&『魔法少女リリカルなのは~世界からの来客者~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
二話同時掲載です。
ようやく入学式まで行くことができました。
次の話も大体は出来上がっていますので、次の巡回執筆時に掲載できると思います。

さらに『魔法少女リリカルなのは~世界からの来客者~』の最新話を掲載しました。
かなりの間隔がありましたが、何とか掲載にこぎつけました。
果たして本当の最新話を掲載できるのはいつになるのか……・微妙なところです。


それでは、これにて失礼します。

拍手[0回]

第2話 入学式!

あれから数日の時間が流れる。
僕は、新たに通うことになった桜ヶ丘高校の制服に袖を通していた。

「はぁ……」

これから毎日通るであろう住宅街を歩きながら、僕はため息を漏らした。
これで何度目だろうか?
今日は入学式。
おそらく生徒たちはこれから始まる新たな日常に胸を躍らせている事だろう。
そんな中、僕は憂鬱な気分だった。

(何で僕が元女子高に)

僕は、未だに割り切れていなかった。

(まあ、願書を出すの日が遅かったんだから当然かもしれないけど)

それでも割り切ることはできなかった。

(女性に興味がないわけでも恐怖症でもないんだがな)

僕は女性に興味は多少なりともあるし、恐怖症だなんてこともない。
ただ単に”万が一”の時が一番恐ろしいだけだ。
女子の結束力は良い意味でも悪い意味でも恐ろしいほど強いのだから。

「9割が女子で残りの1割の男子の1割に僕が含まれているのか」

そう思うとなんだかすごいと思えてしまうのも仕方ない。

(というより、僕はどうやって合格したんだ?)

面接でも志望理由を聞かれたような記憶があるのだが。
……もっとも答えた内容は忘れてしまったが。

(不純な理由じゃなかったのが合格の決め手になった…………なんてな。そんな分かりやすい基準じゃないか)

一体一クラスに男子は何人いるのだろうか?
僕一人だったらどうしよう?
再び不安になってきた。

「まあ、いつまで悩んでいてもしょうがないか。いっその事楽しむ勢いで行こう」

(それが例の課題(・・・・)もクリアに繋がるのかもしれないし)

僕はそう考えをまとめた。

「すぅ……はぁ……」

いったん立ち止まり目を閉じると大きく深呼吸をする。
そして目を開けると、そこに広がる光景は今までとは見違えるほど素晴らしく見えた。
周りの光景など、心の持ちようで見え方が変わるのかと、どうでもいいことを学んだ僕は再び足を進める。
少し歩くと十字路に差し掛かった。
「この十字路からパンを口にくわえた少女が飛び出したりして」
どこのラブコメだよと心の中でツッコむ。
大体今の時間帯はまだ遅刻するような時間でもないし。

「うわッ!?」

そう思っていたところ目の前の十字路から少女が飛び出して来た。
しかもパンをくわえて。

(な、なんというベタな)

あと一歩前に進んでいたらぶつかっていたかもしれない。
どうやら僕は運がいいようだ。

(にしても、かなり急いでいたな)

僕は少女が走り去って行った方向に視線を向ける。

(遅刻するってわけでもないのに走るなんて。とても律儀な人なんだな)

僕は先ほどの少女にそんな印象を抱いた。
きっと品行方正なのだろう。

「ん?」

自分の中で結論付けて歩き出そうとした僕は、地面に落ちている何かに目を止める。
それはピンク色で何やらキャラクターのようなものが縫われているハンカチだった。

「これって明らかに、さっきの人のだよな?」

もしかしたら別人かもしれないが。

「…………って、早く追いかけないとッ!?」

僕は慌てて少女の後を追いかける。
全速力ではなく若干パワーを抑えている。
そうしなければきっと僕は風になるだろうから。
全速力でなくても今の速さも普通の人よりはかなり出ている。
現にさっきの少女の後姿が徐々に近づいてきているのだから。

「おーい! そこの走っているあなた!」
「ふぇっ!? うわっととと?!」

声が聞こえるであろう範囲まで追いついた僕は大きな声で前を走る少女に声をかけると、それに驚いた少女は一瞬バランスを崩して転びそうになるが、なんとか転ばずに済んだようだ。

「だ、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です!」

少女は大丈夫だということをアピールしながら答える。
口にくわえたパンはどうやら途中で食べきったようだ。

「これ、君のですか? さっき向こうの方で拾ったんですが」
「あ、私のです! すみません、ありがとうございます」

僕が少女に差し出したハンカチは彼女の物だったようで、大事そうにスカートのポケットしまいながらお礼を言ってきた。
その少女は栗色の髪を左右と真ん中に分け、僕から見て左側をヘアピンで留めていた。

「いや、当然のことですよ」
「……あッ!? 遅刻、遅刻!!」

僕の答えなど聞かず、少女は再び慌ただしく駆けて行った。

「…………」

僕はそんな少女の後姿を呆然として見送る。

(……ただのおっちょこちょい?)

そんな事を思ってしまうのもある意味当然だと思う。

(それにしても彼女も桜高の生徒か)

着ている制服が前に見た桜高の女子用の制服と同じだったことから、僕はそう考えた。
そして僕は再びゆっくりと歩き出すのであった。










「ここが私立桜ヶ丘高等学校」

とうとう来てしまった。
元女子高であった桜高に。

「よしっ!」

僕は絶壁から身をとおじる投じる覚悟で校門をくぐる。
昇降口に入り『新一年生』と書かれた紙の下駄箱に靴を入れると、制服一式と一緒に入っていた青色の上履きを履くと奥の方に張り出されている新一年生のクラス分け表を確認する。

「僕は四組か」

自分のクラスが分かった僕は、四組の教室へと向かう。





「本当に女子しかいないよ」

四組の教室に入った感想が今のだった。
周りを見れば女子、女子、女子。
まさに元女子高であるのを思わせる光景だった。
席の方は黒板に張り出されている席順で決まっている。
僕は廊下側の間だ。
隣の女子生徒はいないようだ。

(入学式までの間、どうしたものか)

この教室に足を踏み入れた時点で一斉に何とも言い難い視線にさらされたのだ。

「お前がもう一人の男子か」

これをもう一度味わえるかと聞かれれば、答えはNoだ。

「よっ!」

最強を名乗る男が何を言ってるんだと思うが、これが現実だ。

「あれ聞こえなかったか? おっす!」
「……………」

ところで、先ほどから馴れ馴れしく声をかけ続ける黒髪の男は何なのだ?
悪く言えば鬱陶しい。
男子は各クラスに二人ずつ入れられているようだ。
何故に二人ずつなのかが分からないが。

「あのー、いい加減反応してくれてもいいでしょうか?」
「なに?」

とりあえず今目の前にいる人物に、僕は鬱陶しさを隠すことなく反応することにした。

「お、やっと返事をしてくれたか! いや、男子がほかにいてくれて助かったぜ。俺は佐久間(さくま) 慶介(けいすけ)。よろしくな!」
「………………」
「あ、あれ? また返事が」

僕は名乗り返すのが嫌になった。
相手の話方から、妙に嫌いな奴のタイプとぴったり重なる。
だが、同じクラススメイトだ。
そうも言ってられない
それに何より。

「はぁ。高月浩介だ。呼び方は任せる」
「おぅ、俺の事も慶介って呼んでくれ!」

目の前の男が悪い奴には見えなかった。
人を見る目だけは、あるつもりだ。
きっとこいつは良い奴だ。
……もっとも、鬱陶しいのが玉に傷だが。

「ところで聞いてくれ浩介! この俺の素晴らしいスクール・プランを」
「言ってみなよ」
「おう! まずはここのクラスメイトの女子とお友達になるだろ、それでお付き合いするという素敵なプランだ!」

はっきり言おう。
目の前の男の言葉で、周囲の温度が三、四度下がった。
そして視線が痛い。

「……佐久間慶介」
「何だ? 俺の素晴らしい計画に感銘したか?」
「僕に話し掛けないでくれるか?」

自分でもびっくりするほどの低い声で佐久間に告げる。

「な、なぜだ!?」
「お前と同類にされるのが嫌だから」
「お前も男だろ! 女の一人や二人と付き合ったっていいじゃねえか! いいか! ハーレムは男の夢だ!!!」

知らないし。
それに、そんな事を大声で言わないでほしい。
本当に視線が痛い。

「佐久間慶介」
「何―――ゲフッ?!」

僕は演説し続ける佐久間の脳天に鋭い一撃を加えることで演説を止めた。

「うるさい」
「ハイ」

ようやく佐久間は大人しくなった。
周囲からの視線も徐々にではあるが暖かい物となった。

(何だかものすごく目立っちゃったな)

今の一連のやり取りで、僕の当初のなるべく静かにして医療と言う密かな目標はことごとく潰された。
そんなこんなで、僕は入学式に出るべく入学式の会場でもある講堂へと向かうのであった。

拍手[0回]

第1話 衝撃の事実

成田空港に到着し、入国審査を終えた僕は成田空港のロビーである人物を待つ。
その人物は、僕のかけがえのない仲間でもあり、送迎する人物でもある。

「浩介、こっちよ」
「あ、中山さん」

短い黒髪に、整った顔立ちから凛としたオーラを纏う女性が中山なかやま みどりさんだ。

「一月ぶりね」
「ええ。その時は非常にお世話になりました」
「なに、困ったときはお互い様よ」

ボーイッシュな感じだが、根はとても優しい人だ。

「さあ、車に乗りなさい。君の家に送ってあげる」

僕は中山さんの厚意に甘える形で車のトランクに荷物を積むと、助手席に乗り込みシートベルトを締める。

「それじゃ、行くわよ」
「よろしくお願いします」

僕の言葉を受けて、車がゆっくりと滑り出す。
僕は再び車の窓から外を眺める。
たった一月しか経っていないのに、こうも懐かしく感じるというのは、僕は根っからの日本人だということを示しているのかもしれない。

「向こうの方はどうだった?」
「快く送り出してくれましたよ」

中山さんの問いに僕は静かに答えた。

「本当に、未練はないの? あそこにいれば一流企業とかにも行けるんでしょ?」
「そうですけど……でも僕は、日本人ですから」

僕の答えに、中山さんは”そう”と相槌を打った。
それから再び無言状態が続いた。

「まあ、これで私達のバンド”hyperハイパーprominenceプロミネンス”も活動再開というわけね。そうよね、”DK”?」
「ちょっと、勘弁してくださいよ」

中山さんのからかうような口調で言われたことに、僕は苦笑を浮かべる。
そう、彼女は僕が所属するその世界で知らぬ人はいないと言われているほどの有名バンド、hyper-prominenceの一人なのだ。
ちなみにDKと言うのは、バンドで活動している際の僕の名前だ。
DK=僕という事は、バンドメンバーしか知らない。
それにはある理由があるのだが、それはまた別の機会に話すとしよう。

「まあ、冗談は置いといて、浩介のおかげで死にかけていた私達は、一流バンドになれてるんだから。本当に浩介様様よ」
「……」

中山さんの言っていることはある意味正しい。
当時、彼女たちのバンドは言い方は悪いが今とは間反対の環境だった。
それを部外者の僕とバンドメンバーの努力が実り、ようやく一流バンドまで上り詰めたのだ。

「浩介の演奏指導とたくさんの持ち曲やカバー曲。みんな、あなたに感謝してるのよ。だから、メンバーを代表してお礼を言うわ。ありがとう」
「……素直に受け取っておきます。でも、これからはもっともっと頑張りましょう。何せ、僕たちに灯った火は誰にも消せないんだから」
「………ああ、そうね」

僕は中山さんと今後について意気込む。









自宅の前に到着し、トランクに積んだ荷物を取り出した僕は、荷物を取り出すのを手伝ってくれた中山さんに頭を下げてお礼を言う。

「ありがとうございました」
「いいって、いいって」

そんな僕に、中山さんはフランキーに相槌を打つ。

「それじゃあ、良い学校生活を・・・・・・・ね」

そして中山さんは、意味ありげな言葉を告げ、僕が何のことかと尋ねるよりも早く運転席に乗り込んで、そのまま走り去ってしまった。

「何だったんだろう?」

彼女の車を見送りながら首を傾げる僕は、まあいいかと割り切り数年間空き家にしていた我が家に足を踏み入れる。





「さて、こんなもんだろう」

一通り持ってきた荷物の片付けも終え、ついでに食材の買い出しも済ませた僕は、それを冷蔵庫にしまい終えると、自室でくつろぐことにした。

「お、久しぶりだな。このギター」

僕一人にしては広すぎる自室の窓側の壁の近くにあるギター掛けに掛けられたギター”Gibson ES-339”を僕は手に取った。
このギターは甘く軽快な音色で、低音がはっきりと出るという特徴がある。
十数個のギターを試し弾きして、ようやく決めた愛機で、バンドなどでも使っている僕の右腕的存在だ。
僕はギターをリードでアンプにつなぎ、電源を入れる。
ボリュームを徐々に上げて行き、軽く弦を弾く。
すると、軽快な音色が流れた。
その音色を確認した僕は、今度はピック手にして軽くギターを弾く。
曲ではなく、試し弾きの要領だ。
最初はゆっくりなテンポで、徐々に早めにしていく。
ある程度弾いた所で、僕はギターの弦を抑えて音を止める。

「よし、腕は落ちてないな」

僕がしたのは、腕が鈍っていないかの確認だ。
少々ギターから離れていたので、心配だったがどうやら大丈夫のようだ。

(まあ、離れていたとしても半年だけだけど)

イギリスに留学する際には、ギターも持って行ってよく弾いていた。
ただ、日本に戻ることを決めてそれを日本に送ったのだ。

「ん? これは制服か」

ギター掛けにギターを掛けると、僕は机の上に置かれた大きな箱に目が留まった。
というよりどうして気づかなかったんだろう?

「サイズは中山さん達の方に伝えたから大丈夫だとは思うんだけど………」

イギリスの方での授業の合間に帰国したため、制服合わせなどをする暇もなく中山さんにイギリスの服屋で採寸してもらったサイズを学校側に伝えて貰うことにしたのだ。
中に入っていたのは冬服なのか、白のTシャツと紺色のブレザーに黒色のズボンといった制服一式が入っていた。
取りあえずそれを試着してみた。

「…………」

ぴったりというくらいにサイズが合っていたが、制服を着た自分の姿を見るとどうも違和感が出てしまう。

(制服を着るなんて何回目だろう?)

昔の事なので良くは覚えていないが、少なくとも3回以上は着ている気がする。
しかし……

「しっくりこないな」

自分の制服姿を鏡で見てみるが、どうもしっくりこない。
ただ単に似合わないというだけなのだが。

「とりあえず着替えるか」

僕は制服を脱ぐとハンガーにかける。

(これは何だろう?)

制服の入っていた箱の横に置かれた大きな紙袋の中身を見ると、教科書が入っていた。
僕は教科書一式を取り出すと、同封されていた教科書リストと照らし合わせて、すべてそろっているかを一冊ずつ確認していく。

「これが入学式のお知らせか」

続いて紙袋に入っていた入学式を知らせる用紙を手にするとそれに目を通す。

「よし……次は、生徒手帳か」

紙袋の中に入っていた最後の手帳のようなものを取り出す。
手帳を開くと高校名と僕の名前に学年、そして顔写真が貼ってあった。

「そうだ。高校の名前見ておかないと」

いつまでたっても高校の名前が分からないというのはまずいだろうと思い、僕は学校名の欄を見る。

「…………は?」

高校名を見た僕は、一瞬固まった。
その理由は学校名の欄に記された文字だった。

「な、なんで桜ヶ丘高等学校なの?」

そう、その学校は”私立桜ヶ丘高等学校”だった。
記事で見た共学化した女子高の名前と同じだった。

「こ、これはきっと同じ字なだけだ」

僕は微かな可能性に飛びつくと、生徒手帳に記載されていた住所を携帯のインターネットに打ち込んで検索を掛ける。
結果はすぐに出た。

「……今年から共学」

無残にも可能性は砕かれた。

「そ、そうだ! これは夢だ!」

僕は頬を引っ張る。

「痛いッ!?」

鋭い痛みが走った。

「……字が変わってない! という事は、これは現実?!」

痛む頬をさすりながら生徒手帳を見るが、やはりそこには”桜ヶ丘高等学校”の文字が記されていた。

『それじゃあ、良い学校生活を・・・・・・・ね』

その時、中山さんの言葉が頭の中に浮かび上がってきた。
きっとこのことだったのだろう。

「………………………………」

信じたくない現実を目の当たりにした僕は、只々立ち尽くすだけだった。

拍手[0回]

『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』&新作『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

大変お待たせしました。
本日、『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』の最新話を掲載しました。
浩介と聖沙のやり取りが主でしたが、次回は、いよいよ戦闘編です。
自分の力を隠して戦わなければいけないというハンデを抱えた浩介の奮闘を、楽しみにして頂けると幸いです。

そして、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
待望の新作です。
主人公は浩介ですので、もちろん魔法要素ありです。
とは言え、それほど出てはきませんが。
ヒロインに関しては、現在案を募集中ですので、拍手コメント等からどしどしと応募してください。
この調子で進めていければ良いなと思います。


それでは、これにて失礼します。

拍手[0回]

カウンター

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

最新CM

[03/25 イヴァ]
[01/14 イヴァ]
[10/07 NONAME]
[10/06 ペンネーム不詳。場合によっては明かします。]
[08/28 TR]

ブログ内検索

バーコード

コガネモチ

P R