11月11日
とうとう来てしまった、地獄の日
「はぁ……」
自分に宛がわれた部屋で、僕は深いため息をつく。
生徒会の手助けなら、まだよかった。
だが、僕がやるのは退魔族専門の『流星クルセイダース』という組織のサポートだ。
これでは、相手に僕が何者であるかを知られる危険性が更に高まる。
それは非常によろしくない。
大賢者パッキーもいる。
彼とはかなり昔に会っていたことがある。
今は忘れているようだが、思い出されたら僕の核心部分まで踏み込まれる。
(課題は山積みだな)
町中に張り巡らされた魔法陣の対処、味方仲間に自分の存在が知られないようにする。
もはや溜息しか出ない。
(でも、一つずつ解決していくしかない)
僕は、そう心の中でつぶやくのであった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
放課後、生徒会室にシンたちが集まる。
「それじゃ、今日の作業を始めようか」
「ねえねえ、カイチョー。あれは何?」
「あー……」
銀色の髪に背中には悪魔をも思わせる羽を生やした魔族の少女、『サリーちゃん』の指差す先にあるのはテーブルの上に置かれたテープレコーダーだ。
それが、【さあ、すぐに再生ボタンを押せ】と言わんばかりに置かれていた。
「今まで触れないようにしていたのに」
「ぽちっとな」
あえてスルーしていたシンたちの苦労は、サリーちゃんが再生ボタンを押したことで水の泡となってしまった。
『おはよう! 生徒会の諸君』
レコーダーから流れる理事長であるヘレナの音声に、シンたちは耳を傾ける。
『生徒会活動とクルセイダースとしての活動ご苦労である。諸君らの健闘により、流星学園の平和は守られていると言っても過言ではない』
「えっへんです!」
「いや、あんたが胸を張るなよ」
ヘレナの称賛の言葉に胸を張るロロットにナナカがツッコむ。
『だが、新たなる脅威が現れ、諸君はさらに厳しい局面に立たされるだろう』
「いきなりシリアス!?」
『そこで! 流星クルセイダースと生徒会に最強の助っ人を用意した』
「おぉ!」
ヘレナの言葉に目を輝かせるロロット。
「助っ人?」
「……何だかオチが読めたような」
助っ人という言葉に頭を傾げる聖沙の横で苦笑するリア。
『その助っ人に掛かればどのような事でも余裕で片が付くだろう』
「何、その凄い人?!」
『さあ、シンちゃん。扉を開けてみなさい。そこに最強の助っ人はいる!』
「は、はい」
突然指名されたシンは誰だろうと思いながら扉の前に立つ。
そして扉を開けた
★ ★ ★ ★ ★ ★
『さあ、シンちゃん。扉を開けてみなさい。そこに最強の助っ人はいる!』
「は、はい」
扉の向こう側……生徒会室から聞こえてくる音声に答えるシンの声とともに足音が近づいてくる。。
僕はヘレナさんにここで待つように言われたのでずっと待ち続けていたのだ。
そして、扉が開かれた。
「え?」
「……………」
その瞬間、変な沈黙が走る。
「えっと、とりあえずどうぞ」
「………」
僕は中に入ることにした。
「えっと、お茶どうぞ」
「すみません」
そしてなぜかリアさんに出されたお茶を飲み干す。
「それで……」
『なお、このテープは10秒後に爆発する』
シンの言葉を遮るようにテーブルに置かれたレコーダーからそんな宣言がされた。
「た、大変、みんな逃げて―!」
『10,9,8――――』
「うるさい」
全員が非難する中、僕はレコーダーを止めた。
「こ、浩介君。無表情ですごいことをするよね」
「い、いや、これはこれで正しい対処法なのかも?」
そんな僕に苦笑する生徒会メンバー。
「そうよそうよ。せっかくどっば~んとド派手に登場する予定だったのに」
「きゃあ!?」
突然現れたヘレナさんに、驚くシンたち。
というよりどこから出てきた?
「それはまあいいとして。今日からあなたには生徒会の相談係の臨時補佐と『流星クルセイダース』のサポートを任命するわ」
「……ありがたく拝命します」
ヘレナさんの言葉に頷くことで、僕はこの時から生徒会および『流星クルセイダース』の助っ人となるのであった。
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