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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
今回はタイトル通りの内容となります。
そしてある人物の欠点が明らかになったりもしますが、この話はすでにクライマックスを迎えていたりします。

さて、拍手コメントの返信を行いたいと思います。

『留学生は軽音部にはいるんですか?』

コスモさん、拍手コメントありがとうございます。
留学生であるジョンが軽音部に入部するかどうかは次話で明らかになります。
ヒントは”交換留学生”になります。


それでは、これにて失礼します。

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第91話 友のため

近場にあった喫茶店に招待された僕は、女性に紅茶をごちそうになっていた。
適当な席に腰掛けた僕は、女性に聞かれるがまま事情を話していた。

「そう。貴方は日本からの留学希望生なのね」
「ええ、まあ」

話しても何の意味もないと思い、僕は紅茶に口をつける。

「もしよければ、留学用の書類を見せてもらえないかしら?」
「ええ。構いませんけど」

女性の申し出に、僕は一瞬考えたが、別に知られてまずいようなことは書かれていないので、承諾すると書類を女性に手渡した。

「留学試験を最優秀な成績でパスしたのはすごいことよ。でも……」

僕が手渡した書類に目を通した女性は、感心した様子で口を開くが、なんといえばいいか迷ったような表情を浮かべた。

「でも、ガーディアンがいないようだといくら試験をパスしても留学は無理よね」
「ええ。今日中に決まらなければ辞退するつもりです」
「諦めるの?」

紅茶に口をつけが鳴ら応える僕に、女性が疑問を投げかけた。

「諦めてはいませんよ。最後の最後まで、希望を持っていくつもりですから」
「そう。変なことを聞いてしまってごめんなさいね」
「いえ、気にしてないので」

女性の問いかけに答える僕に、その女性は申し訳なさそうに謝ってきたので、僕は首を横に振りながら答えた。
それから数分して、僕たちは別れた。










「へぇ、そんなことがあったんだ」
「さすが浩君だね♪」

感心したようにつぶやく律とは対照的に、笑顔で腕に抱きつく唯の頭をなでることで対応した。

「その女性とはそれっきりで、二度と会うことはないだろうと思っていたんだけどね」
「また会うことになったんですか?」
「しかも、すごい形で」

僕はその時のことを思い返してみた。
いきなりガーディアンが見つかったという連絡で向かったガーディアンの自宅は、まるで某国の大統領が暮らしている場所を彷彿とさせるほどの広さと大きさを誇る建物だった。
そして、そこの住人こそが、あの時の女性だったのだ。

「偶然って、あるもんなんだな」
「そんなに起こることはないと思うけどね」

澪の漏らした言葉に相槌を打つムギの言うとおり、そんなに起きるようなことではなかったのだ。
僕のはただ運が良かっただけだ。

「コウスケって、相手から行動を起こさないと何もしない癖があるからね。留学先の学校でも、僕が話しかけてようやく会話を始めたくらいだし」
「なるほど、それで佐久間と知り合ったわけか」

なんだか自分のことが分析されるのは、すごく居心地が悪く感じた。
きっと相手も同じ心境なのかもしれない。
………ジョンの言うとおりだけど。

「自分から話しかけるって、何を話せっていうんだ? 天気のことでも話せと? 知っていることをなぜ話さなければならない」
「そして、理屈派ですね」

皆が僕を見て一斉にため息をついた。

「ここに入部するのは勧誘して?」
「いえ、自分から言い出しましたよ」
「へぇ、あのコウスケが自分から入部を決めるなんて。驚きだ」

ムギの説明に、感心したようにジョンがつぶやく。
僕はただただ居心地が悪く感じながら、紅茶に口をつけるのであった。










「それにしても、まさかジョンが、日本に来ているなんて」

自宅に戻った僕は、自室のベッドの上で静かに呟いた。
ジョンは、イギリスで初めてできた僕の友人。
その出会いは、今でも鮮明に覚えている。

『君が、タカツキコウスケだね。僕は、ジョン・オルコット。ジョンって呼んでね』
『た、高月浩介。僕のことも、浩介と呼んで』

家のリビングで、自己紹介をしあい、手を握る。
それが、全ての始まりだった。

『貴方は、今日から私の家族よ。私のことを母親のように接してくれるかしら』
『……はい』

女性のその言葉があったからこそ、僕は今があるのかもしれない。
僕は、とてもうれしかった。

『コウスケって、どことなく親しみを感じるんだよ。だから、僕が兄貴分だね』
『おいおい、それは勘弁してよ』

時には、兄弟談議に花を咲かせたこともあった。
結局、誰が兄かという結論は出なかったけれど。

「………気が付けば、僕って」

ふとあることに僕は気付いた。

「僕は何もお返しができていない」

オルコット家に対して、僕は恩返しをしていなかったことを思い出したのだ。
これまでは色々と与えてもらうだけだった。
でも、それではだめなのだ。
ちゃんと自分で何かを返していかなければ。

「しかし、一体何をお返しすれば………」

浮かび上がった問題はそれだった。
僕には、どうすればいいかが全く分からなかったのだ。

「はぁ……ギターの練習でもするか」

考えていても何も始まらないと考えた僕は、ギターの練習をすることにした。
相棒でもあるGibsonのギターを構えて、次に演奏する曲のギターパートを軽く弾いていく。
弾くとは言え、アンプにはつないでいない。
なので音の迫力は皆無だが、基礎練習にはもってこいだった。

「………………そうだっ!」

そんな時、僕はある方法を導き出した。

(でも、これは………)

しかし、その明暗にはある障害があった。
それは、唯たちだ。
彼女たちの協力がなければ、僕はそれを行うことができないのだ。

「とにかく、明日の部活の時に、頼んでみよう」

僕はその方法を実現するべく、気合を入れるのであった。










「オルコット君の為に、演奏をしたい!?」
「ああ」

翌日の放課後、僕は部室で律たちに思いついた方法を告げていた。
僕が思いついたのは、演奏を聴かせることだった。
歌というのは不思議な力を持っている。
歌に乗せて、僕の感謝の気持ちを相手に伝えることができるのではないかと考えたのだ。
本人に言うのは少しばかり恥ずかしかったので、この方法が何かお返しができる気がしたのだ。
ただ、問題なのは一人ではだめなこと。
ちゃんとした曲にするには、放課後ティータイムの演奏が必要になる。

「もちろん、無理にとは言わない。これは僕の勝手な思いつきだから、みんなが嫌なら――「ちょっと待った」――律?」

僕の言葉を遮るように口を開いた律に、僕は首をかしげた。

「何でもかんでも決めつけるのが浩介の悪いところだよ」
「そうですよ。私も、先輩たちのバンドの仲間じゃないですか。その仲間が駒ていることがあって、綿地たちにそれができるのなら、私は協力しますよ」
「私も。なんだかんだで、浩介君の昔のことを教えてもらったから。何かお礼をしたいなって思ってたのよ」

澪や梓、ムギが続いて僕にとがめるように声を掛けてきた。

「……ありがとう、みんな」
「よっしゃ、それじゃどの曲にするか決めようぜ!」

律の呼びかけで、僕たちはジョンへの感謝の気持ちを込めた演奏の曲名を考えることになった。
だが、これが一番難航した。

「演奏するんなら、やっぱり誰もが知っている曲の方がいいよな」
「それじゃ、『ふわふわ|時間《タイム》』とかは除外ですよね」

澪の言うとおり、せっかく演奏するのならオリジナルではなくカバーの方がいいだろう。

「でも、あれ以外で演奏できる曲なんてあったか?」
『…………』

律のその言葉に、全員が考え込み始めた。
律の言うとおり、そのような曲は全く………

「あっ!?」
「うおっ?! びっくりした……一体どうしたんだよ、大声なんか出して」

なかったと思われたが、実はそれに該当する曲が存在したのだ。

「いや、あったんだよ。おそらくは誰でも知っていそうな曲が」
「それって、一体何? 浩君」

興味深げに聞いてくる唯に、僕アその曲名を告げた。

「『翼をください』だ」
「「「「あー」」」」

その曲名を知って唯たちはなるほどと言わんばかりに、声を上げた。

「あの曲は、軽音部の始動のきっかけになった曲だし、いいじゃんか」
「そうだったんですか!」

腕を組みながら感傷に浸る律に、梓は目を輝かせながら相槌を打った。

(まあ、アドリブでやった曲だけど)

あの時のことを思い出すと、笑い出しそうになった。
よくもまあ、無茶ぶりに応じたものだと自分でも思うほどだ。

「実は、あの時の曲にアレンジを加えてみたんだ」
「そうなんだ、でも音源は?」
「それならムギに返した音楽プレーヤーに入れてあるはずだけど」

澪の問いかけに答えると、ムギは若干慌てた様子で鞄から音楽プレーヤーを取り出すと操作していた。

「あ、本当だわ」

データを見つけたのか、驚いた表情を浮かべたムギはイヤホンの片方を自分の耳に、もう片方を梓に渡して再生を始めた。
曲の演奏を聴いていた梓は頷くとイヤホンを唯に渡し、ムギも澪に渡す。
渡された唯と澪はそれぞれ頷くと律の方に手渡した。

「おー、本当に『翼をください』なのかが不思議に思える感じだ」
「曲調をアップテンポに、メリハリのある感じにしてみただけだから」

元の曲の静かな曲調もいいが、アップテンポな曲調もとても似合っている曲に仕上がったという自信があった。

「もうすでに譜面は作ってある。今からでも練習をしよう」
「え? どうしてだ?」

僕の有無も言わせぬ口調に、首をかしげながら律が訊いてきた。

「ジョンが来るのは明日で最後。明後日にはイギリスに帰るんだ。だから練習は今日しかできない」
『あ……』

僕の返答に、ようやく気付いたのか全員が声を上げた。
交換留学は明日で最終日を迎える。
明後日にはもうイギリスでいつもの生活を送っているだろう。
だからこそ、少し焦っていたのだ。

「それじゃ、コウスケの友達の為に、頑張るぞー!」
『オー!』

こうして、僕たちはアレンジした『翼をください』の演奏を成功させるべく練習を始める………のだが、とんでもない問題が浮上した。

「浩介は本当に、バッキングパートでいいのか?」
「ああ。これが放課後ティータイムでの僕の立ち位置だよ」

最初はパートの分類。
当初は僕をメインにしようという意見が上がっていたが、僕は丁重に断ってバッキングギターになった。
それが、僕の立ち位置であり、いつもの姿なのだ。
そう言う面では、僕がバッキングパートを担当するのが通りだった。
そして、一番の問題は、演奏中だった。

(よし、ここまでは大丈夫)

順調に曲を演奏していた時にそれは起こった。

(ん?)

サビの箇所で全員で声を合わせたところで、何か違和感を感じた。
その違和感の正体に気付くことがなかった。
だが、正体はすぐに気付くことになった。
それは間奏を終え、2番の歌詞をある人物が歌い始めた瞬間だった。

(…………………)

違和感は確信へと変わった。
その歌声が程よくバランスの取れている音の調和を大きく狂わしたのだ。

「ストップ、ストップ!」
「ど、どうしたんですか?」

突然演奏を中断させたことに、驚きをあらわにする梓。

「梓、さっきの箇所、もう一回歌ってもらっていい?」
「は、はい」

僕の言葉に、快く頷いた梓は2番の歌詞を歌い始めた。

(さっきほど下手じゃない)

うまいともいえないが、それほど下手というわけではない歌声だった。
やはり、さっきの変な歌声は気のせいなのだろうか?

「それじゃ、今度はギターを弾きながら」
「は、はい!」

念のために、僕は梓にギターを弾きながら歌ってもらうことにした。

『…………』

その瞬間、部室中が痛い沈黙に包まれた。
梓が奏でた歌声は、一言でいうと”下手”だった。
音痴というわけではないが、ただただ下手なのだ。
音程は外れているし、ビブラートを効かせすぎたり、他には歌いだしのタイミングがずれていたり等々凄まじい歌声だった。
一番すごいのは、そのことに当の本人が気づいていないことくらいだが。

(これは絶対にダメだ)

改善する時間がない僕が応急処置として取ったのは、

「あ、梓のボーカルは僕がやるよ」

ボーカルの変更だった。

「え? どうしてですか?」

僕の提案に、梓が首をかしげながら聞いてくるが、本当ことを言って傷つけるのも気が引ける。

「そうだな、それがいいな。浩介にも見せ場を作らないと」
「そ、そうなんですか?」
「そうなんだよ、あずにゃん」

未だに納得していない様子の梓だったが、僕たちは強引に納得させることにした。
結局、梓は渋々ではあるがボーカルの変更を受け入れてくれた。

(今度梓にはボーカルトレーニングをすることにしよう)

このままだと遅かれ早かれすごい地獄を見ること人あるのは確実だったため、僕は心の中でそう決意するのであった。
そんなハプニングがあったものの、何とか人に聞かせられる演奏のレベルにまで僕たちはたどり着くことができた。

(あとは、演奏を成功させることだけを考えればいい)

僕は心の中でそうつぶやき、明日の本番に思いを馳せるのであった。
この後、ある問題に僕たちは直面することになるとも知らずに。
そして、僕たちは運命の日を迎えるのであった。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんにちは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
いよいよ訪問者の正体が明らかになりました。
ちなみに、作者の英語力のなさにより、英語を日本語表記にしております。
留学生のセリフはすべて実際には英語で話しています。
ちなみに、日本語で話している場合はカタカナ表記になります。
そして、ムギの一部のセリフも日本語で表記しておりますが、実際は英語です。

さて、拍手コメントの返信を行いたいと思います。

『留学生がなんなのかきになりました』

コスモさん、拍手コメントありがとうございます。
留学生の正体を含め、今回の話で明らかになりますので、楽しんでいただければ幸いです。


それでは、これにて失礼します。

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第90話 旧友

「はぁ、やっと終わった」

運悪く掃除当番だった僕は、掃除を終えて部室へと向かっていた。

(全く、慶介のやつ)

僕は心の中で、慶介に毒づく。
というのも、終わるのが遅くなったのは、慶介が原因なのだ。

「皆聞いてくれ! この状況はおかしいと思う!」

掃除の最中に、突然そんなことを喚きだした慶介に、掃除をしていた僕たちはその手を止めた。

「何がおかしいんだ?」
「今、俺たちは掃除とはなんたるか……その心を忘れているような気がするんだっ!」

強い口調で持論を述べる慶介の言葉は、とても立派なものだった。

「私もそう思う! やっぱり掃除はちゃんとしないとねっ!」

慶介の言葉に、珍しく女子が同調した。
僕も慶介の意見には同意する。

「そこで今日。俺は掃除としての心を取り戻す大変すばらしい案を提案する!」
「それはどんな?」

掃除当番の女子が、慶介にその案を尋ねる。

「掃除中、女子はメイド服を着るという、大変すばらしい者だっ!!」

その言葉に、教室の音頭が一気に下がった。

「高月君、私も手伝うよ」
「私も」
「あたしもよ」

手に持っている箒を持ち直そうとしていると、女子たちが名乗り出た。
どうやら、相当慶介の馬鹿げた案が許せなかったらしい。

「あ、あれ? 皆さん目が怖いですよ?」
「タイミングを合わせて行こう」
『はいっ!』

慶介という名の敵に、僕たちは臨時のチームが出来上がっていた。
慶介の逃げ道をシャットアウトするべく、窓際に追い込んだ。

『咎人に罰を!!』
「げぼぁ、ぐぼぉ、ごほぁ!?」

女子と僕の一斉攻撃に、慶介は沈んだ。
こうして、女子の敵は退治されるのであった。

「く、ククク。男、佐久間 慶介。男の夢の前で、無残に散る………ガク」

そんな意味の分からない言葉を残して。
この騒動によって、掃除の終わる時間が遅れることになったのだ。
ちなみに慶介はそのまま放置しておいた。
どうせ少しすればケロッとして帰っていくのだから。

(ん?)

階段を上ったところで、上の方から騒がしい声が聞こえてきた。

「何を騒いでるんだろう?」

声からして律の物だというのは分かるが、詳細の方までは把握できなかったため、僕は首をかしげる。
そして階段を上りきった僕は、部室のドアを開ける。

「何だなんだ? ものすごく騒々し―――」

そう言いながら部室に入った僕を、沈黙が襲った。
それはまた僕も同じだった。
部室には慌てふためく律に唯、そしてなぜか項垂れている梓の姿があった。
そこまでは別に普通の軽音部の光景だろう。
だが、僕の前に立っている人物はそれだけではなかった。
金色の短めの髪をしたこの学校の制服を身に纏っている人物がいたからだ。

(嘘だろ?)

その人物の後姿には見覚えがあった。

「ま、まさか……お前」

それは、僕にとっては忘れられない存在。

「ジョン!?」

最初にできた友達なのだから。
ジョンと思われる男子生徒は、僕の言葉に反応しゆっくりとこっちに振り向く。
美形男子を思わせる整った顔つきは、まぎれもなくイギリスの学校に一緒に通っていたジョンだった。

「ジョン!」
「コウスケ!」

久しぶりに再会できた旧友に、僕たちは手を取り合った。

「どうして、お前がここに……まさか、交換留学生って!」
「そうだよ! 僕のことだよ!」

嬉しさのあまりに、僕たちは会話を始めるがついていけてない人物がその場にいた。

「ちょっと、マシンガントークをしてないで、説明してくれよ!」
「この人は一体誰なの?」
「あ………」

すっかり紹介する過程をすっ飛ばしていたことに気付いた僕は、何とも言えない表情を浮かべながらジョンと顔を見合わせるのであった。










「それじゃ、紹介するよ」

気を取り直した僕たちは対峙する形で立っていた。
唯たち軽音部のメンバーは横一列に並び、その前に僕とジョンが立っている。

「彼はジョン・オルコット。イギリス留学でのガーディアンでお世話になった、オルコット家の長男」
「ガーディアン?」

僕の紹介に、聞きなれない単語だったのか、唯が首をかしげた。

「ガーディアンっていうのは簡単に言えばホームステイ先のような感じで、他人を受け入れてくれる家のこと」
「確か、イギリスの留学はガーディアンが必要だったんだよね?」

さすがはお嬢様でもあるムギだ。
留学に必要な条件もしっかりと把握していた。
僕はムギの言葉に頷いて答えた。

「ちょっと、いいかな?」
「何?」

そんな中、澪が手を上げて声を上げる。
それにジョンが反応する。
ちなみに、今僕は通訳をしている状態で、ジョンの言葉を唯たちに言っている状態だ。
面倒くさいが、それをしないと伝わらないため、通訳をしている。
ちなみに、翻訳魔法というのがあり、自国言語で会話ができるようにすることができる。
だが、それでは意味がないので、全く使用していない。
とはいえ、英語以外は別だが。
閑話休題。

「オルコット家って、もしかしてオルコット楽器の……」
「ああ、御曹司だよ」
「ッ!!?」

ジョンが答えるまでもないので、僕が頷くことで答えると、澪が燃え尽きたようによろめいた。

「澪ちゃん!?」
「澪!?」

そんな澪に駆け寄る唯や律たち。

「だ、大丈夫なのかい?」
「ああ。いつものことだから。そっとしておいてあげて」

心配そうに聞いてくるジョンに、僕はそう相槌を打った。

「オルコット楽器って、音楽界では知らない人がいないとされている家ですよね?!」
「そうだね」

おそらくは梓や澪の反応が正しいのだ。
オルコット楽器グループ
それは、音楽界に置いてある種の革命をもたらせたとされている。
どのような革命なのかは、はっきりしていないが音楽評論家だったことが関係しているのではないかと言われている。
噂では、ガールズバンドの追い風となったと言われている。
バンドの中に女性が混じりことはあれど、ほとんどが女子で構成されたガールズバンドは全く存在すらしなかった。
音楽界では男女差別がないと言えばそれは嘘になる。
酷い話ではガールズバンドという理由だけで、演奏をさせずに不合格にするコンテストもあったほどなのだから。
だが、現在はガールズバンドというのもまた一つの立派なバンドという認識がされるようになり、女性の活躍の場が広がりつつある。
それはともかくとして。
またこの楽器グループの作る楽器はすべて逸品とされており、高値で売買されていたりする。

「それで、こっちの方から。キーボードの琴吹紬」
「琴吹紬です。よろしくお願いいたします」

僕の紹介に、ムギは流暢な英語で自己紹介をした。

「ん? 琴吹って……あの琴吹グループかい?」
「そうなるね」

さすがは楽器店の御曹司だ。
すぐに琴吹グループの関係者であることがわかったらしい。

「いやぁ、このようなところであなたにお会いできるとは光栄ですよ」
「ありがとうございます」

笑顔でジョンの握手に応じるムギはある意味すごかった。

「それで、横にいるのがリードギターの平沢唯。僕の恋人だ」
「なんと!? コウスケに彼女ができたのか! いやいや、とてもかわいらしいお方だ……コウスケがうらやましい」

恋人という言葉に、驚きをあらわにするジョンだが、微妙に失礼なような気がした。

「な、なんて言ってるの?」
「とってもかわいい恋人さんだねって」

唯の疑問に、誤魔化しながら通訳をしようとするが、ムギによってさえぎられてしまった。

「ッ!?」
「……その横が、リズムギターの中野 梓」
「よ、よろしくお願いします」

緊張した様子でおじぎをする梓に、ジョンが一言

「とてもかわいい子じゃないか。幼さがあって」
「……」

また通訳に困るようなコメントをするジョンに、僕はどういえばいいのかに悩んだが、最後の方をぼかして翻訳することにした。

「それで、その横がここの部長でドラムの田井中律」
「あぁー、男勝りのこだね」
「た、田井中律です。よろしくお願いします」

声を上ずらせながら、自己紹介をした。
”男勝り”と言われてもなんとも思っていない様子がある意味すごかった。

「それで、最後が………あっちの方で隠れてるのが秋山澪。かなり恥ずかしがり屋で、いつもあんな感じなんだ」
「そう言うことだったのか。嫌われているのではないかと、思って心配してしまったよ」

まあ、事情を知らない人からすればそうだろうな。

「あ、秋山澪でしゅ! よろしくお願いしましゅ!」

完全にテンパっているのか律よりも声を上ずらせて、髪ながら自己紹介をした。
ちなみに澪にはこの学校で語られている伝説、通称”秋山伝説”なる物が存在するが、それはまた別の機会に説明することにしよう。

「彼女たちが、今僕が所属している第2バンド、放課後ティータイムのメンバー」
「なるほど、なかなか個性的だね」

どうやら、彼女たちの強すぎる個性はジョンのお気に召したようだ。

「あ、一緒にお茶でもしませんか?」
「いいのかい? 僕は完全に部外者だけど」

ムギの提案に、ジョンは戸惑ったような表情で躊躇するが、

「ええ、もちろんですよ」
「それに、イギリスでの浩介先輩の事も知りたいですし」

という、皆の反応に圧されるようにして、僕たちはいつものメンバーにジョンを加えてティータイムをすることとなった。

「おいしい。イギリスで飲んだ紅茶と変わらない味だ」
「ありがとうございます」

ムギが淹れた紅茶に口をつけたジョンの間奏に、ムギは嬉しそうな表情でお礼を言った。

「あの」

そんな時、口を開いたのは律だった。

「浩介とはいったいどうやって知り合ったんですか?」
「うーん。それは、僕よりコウスケの方が詳しいと思うけど?」

そう言って僕の方に視線を向けるジョン。

「何だか恩着せがましくなるから言いたくないんだけど」

そんなジョンの視線につられるようにこちらを見る皆に、ティーカップを置きながら僕はつぶやいた。

「お願いします、浩介先輩。聞かせてください」
「私も、知り合うきっかけが気になるし」

どうやら、さらに興味をひかせてしまったようで、話すようにお願いをする皆の目は、絶対に離させるという熱意に満ちていた。

「浩君、私も聞きたいな」
「…………分かった、わかった。話しますよ」

唯の上目遣いによる懇願で、とうとう根負けした僕は、両手を上げながら降参の意を示して返事を返した。

「あれは、僕がイギリスに留学をするために向かった時のことだった」

そして、僕は当時のことをみんなに話し始めるのであった。










時間は大幅に遡り、約5年ほど前。

「ここが、イギリス」

ヒースロー空港を出た僕は、イギリスの風景に魅入られていた。
小学校を卒業したのを節目に、世界の教育というものを知っておきたいと思い、僕はイギリス留学の道を選んだ。
同級生の中には、僕の頭がいいから留学をすると言っている者もいた。
それを否定はしない。
自分でもわからないが、どこかしらかにそういう一面があるのかもしれなかったからだ。
世界の教育を知るというのも本当の理由であった。

「さて、まずはガーディアンを探さないと」

イギリス留学をするにはガーディアンという身元引受人のような人物が必要になる。
試験は問題はないにしろ、このガーディアンが問題となった。
学校側で探してもらったのだが、すべての候補先でお断りという結果になったのだ。
なんでも、小学生ぐらいの子供の面倒を見れる保証がないとのことだった。
しかも、僕には両親がいない。
この世界には親がいないために、僕の身分は完全に怪しい物となっているのだ。
それが、さらにガーディアン候補に警戒をさせてしまう要素と化していた。
そう、何もかもが早すぎたのだ。

(うーん、今日見つからなければ諦めるか)

子供の僕がホテルなどをとれるわけもなく、野宿になるのはゴメンだったため、ぎりぎりまで粘ってみるつもりだった。










「昼食はとれたけど、これからどうしよう」

近くの喫茶店で軽く昼食をとった僕だったが、この後どうするか首をかしげていた。
そんな時だった、ある悲鳴が聞こえてきたのは。

「きゃああああああ!! ひったくりよ!」

女性のかなぎり声に、僕は慌てて立ち上がると周囲を見渡す。
すると、少し先の方で走り去っていく男の姿があった。
手には女性物のバッグが見えた。

(あいつだっ!)

僕はすぐさま犯人を特定し、男の後を追う。

「待てっ! そこのひったくり野郎!」
「なっ!? ガキかよ!」

軽く走りながら、男との距離を詰めていく。

「くそッ! ガキに捕まってたまるか!」

僕の姿に男はそう吐き捨てながら走る速度を速めるが、その努力もむなしくさらに距離は詰まっていく。

「この糞ガキがっ!」

それに気づいた男は懐から銃を取り出すとそれを僕に構えた。

「ぶっ殺してやるッ!!」
「ッ!?」

銃声が鳴り響くが、僕はサイドステップでその場を離れることで銃弾を躱した。

「なっ!?」
「この私に銃を向け、発砲した度胸は認めよう。だが―――」

一瞬で僕は男の懐に潜り込む。

「それはただの無謀だっ!」
「うおおおお!!? グガっ!?」

背負い投げの要領で僕は男を投げ飛ばした。
投げ飛ばされた男はその場で昏倒した。

「ひったくったこのバックは返させてもらうよ」

男を適当な電柱に縛り付けて、手にしていたバックを奪い取った僕は、男にそう告げるとその場を後にした。
背後から歓声のようなものが聞こえたような気がしたが、それを気にせず、僕は先ほど女性がいたであろう場所にかけていった。

「失礼。貴女の取られたバックはこちらですか?」
「は、はい! これです! ありがとう、坊や」

僕の差し出したバックを大事そうに抱えた腰まで伸びた金色の髪の女性は、優しい笑みを浮かべてお礼を口にした。

「それじゃ、僕はこれで」
「待って!」

立ち去ろうとする僕を、女性が引き留めた。

「助けてくれたお礼がしたいわ。欲しいものがあったら何でも言ってちょうだい」
「………いえ」

女性からの申し出に、僕は静かに声を漏らす。

「私はべつにお礼がほしくてやったわけではありません。ですので、お礼は不要です」
「………でしたら、お茶を一杯ごちそうすると言うのはどうかしら?」

なおも食い下がる女性に、僕は根負けしてそれでいいと告げた。

「だったら、この近くにいい喫茶店を知っているの。行きましょう」

頷くや否や女性は半ば強引に僕の手を引いて行くのであった。
この時、僕は知らなかった。
この出会いが今後の運命をすべて変えることになるであろうことを。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRcrantです。

本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
これより、新たなる話が始まります。
この話が終わり次第、原作のほうに戻る予定です。

さて、拍手コメントの返信を行いたいと思います。

『コスモです一回拍手したんですが コメントかいていたらアクシデントがおきてしまいコメントを書けなかったので書きます。 唯と浩介ほんとラブラブですね。 部活中にあ~んをするなんて』

コスモさん、拍手コメントありがとうございます。
アクシデントは予想もしないところで起こることがあるらしいと誰かに言われたことがあります。

部活中に食べさせあいっこをするというのは、かなり度胸のいる行為ではないかと思っていたりします。
まあ、鈍感な人でもできなくはないわけですが(汗)


それでは、これにて失礼します。

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