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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
今回より、学園祭の話に入ります。
何気に70話を超えています。
そして一番の問題は、タロットの設定を忘れかけていたことだったりしますが(苦笑)


それでは、これにて失礼します。

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第72話 衝撃の知らせ

バンド名も無事に決まり、学園祭まで残り二週間を切ったある日の放課後。
この日も学園祭に向けて練習をしていた。
とは言っても、通しで演奏をして見つかった問題点を改善していくという詰めの段階だ。
そのおかげで、何とか人に聞かせることのできるレベルにまで問題は改善することができた。

「あら、みんなもう練習をしていたのね」
「あ、さわちゃん」

そんな中、顧問である山中先生が部室を訪れた。
大量の衣装が掛けられたカートのようなものを持って。

(何だか嫌な予感がする)

そして、その予感は現実のものとなる。

「あの、先生。それはなんですか?」
「これはね、梓ちゃんたちのために用意した学園祭用の衣装よ!」
「……え」

衣装を指差しながら山中先生に疑問を投げかけた梓は、その返答に固まった。

「さあ! この中から好きな衣装を選んで!」
「うわ、強制かよ!?」

もはや拒否する余地は与えないと言わんばかりの山中先生に、僕はため息をつきそうになった。

(なんだかものすごくマニアックなものがあるし)

ウェイトレスやバニー服にチャイナドレスなどなど。
まさしくマニアックなものだった。
驚きなのは、それをノリノリで着ていくムギだが。

「なんだか楽しくなってきました」
「おーい、帰ってこい」

洗脳されかかっている澪が危ない方向に行きかけている。

「ねえ、見てみて!」
「ん?」

そんな中、いつの間に着替えていたのか青色に赤色の丸型の模様があしらわれた浴衣を着ている梓とピンク色に赤っぽい丸型の模様があしらわれる浴衣を着ていた。

「これはどうですか?」
「これ可愛いよ~」

そう言って後ろを向く梓の横で笑顔を浮かべながら飛び跳ねる唯。

「そうね。それなら動きやすそうだし」
「ま、まあ。それなら」

律以外の女性陣の反応は良好だった。

「これにしようよ~」
「まあ、これならいいか」

とそんな流れで、何とか衣装は浴衣に決まった。

「それじゃ、みんなの分を作るわね」
「あの、山中先生」

衣装が決まったことで、浴衣の服を僕たちの分も作るために部室を後にしようとする先生を僕は引き止めた。

「作る時は、ちゃんと男物も作ってくださいね?」
「もちろんよ。任せなさい!」

胸を叩いて頼もしそうに答えるが、去年それで女子用の衣装のみを持ってきた前科がある。

(本当に信じていいのかな?)

そんな不安を感じてしまうのであった。

「唯、練習の続きをするから着替えろ」
「えー、私はお茶にしたい!」

唯に注意すると思わぬところから反論されてしまった。

「もうライブまで日もないんですよ?」
「そう言う時だからこそ、ゆとりって大事じゃない?」

(ゆとりと、サボるのは違うんだけど)

「た、確かにそうですけど」
「………はぁ。だとしても、制服に着替えろ」

律の説得は無理なのでしないことにして、僕は唯に再度着替えるように促した。

「ねえねえ、これ似合ってる?」
「十分に似合ってる。だから制服に着替えろ」

一回転してアピールをしながら聞いてくる唯に、僕は半ば投げやりになりながらももう一度着替えるように促す。

「ぶーぶー。浩君今日はノリが悪いー」
「はいはい。良いからいい加減着替えなって。」

頬をふくらませて抗議する唯に、僕は何度目になるかわからない促しをした。

「分かったよ。浩君のいけず」

不満を漏らしながらも着替えに向かう唯に、僕は心の中でため息をついた。

「何だか必死だよな、浩介」
「そうか?」

律の言葉に、僕は首をかしげながら聞きかえした。

「だって、あそこまで食い下がる浩介始めてみたぜ」
「私もだ澪たちが言うのだから、間違いはないのだろう。」

(ちょっと反省、かな)

少し強すぎたのかもしれないので、僕は心の中で反省することにした。

「まあ、学園祭も近いし、せっかくライブができるんだから服に穴が開いたりしたら大変でしょ」
「なるほど。唯ならやりかねない」
「律先輩、それは唯先輩に失礼なのでは? 気持ちは分かりますけど」

後輩にまで分かられる唯のことが、とても不憫に思えてきた。
そんなこんなで、制服に着替えた唯を加えて、いつものティータイムへと移った。
僕たちの今の状態は、バンド名そのままだった。

「そういえば、浩君はみんなのことを携帯の電話帳になんて登録してるの?」
「いきなりなんだ? やぶから棒に」

唯の突然の問いかけに、僕は内心で首をかしげながら聞き返した。

「ほら、人によって、名前とか色々打ち方があるかなーって思って。例えば、私は浩君のことは”浩君”で登録しているし、あずにゃんのことも”あずにゃん”で登録しているから」
「まあ、どんな名前で登録しようが個人の自由だから、とやかく言うことはないけど僕はたいていは苗字だけかな。電話帳ってふとした拍子に誰かが見ることもあるから。まあ姉妹とか兄弟がいる場合はフルネームだけど」

僕のはおそらくオーソドックスなつけ方だと思う。

「なんだ、つまんないの。てっきり”番長”とかそんな感じのあだ名で登録してるかと思った」
「一体律の頭の中の僕は、どれだけ変なやつなんだよ?」

思わず律の言葉に、僕は突っ込みを入れてしまった。
そんなこんなで、いつものように時間が過ぎていくのであった。










「そろそろ長袖でも出しておくか」

それから数日後の夜、自室で僕は冬用の服を出そうか悩んでいた。
まだ季節は秋だが、少しずつ肌寒くなってきた。
現に、夏と同じようにシャワーでお風呂を澄ましたが、あまりの寒さに体を震わせたほどだ。
だからと言って、冬服はまだ少しだけ時期が早いようにも思える。

「…………もう少し様子を見るか」

結局、僕は様子見を選ぶことにした。

(にしても、何とかいい方向に流れてくれてよかった)

タロット占いで出た軽音部(放課後ティータイムだが)の空中分解の危機。
それは、澪と律の喧嘩によって引き起こされそうになった。
だが僕たちは、なんとかその危機を脱することができた。
若干ではあるが、目には見えない何かを狭間見たような気がした。

「でも、これで終わりなのだろうか?」

ふと、口をついで出てきたのは、そんな不安だった。
僕には胸騒ぎを感じていた。
その原因が

「あの時出たタロットで、まだ起きていないカードが二枚ある」

選ばれたすべてのカードは”必ず”現実になるのがこの占いの特徴だ。
だからこそ、律と澪を指すカードの原因が現実となり、僕が何もせず澪と律が話し合うことを示すカードも現実のものとなった。
そして、まだそれが現実になっていないカードが二枚ある。

「天然を示す『NATURAL』と、魔法を示す『MAGIC』」

きっといつか、この二枚に関係する何かが起こる可能性もある。
だが、天然関連で放課後ティータイムが空中分解する程の問題とは、どんなものなのだろうか?

「現時点でこの世界に、魔法使いが侵入したという記録もないし」

念のために先ほど調べた結果、まだ魔法使いがこの世界に来たという記録はない。
普通の天然ではないことは明らかだ。
もし何らかの力の持ったが天然が原因だとすると、それは魔法以外にはありえなかった。
正直に言って、自分で何を言っているのかが分からなくなることがある。
だが、その魔法使いも僕以外にはまだこの世界にいない。

(この間の時間ループの一件は、本当に異常事態だったんだよな)

あれはそもそも、我々に認知されないように魔界を出て、この世界に降り立ったために起こってしまった犯罪だ。
ちなみに、出入国管理センターとは、早い話が外国で行う入国審査のようなものだ。
そこにある転送用のゲートを使って、他世界へと向かう。
そして、それを利用する際には、必ず管理センターの方で記録が残るのだ。
ここまでは、普通の入国審査のような感じだが、管理センターでは転移魔法の反応も検知することができるのだ。
それによって、違法出国者や入国者を把握することができるのだ。
ただしそれにも穴があり、外部エリア(管理センターよりも南側の何もない草原のような場所)ではそれを探知することができない。
とはいえ、転移先の世界で何らかの監視がされている場合は、そこで情報がキャッチされるが。
キャッチされた情報は、出入国管理センターを通じて、魔法連盟へと連絡がいく仕組みになっている。
報告を受けたのが、犯人が不法出国した日の担当責任者であり、その日は責任者は居眠りを数時間程度して監視を怠っていたらしいのだ。
それだけならば、さほど問題にはならない。
せいぜい訓告程度だろう。
だが、一番の問題はそれの発覚を恐れて、転移先であるここから送られた情報を無視したことだ。
ちなみに当然のことだが、この職員は懲戒免職という重い罰を科されることとなった。
閑話休題。

「本当にどういう意味なんだ?」

これで何度目になるかわからない疑問に頭を抱えていると、携帯電話への着信を告げる音が鳴り響いた。

「あれ? 憂だ」

なぜか唯が憂に連絡先を教えていたらしく、憂からも連絡が来ることがある。
尤も、話の内容は唯がどうしているかといった感じだが。
その憂からの連絡に、僕は嫌な予感を感じてならなかった。

「はい、高月です」
『浩介さん! 大変です!!』

出ないわけにもいかず、電話に出ると悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた。
その声の大きさに、僕は思わず携帯電話を耳から話した。

「分かったから、落ち着いて。はい! 深呼吸」
『は、はい!』

僕はとりあえず憂を落ち着かせることにした。

「それで、何が大変なんだ?」
『お姉ちゃんが、風邪を引いたんです!』
「…………………」

憂の口から出た言葉に、僕は一瞬頭の中が真っ白になった。

「何ぃっ!!?」

今度は僕が叫ぶ番だった。

「それで、唯の容体は?」
『えっと、38度9分で今寝ています』

(かなり高いな)

唯の容態に、僕は心の中でつぶやく。

「他の皆には?」
『連絡しました』

とりあえず、事態は把握できた。
唯は風邪をひいてしまったようだ。

「とりあえず、容体が悪化するようなら僕に連絡をしてもらえる? 知り合いに医者がいるからそいつのところに連れて行くから」
『分かりました』

とりあえず、憂に指示を出しておくことにした。
そして”失礼します”との憂の言葉で電話は切られた。

(残りも一週間をきっている状態で風邪か……少々まずいな)

数日もすれば風邪は治るだろうが、練習の件を考えるのであればかなりまずい状況だ。

「風邪………?」

ふと、僕の頭の中に何かが浮かび上がった。

(ま、まさか……)

それは、あまりにも馬鹿馬鹿しい結論だった。

「『NATURAL』が示していたのは、唯のこと!?」

ありえなくはない。
確かに、唯は天然だ。
真鍋さんが去年の勉強会で話していたストーリーからも、十分にそれは言えるだろう。
それが良い所でもあり、悪い所でもある。
まあ、憎めないタイプの人というのは、僕にとってはある意味うらやましいのだが。
このタロットカード占いは、実に意地が悪く意味を把握しずらいカードが出てくることがあるのだが、今回がその例だ。
「全くもって、最悪だ」

(問題は楽器を持って演奏ができる体力を回復することができるか……か)

時間は限られているが、今は唯の回復力を信じることしか僕にはできなかった。










それからさらに数日が経った。

「はぁ……」
「おいおい、ため息をつくと幸せが逃げていくぜ」

本日何度目かわからないため息をついていると、慶介がお気楽な感じで声をかけてきた。

「お前はいいよな。能天気で」
「何だか言葉の端々から嫌味を感じたぞ」

慶介にしては鋭かった。

「まだ平沢さんの風邪治らないのか?」

慶介の問いかけに、僕は頷くことで答えた。
ちなみに、慶介には僕が唯が風邪を引いたことを知った次の日には話していた。
理由は分からないが、もしかしたら今後何かをする際に戦力になる可能性が高いと思ったからだ。
友人だからではないと思う……たぶん。

「昨日の時点では治っていないって言ってたから、今日はどうなのかはわからない」
「だったら、今聞きに行こうぜ」

僕の言葉に、慶介が突然そんなことを言い出した。

「はい?」
「だから、平沢さんの様子を聞くために妹さんの教室に行こうと言ってるんだ」

慶介の突然の提案に、首をかしげる僕に慶介はため息交じりに告げた。

「さあ、行くぞー」
「わかったから、引っ張るなっ!」

僕は慶介に引きずられるようにして、憂達のクラスへと向かうのであった。
しかし、慶介のこの行動力には、さすがの僕も舌を巻いていた。





「あれ、浩介に佐久間じゃん」
「律に澪。二人も唯の様子を聞きに?」
「ああ。まだ教室には来ていないらしいけど、もしかしたらと思って」

憂達のクラスの前に向かうと、先に来ていた律が声を掛けてきたので、僕が疑問を投げかけると澪が頷きながら答えた。

「それじゃ、一緒に入ろ――「いや、待つんだ!」――……何?」

前の方のドアから中に入ろうとする僕を、律が引き留めた。

「こういうのは何事もインパクトが大事なんだ!」
「はい?」

様子を聞くだけなのに、どうしてインパクトの話になるのか、その話のつながりがよくわからなかった。

「ということで、浩介達は後ろのドアから、私たちは前から突入する」
「よし! 先頭はこの俺が勤めよう!」
「任せるたぞ、佐久間隊員!」

なぜか意気投合している慶介と律の二人。

「「……」」

そんな二人に、僕と澪は肩をすくませ合った。
そんなこんなで、無理やり配置に付けさせられた僕たちに、慶介が

「行くぞ」

と言ってきたので、僕は『はいはい』と適当に返事を返した。
そんな僕の返事など気にもしていないのか、僕から顔を背けると、ドアに手をかけた。

「「頼も~~~~う!!!」」

そして大きな声で叫びながら律と慶介は同時にドアを開けると叫び声をあげた。
その瞬間、憂達のクラスが固まった。

「下級生をビビらせるなっ!!」
「うっさいっ!!!」

そして馬鹿げたことをした二人に鉄槌が下ったのもまた同時だった。

「フ、吹き飛ぶほどの友情を感じた……ぜ」

意味不明なことを口にしながら教室の端の方で気を失う慶介を無視して、僕は教室に足を踏み入れた。

「あ、あの浩介先輩?」
「気にするな。あれはただの幻覚と幻聴だ」

顔をひきつらせながら聞いてくる梓に、僕はそう告げるのであった。





「それにしても、こんな時期に風邪をひくなんて、弛んでる証拠だ!」
「お前が言うな」

少し前まで、部を巻き込んだ大げんかの後に風邪を引いた律に、僕は鋭いツッコミを入れた。

「そうですよ! 時期的に考えても律先輩の風邪が移ったんですよ!」
「へ? 私?」

そんな僕に援護射撃をするかの如く梓が告げた言葉に、律は目を丸くしながら自分を指差した。

「あ、でもこの間浴衣が気に入ったみたいで一日中来ていたから、それで体が冷えちゃったのかも」
「……子供か」

(い、家に持ち帰って着たんだ)

憂の言葉に、僕は唯の行動にため息が漏れそうになった。

「それにしても、あの服はいいとは思ったけどよくよく考えてみると、恥ずかしいよな」
「そうですよね」

律のつぶやきに、梓も頷く。
あの時は精神状態が正常ではなかっただけなのかもしれない。
でも、ある意味でまともなのは浴衣だけだったのもまた事実なのだ。

「だよな、澪?」
「………」

問いかけられた澪は手を組んだまま、目を閉じて何かを考えている様子だった。

「梓、今日からリードの練習も始めてもらえないか?」
「それって、唯がライブまでに間に合わないということか?」

澪の指示に、律が疑問を投げかける。

「……でも」

梓が何かを言いかけたところで、予鈴が鳴った。

「あくまでも万が一を考えてだから」
「……教室に戻ろう。授業も始まるし」

梓が納得してはいないのは、浮かない表情をしているのを見て明らかだ。
なので、僕は強引ではあるが話を切り上げさせた。
短い時間で梓を説得するのは無理だし、梓自身にも少しだけ自分で考える時間は必要だと思ったからだ。

「そうだな。それじゃ、放課後」
「またな」

澪たちも、僕の提案に頷くと梓に声を掛けて教室を去っていく。
僕はその二人を見送りながらも、二人の前を後にした。

「あの、高月先輩」
「何だ?」

そんな中、僕を呼び止める女子生徒がいたので、僕は振り返りながら用件を尋ねる。

「あ、あの。あそこにいる人も……一緒に連れて行ってください」

女子生徒に言われて、僕はようやく教室の端の方で伸びている慶介の存在に気が付いた。

「あ……すまない、忘れてた。ちゃんと連れて行く。ありがとう」
「い、いえっ」

とりあえずお礼を言うと、僕は慶介の下に歩み寄る。

「本当にのびてるなこりゃ」

いつもなら瞬時に回復する慶介が回復しないところを見ると、おそらく回復力を上回るダメージだったのだろう。

(まあ、そのうち復活するだろう)

軽く考えた僕は腕をつかむと、そのままずるずると引きずりながら慶介を連れて行くのであった。
ちなみに、これは余談だが、毎朝行われるSHRでの出席確認の時も、気を失っていた慶介は見事に欠席扱いになった。

「のぉぉぉ!! 俺の皆勤賞がぁっ!!!」

それを知った慶介はそのことを嘆くのであった。

(自業自得だけど、なんだかかわいそうだな)

後で小松に慶介を出席扱いにするように、指示を出しておこうと決める僕なのであった。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載&処分者告知

こんにちは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
今回で、ついにバンド名が決定しました。
最後のほうで、雲行きが怪しくなりましたが(汗)
あと少しで1期分の話は完結になります。
とはいえ、まだ番外編の話が残っているわけですが。


そして、またまた悲しいお知らせです。
先日、注意事項に反する行為を行った者がいたため処罰を行いました。
詳細は以下の通りです。


■処分者名

cheap_cialis
cialis_online
cialis
order_cialis

*すべて同一人物です。

■処分理由

当サイトに不適切なサイトのURLを4回にわたり、明記したため。

■処分内容

該当コメントの削除、および当サイトへのアクセス禁止

上記の処分者のホスト名やIPアドレスはすべて控えられています。
現在は、限られた範囲で規制していますが、今後似たようなIPアドレスなどでの違反行為を確認した場合は、この範囲をさらに広げます。

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第71話 ライブに向けて

「あ、ムギ」
「何? 浩介君」

田井中家を後にしたところで、僕はムギに声を掛けた。

「唯は僕が背負うよ。男で力もあるから」
「それは嬉しいんだけど、ギターはどうするの?」

僕の提案に、ムギが困ったような表情を浮かべながら尋ねてきた。

「それじゃ、本末転倒になるかもしれないけれど、僕のギターを代わりに持ってもらっていい?」
「もちろん」

まるで交換するかのように僕は唯を背負い、ムギはギターケースを手にした。
ちなみに唯のギターケースは梓が持っている。

「それじゃ、行こうか」

そして僕たちは再び足を進めるのであった。

「すぅ……すぅ……」

背中から聞こえるのは規則正しい唯の寝息と時より行き交う車の音。

「なあ、浩介」

そんな中で、澪の声が聞こえてきた。

「何?」

僕は、澪に用件を尋ねる。

「ありがとう」
「何のお礼? それは」

突然お礼を言ってくる澪に、僕はそう言い返した。

「律のこと。ちゃんと話をするように言ってくれて。後、迷惑をかけてごめん」
「ちょっと待ってくれる?」

お礼と謝罪を口にする澪に、僕はそう返した。

「まず第一に、謝るのなら、僕ではなく皆に謝るべき。皆も差はあれど迷惑を被ってるんだから」
「……分かってる。ちゃんと謝るよ」

僕の言葉に、澪は頷くとしっかりとそう答えた。

「それと、部室の言葉は僕の戯言だ。だから、お礼を言われる筋合いはないし、言われても困る」
「全く、素直じゃないんだから浩介は」

僕の言葉に返ってきたのは澪の呆れたような声だった。

「でも、そういうところが浩介君らしいよね」
「はい!」

後輩にまで僕はそう思われていたようだ。
僕はある意味、知りたくなかった事実を知る羽目になってしまった。

「そう言えば、浩介といつの間にあんな風に親しくなったんだ?」
「わりとすぐだったけど。一喝したら後はずるずると」
「浩介の才能かもしれないな、そういうところ」

何だか勝手に才能認定されてしまった。

「聡って、微妙に恥ずかしがり屋なところがあるから、初対面の人とあそこまで親しげに話をしていたのは浩介が初めてだと思う」
「人は、移ろいゆくものだ。それは澪にだって言える。君の知る聡という人物像と今の彼ははたして”イコール”で結べるのだろうかね?」
「わざと分かりにくくなるように、言ってないか?」

さすがに僕がわざと分かりにくい言い回しをしていることに気付いたのか、澪がジト目で僕のことを見ながら聞いてきた。

「正解」

そんな澪に、僕はそう答えるのであった。










「本当に大丈夫ですか?」
「もちろんだ。そっちも気を付けて帰りなよ」

梓の自宅に向かう道と、僕たちの帰宅路が分かれている分岐点で、不安そうに聞いてくる梓に頷いて答えると、注意するように告げた。

「はい。それじゃ、また明日」
「ああ。また明日」

唯を背負いながら、手を振ってくる梓に手を振りかえすと、僕は未だに眠っている唯を背負ったまま唯の家へと向かう。
ちなみにギターは仕方がないので僕のだけを、格納庫に入れておくことにした。

『はーい!』

唯の家に到着した僕は、インターホンを鳴らすと中から憂の声が返ってきた。
そして誰かが近づいてくる気配がした。

「どちら様ですか……ってお姉ちゃん?! どうしたの!? 足を怪我したの!?」

(今日も飛ばすなぁ)

憂のマシンガントークに、僕は苦笑しながら事情を説明しようとした時だった。

「えへへ~、実はね寝ちゃってたから浩君におんぶされてきたんだ~」

後ろの方から唯の無邪気な声が聞こえてきた。

「………」

僕は思わず言葉を失った。
ただ、言えるのは。

「唯、いつから起きてた?」
「えっとね『何のお礼? それは』のあたりから」

記憶をたどってみた。

「それって、かなり前のことだよな?」
「うん♪」

しかも歩き出してすぐだし。

「だったら、すぐに言いなよ」
「だって、浩君の背中気持ちよかったんだもん~」

唯の反論に、僕は意味が分からなかった。

「というより、降りて」
「もう浩君は素直じゃないんだから☆」
「……………」

なぜか、僕はとてつもない敗北感に襲われていた。

「お姉ちゃんがお世話になりました」
「いえいえ」

憂のお礼の言葉が、何となく止めの一言に聞こえたような気がする僕だった。










『浩介、そっちはどうだ?』
「一悶着ありましたけど、何とかいい方向に転がったようです」

自宅に戻った僕は、自室で田中さんと電話をしていた。

『何だまた一悶着か』
「ええ」

また何か嫌味でも言われるのかと僕は心の中で思っていると、

『青春してるじゃないか』
「………まあ」

以外にも、そう言った言葉はかけられなかった。

「しかし、意外です」
『何がだ?』
「田中さんだったらまた嫌味を言ってくると思ったのっで」

何を言いたいのかがわからない様子の田中さんに、僕はそう答えた。

『お前は、俺をなんだと思ってる?』
「あはは……」

声のトーンを落とした田中さんの問いかけに、僕は苦笑するしかなかった。

『まあいいが、今年のライブも楽しみにしてるぞ』
「はい。必ずいいライブにしますよ」

僕は田中さんにそう宣言するのであった。

(後の問題は……)

簡単にそれは思い浮かんだ。
未だに決まっていない軽音部のバンド名のことだ。
決めない限り、提出することはできない。
一応期限は明日までになっているが、時間はあまり残っていない。
バンド名を早く決めないといけないのだが……

「うーん、まったく思いつかない」

なかなかいいバンド名が思いつかなかった。
H&Pはいつまでも燃えていき、決してその炎は消えないという意味で着けたバンド名だ。
では、軽音部はどうだろうか?
どのような名前がぴったりだろうか?

「………寝るか」

僕が出した結論は、考えることの放棄だった。
そして僕は眠りにつくのであった。










「さて、行くか」
「お、今日は部室に行くんだな」

放課後を迎え、席を立つ僕に慶介が声を掛けてきた。

「昨日は、活動を自粛していただけだ。今日からは通常通りに活動する。別にサボってるわけじゃないんだから」
「それは分かってるけどさ」
「まあ、行くのは生徒会室だけど」

何せ、これからちょっとした野暮用があるのだ。

「は? 生徒会室って……お前まさか何かよからぬことを―――ジャカルタ!?」
「貴様は僕をなんだと思ってるんだ。ちょっとした野暮用だ」

ものすごく失礼なことを口にした慶介に、僕は鉄槌を浴びせた。

「ど、どうもずびばぜん」
「ったく。それじゃ、行くからな」

頭を抑える慶介に、ため息を漏らしながら、僕は教室を後にした。

「あ、英和辞典を返し忘れた」

教室を出て少し歩いたところで、先日英和辞典を慶介から借りたまま返していなかったことを思い出した僕は、慶介に返すために教室へと引き返す。

「今日は返さないぜ、マイスイートハニー」
「えっと……」

教室に戻ると、慶介が佐伯さんをナンパしていた。

「…………」

僕は無言で英和辞典を取り出すと、教室内を確認する。

(教室内で巻き添えを喰らいそうな人の姿は無し)

車線上には、その危険性のある人の姿は見かけなかった。

(それじゃ)

僕は英和辞典を手に、慶介の方に向けて全力で投げた。

「ガンマっ!!!?」

そして辞典は見事に慶介の頭に直撃した。

「よし」

それを確認した僕は、再びその場を後にするのであった。









「失礼します」
「ちゃんと約束通りに来たのね」

生徒会室を訪れると、生徒会長の姿があった。

「約束は約束ですから」
「クス。それじゃ、お願いね」

僕が会長から出された条件は実に単純だった。
”生徒会室の資料整理の片づけを手伝うこと”
なんでも、生徒会室では資料整理をこの時期にしているらしい。
理由は知らないが、この時期に行っているのが通例なのだとか。
そして、資料整理は終了したものの、それの片づけの作業が問題となった。
会長曰く、生徒会役員は学園祭の開催に向けて手助けなどをしているため、どうしても人員が不足するらしい。
ちなみに、慶介は学園祭で必要な道具を運ぶこき使われ役だったらしい。
確かに、最初に生徒会室を訪れた際に、いくつかの段ボール箱が置かれていたのは覚えている。

『それなら、学園祭が終了した後にすればいいのでは?』

そんな僕の疑問に、会長の出した返事が

『それでもいいのだけれど、学園祭での作業で疲れた役員たちに重労働をさせるのもね』

という会長の心遣いなのかどうかは知らない理由で却下された。
そこで、僕の登場ということだ。

「とりあえず、その段ボール箱を番号順に上の棚に置いて行ってもらえるかしら。番号は右下の方に書いてあるから」
「分かりました」

会長の指示のもと、僕は右下に書かれている番号を確認して、一番若い数字の段ボール箱を持ち上げる。
そして棚の前に置かれた脚立に上って、箱を棚の一番上の方に置いた。

「はぁ……浩介様と仕事ができるなんて。幸せ」
「………」

今何か後ろの方から雑念のようなものが聞こえたような気がしたが、気のせいということにしよう。
そうして、僕は黙々と資料の入った段ボール箱を棚に片づけていく。
そんな中、血相をかいて生徒会室のドアをけ破る人物がいた。

「すみません!!」
「……いきなりどうしたのかしら?」

ドアをけ破る勢いで開けた人物……律に、会長は物静かな様子で応対する。

「あ、あの。講堂使用届なんですけど」
「あー。あれね」

律の言葉に、会長は思い出したように相槌を打った。

「確か、あなたたちの部は未提出だったようだけど?」
「すみません! どうか一日待ってくれないでしょうか!!」

公では未提出扱いだが、まだ僕たちだけは提出期限が過ぎていない。
だから、律の懇願はある意味無意味だったりもする。

(今日になって、使用届が出されていないことを知らされたわけか)

誰が知らせたのかは、一緒に入ってきた真鍋さんを見れば一目瞭然だろう。

「でも、締め切りはとっくに過ぎてるし、規則は規則だから」
「そこをなんとか!」
「私からもお願いします!」

必死に懇願する律に、驚くことに真鍋さんも加わった。

「提出が遅れたのは、部長の田井中さんが風邪で欠席したためですし、もう一日だけ待っていただけないでしょうか?」
「…………………クスクス」

そんな真鍋さんの懇願に、会長はおかしそうに笑い声をあげた。

「あ、あの」
「ごめんなさいね、真鍋さん。その件は大丈夫よ。すでに使用届は提出されてるから」

そんな会長の様子に怪訝そうに声を掛ける真鍋さんに、笑うのをやめた会長は律たちに向き直った。

「え? でも、私は提出なんか……あれ? そう言えば使用届は?」
「それだったら浩介に」

いきなり僕の名前が出てきた。

「ですけど、未提出になってましたけど」
「ええ。副部長さんに返したの。彼ね、”名称”を記入せずに提出していたから。だからその修正が必要ということで今日までに必要事項を埋めて再提出するように指示を出したのよ」

真鍋さんの疑問に、会長が答えた。

「そうよね、高月君」
「…………あなた、人が悪すぎです」
「褒め言葉として受け取っておくわ」

僕の苦言に、会長はさらりとかわしてしまった。

「浩君!?」
「こ、浩介!?」
「な、何をしてるんですか?」

僕の存在にようやく気付いたのか、驚きの声を上げる唯たちに、僕は最後の段ボール箱を棚に置いて脚立を降りてから、みんなの方に向き直る。

「ちょっとした雑務をね」

そう言いながら僕は律たちの方に歩く。

「これで、取引は成立。ということでいいですか?」
「ええ。とても満足したわ。ありがとうね、高月君」

僕の言葉に、会長は満足した様子で頷くと、お礼を言ってきた。

「浩介、一体どういうことなのかを説明――「はいはい。歩きながらするから部室に行こうな」――って、ちょっと待てよ!」
「あ、待ってください。浩介先輩」
「浩君が、策士にっ!?」

生徒会室を後にする僕を追いかけるように、みんなもぞろぞろと出てきた。
こうして、僕たちはもう一度バンド名を考えることになった。

「それにしても、それならそうと言ってくれても」
「澪の言葉を使うのであれば、迷惑を掛けられた仕返し」

僕は律の抗議に対して、そう反論したのは、余談だ。










バンド名を再び考えることとなった僕たちは、それぞれ席に着くとそれぞれの案を口にしていく。

「ねえ、やっぱり”ぴゅあぴゅあ”がいいんじゃない?」
「却下」

再び却下された案を口にする澪に、律は容赦なく却下にした。

「”にぎり拳!”はどうかな?」
「僕たちは演歌集団か?」

演歌みたいなニュアンスのバンド名を、僕はツッコみつつ却下する。

「だったら、靴の裏のガム!」
「今日、踏んだんだな」
「すごい! 何でわかるの?!」

ものすごい時事性の高いバンド名を口にする唯に、律はどこか呆れた様子でツッコむ。
そんな中、気になるのが僕の隣に座る山中先生だ。
笑顔だが、その笑顔がそこはかとなく怖い。

「だったら、”ポップコ-ンハネムーン”とかは?」
「だからどうしてそんな甘々なのばっかなんだよ!」

もはやそれは澪の才能なのかもしれない。

「あ、だったら。ロケット鉛筆はどうかな?」
「唯、少し黙って――――」

僕が唯に”黙ってて”と言おうとした瞬間だった。

「まどろっこしい!!」

とうとう我慢の限界を超えたのか、山中先生が大声を上げながら、使用届をひったくった。

「全くお茶が飲めないじゃないの。こういうのはね、適当でいいの。はいっ!」
『あぁ!? 勝手に決められたぁ!!』

山中先生によって強引にバンド名が決められてしまった。
だが、それは

「まあ、いっか」

とても無難であり、ピッタリなものだった。
律の言葉に、僕たちは頷いて答えていく。

「よしっ! それじゃ、記念撮影だ! 澪、カメラ! 浩介はボードを」
「それじゃ、私は生徒会室に行くね」

律がせわしなく指示を出す中、真鍋さんはそう言って部室を後にした。
ある意味、一番大物なのかもしれない。
そして僕たちは、先ほど決まったバンド名を書いたボードを背景にして、記念撮影をした。

「浩君! こっちこっち」
「はいはい」

唯に誘われるがまま、僕は唯と梓の間に入り肩に腕を回す。
徐々に実りの秋を迎えるこの季節に、軽音部は”放課後ティータイム”別名HTTという名前で新たなスタートを切った。
後は、学園祭に向けて猛練習をするだけ。

「いっくし!」

なのだが、唯のくしゃみになんとなく嫌な予感を感じてしまう僕なのであった。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんにちは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
オリジナルの話と原作の話を織り交ぜた構成となっておりますが、次話にてひと段落となります。
とはいえ、次々話からまた新たな話が始まるわけですが。(苦笑)


それでは、これにて失礼します。

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