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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第34話 魔将

倉松さんから課せられた特別任務を無事遂行した僕は、九条家へと足を向けていた。
リアさんはテスト終了のお祝いをかねて、生徒会メンバーと共に豪遊しているらしい。

「それにしても、忘れたのが万年筆だなんて……」
「何とも独特な忘れ物をする奴だな」

ため息をつく僕の肩にひょっこりと腰かけているぬいぐるみの形をしたザルヴィスの相槌に、僕は何とも言えない気持ちになってしまった。

「そういえば、どうして、ザルヴィスがここに? 確か天界にいたはずだったと思うんだけど」

僕は肩に乗っかっているザルヴィスに問い掛けた。
ザルヴィスについて、軽く紹介しよう。
彼は、何を隠そう僕の使い魔のような存在なのだ。
最高神となった時から、僕に協力をしてくれている頼もしい存在だ。
むろん、戦闘でも心強い味方となってくれる。

「そうなんだけどな、俺の巨乳センサーが、主のいる場所から感じたから来たのさ。いざ行かん! 巨乳の楽園エデンオブオッパイへ――ヘブンっ」
「何が楽園だ!ただの変態じゃないか!」

ただ一つ困ったことがあるのだとすれば、

「違うっ! 俺は変体ではない! ただ、巨乳への探求心が強いだけだ」

無類の巨乳好き(という名の変体だが)であることぐらいだろう。

「それを人は変体というんだけど……で、それで、どうしてここに来たんだ?」
「神楽のやろうが、わが主の助けをしてやってくれっていうのでな」
「なるほど、あいつか」

僕の問いかけに神妙な声色に戻ったザルヴィスの返答に、僕はなるほどと頷いた。
最近神楽はウエイトレスやらメイドの仕事で忙しく、僕のフォローを満足にできるような状況ではない。
それもひとえに信頼されているということではあるが、神楽にとっては迷惑この上ないことには変わりないだろう。
恐らく今回の件も、そんな事態に対する策なのかもしれない。

(神楽にはお礼を言わないとな)

ザルヴィスの存在は僕にとっては非常に心強いことこの上ないのだから。

「むっ。あっちから巨乳の気配がするぞっ」
「……」

色々と苦労しそうだけど。

「見つけたぞ!!」
「ん?」

そんな時にかけられた男の声に、僕は足を止めた。

「どちら様ですか?」

赤い髪に胴体部分をはだけさせている見るからに怪しげな服装の男の姿に、僕は顔をしかめながら問いかけた。

「俺様は七大魔将が一人。人呼んで憤怒のアーディンだっ!」
「七大魔将……僕に何の用です?」

七大魔将という単語に、僕は反応しそうになるのをごまかしながら問いかけた。
この人物が僕の前に現れた目的を知るのが先決だ。
もし、魔法陣作成にかかわっている敵の一味であるのだとすれば、かなりとんでもなく面倒なことになるのだから。
逆にそうでなければこの場を適当にやり過ごすことができる。

「用というのはほかでもない。俺様の妻になる予定のパスタちゃんをいじめたお前をぎったんぎったんにやっつけてやるのさ!」
「……パスタ?」

なんだか一部小声で何かを言っていたようだが、最も気になったのはアーディンと名乗った男の口にした名前だろう。
料理の名前でなければ、思いつくのは一人しかいない。

「一応言っておくが、あれは”いじめ”ではなく”愛の鞭”だ。そもそも、彼女には口の利き方に大きな問題がある。このままではねこ鍋にされて販売されるようになるぞ」

さすがにここにはそのような野蛮なことをする人はいないが、どれほどひどいのかを伝えるには十分な言い方のはずだ。

「なんだと……この俺様の前でそのようなことを言うとはいい度胸だ。ならば、そうできないようにぎったんぎったんにやっつけてやるっ!!」
「……もしかして、逆効果?」
「みたいだな」

アーディンの反応に、僕は自分の発言が間違いであることを知らされた。
どうやら、戦わなければいけないようだ。

(隔離結界を構築……完了)

僕は敵(魔方陣を生成しているやつ)に僕の正体が知られないように、この場一帯を隔離した。
これで僕は思い通りに闘うことができる。

「……この人にはこの程度で十分か」

解放するは魔族の力。
媒体はないが、目の前の相手には十分だろう。

「何ごちゃごちゃ言ってんだよ!」
「っと!」

先手はアーディンだった。
アーディンからは放たれた火炎弾は僕が先ほどまでたっていた地面を焦がした。

(すさまじい熱量だな。あれは喰らいでもすれば無傷では済まないな)

僕は、改めて相手のレベルを上方修正しておくことにした。

「ハイドロスウィル」
「効かねえぜ!」

火には水ということで、圧縮した水流をアーディンに放つが、浩かはいまいちだった。

「ならば……エターナルディザスター」
「ぐあっ」

一番得意な属性でもある闇属性の攻撃を放つと、かなり効いたのか後方へと吹き飛ばされるが、思ったよりもふきとばなかった。

「やりやがったな……遊びは終わりだ。次からは本気で行くぜ!」
「……」

先ほどまでのが遊びなのかどうか、それを結論付けることはできない。
ただのはったりか、それとも本当なのか。
答えはすぐに分かった。

「獄炎拳」
「むっ!?」

これまでとは違う拳に炎をまとわせた一撃が僕に向けて放たれた。
直撃は避けたが炎の熱が僕に牙をむく。

「我を癒せ。アクアサルベーション」

すぐさま自分に回復をかけることで対処した。
だが、それが命とりだった。

「決めてやるぜ! カオティックハウラー !」
「うぐっ!?」

回復をかけている隙を狙ったアーディンの一撃に僕だけではなく地面までもを震わせた。

「俺様かっこよすぎだぜ」

アーディンの一撃を喰らった僕に、追い打ちをかけるようにアーディンは力を収束させていく。
その手にあるのは炎をまとった一本の剣だった。

「燃焼厄物滅」

直撃すると思わ得たその一撃に、僕は耐えようと思い体をこわばらせる。

「ぬるいわ!」
「お、俺様の攻撃が!っ」

回避できないと思っていた攻撃は、間に割り込んだザルヴィスの放った一撃によって相殺された。

「大丈夫か? 我が主」
「……ああ。ありがとう。助かった」

何とか動けるようになった足を軽く動かしながらお礼を言った。

「一気に畳みかけるぞ」
「おう!」

もはやアーディンに勝利の文字はない。
確かに彼は強い。
パワーに関しては凄まじいの一言に尽きる。
だが、

「行くぞ。アビスブレイカー!」
「当たるか―――ぐはっ」

彼の致命的な弱点は、頭脳だろう。
僕の放った急に進路を変える魔法弾に反応できていないのだから。
さらに思い当るところがあった。
先ほどの一撃だ。
あれは僕の足を止めるものだと思っていたが、効果範囲が広すぎるのだ。
理由は分からないが、僕のそばにいたザルヴィスが足止め出来ていなかったことがその証拠だろう。

「これが僕の渾身の一撃。高野月武術、圧」
「き、効かないぜ!」

僕の拳から発せられた見えない空気の塊がアーディンを後方に吹き飛ばす。
彼が体制を整えるころには、僕は次のアクションを起こしていた。

「敵と味方の垣根を超える。反乱の灯!」
「うがっ」

僕の掌から放たれた漆黒の闇は、アーディンを飲み込む。

「う………あ」

彼が纏っていた魔力は一気に霧散した。

「あれ、俺様はいったい」
「あなたはパスタに対して極悪非道なことをしている生徒会を倒しにここに来たんでしょ」

呆けた様子で辺りを見回しているアーディンに、僕は静かに囁いた。

「おぉ! そうだったぜ! おのれ生徒会め! 七大魔将筆頭の俺様がけちょんけちょんにしてやるぜ!」

僕の言葉を真に受けたアーディンは、大声で叫ぶとそのままどこかに走り去ってしまった。

「やはり、あの男はバカのようだな」
「まあ、催眠をかけてるしね」

辛辣な言葉を投げかけるザルヴィスに、僕は苦笑しながら相槌を打った。
僕がやったのは、アーディンに対して催眠術をかけることだった。
ある知り合いに教えてもらった物で、それをアレンジしている。
これをすればたとえ無理があるようなことでも簡単に信じ込ませることができるのだ。
まあ、効果は人によってまちまちだが。

「で、どういうつもりだ? 確か生徒会というのはお前の味方なはずだろ?」
「色々あってな。現在の彼らの実力を知りたいのさ」

ザルヴィスの疑問に、僕は肩を傾げながら答えた。
アーディンはバカだが実力としてはそこそこ強い。
そんな彼をクルセイダースにぶつければ、実戦での戦力が把握することができるという寸法だ。

「なるほど。自分の力を隠して実力を測るのには十分というわけか」

そして僕の意図を組んでくれたザルヴィスは、納得したように相づちを打った。

「さあ、早く家に戻って理事長に万年筆を返しに行きますか」
「そうだな」

こうして僕は倉松さんに課せられたミッションを終わらせるべく、九条家で待っているであろうヘレナさんのもとに万年筆を届けに向かうのであった。

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