健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』主人公設定更新

大変久しぶりです。

本日『ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~』の主人公設定を大幅に更新&変更しました。
少々見にくく感じてもいたので、色々と見て回りこれで見やすくなるだろうという感じに変更しました。
その際に、色々な設定もたしたので、少しは分かりやすくなったのではないかと思います。
問題などがあるようでしたらご連絡をいただければ超特急で修正します。

さて、拍手コメントへの返事へと移りたいと思います。

『読んでてすごく面白いです。
続きが早くみたいというきもちでいっぱいです。
実は私もティンクル☆くるせいだーすGOGO!!の二次創作を執筆しています。
応援してます。頑張ってください!』

Ma-sAさん、拍手コメントありがとうございます。
そうおっしゃっていただけるだけで、作者冥利につきます。
Ma-sAさんの作品もさわり程度ではありますが拝読させていただきました。
中々斬新な感じでした、私の作品とは比べるのもおこがましいほど面白い作品だと思いました。
私も蔭ながら応援致します。
お互い、大変でしょうが頑張りましょう。


それでは、これにて失礼します。

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巡回執筆予定作品

こんにちは、TRです。
今回の巡回執筆予定作品は次の通りになります。


・けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~
・ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~
・DOG DAYS~誤召喚されし者~

執筆開始まで、今しばらくお待ちください。


それでは、これにて失礼します。

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『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話を掲載

こんばんは、TRです。

お待たせしました。
本日、『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』の最新話を掲載しました。
三話同時掲載です。
気分的にハイになってしまいこうなりました。
さて、最初のヒロインはどうしましょう?
とりあえずは唯か梓の二人のうちどちらかを考えているのですが。
……難しいです。


それでは、これにて失礼します。

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第4話 入部!

翌日、僕はファンレターに対する返事の手紙を射れた茶封筒を郵便ポストに投函してから、高校に向かった。

「おっす、浩介!」
「おはよう。朝からテンション高いな」

いつもの事だが、ハイテンションの佐久間に僕は呆れながらあいさつを返す。

「部活は決めたのか?」
「ああ。一応ね」

僕はそう告げて佐久間に入部届を渡す。

「へ~、軽音部か」
「まあ、考えた結果だけど」

感心したようにつぶやくと、佐久間は入部届を僕に渡す。

「いいな~、これでまたモテるんだろうな~」
「そんな不純な思いでやらないから」

こいつの頭の中にはモテることだけしかないのかと頭を抱えたくなる。

「これからは浩介の事を師匠、もしくは兄貴と―――ぐばはぁ!?」
「お断りだ」

いつものように黙らせた僕は、封筒に入部届を入れると机の中にしまう。
僕は、放課後に思いを馳せる。
何だか楽しみになってきた。

「だったら、親父と――」
「佐久間慶介。黙れ」
「………ハイ」

前言撤回、今日は色々と波乱の一日になりそうだ。
そんなこんなで、担任の先生が教室に入ってくることでHRが始まるのであった。









授業も終わり、放課後を迎えた。
そんな中、僕は今非常に困っている。

(入部届は、誰に出した方がいいのだろうか?)

これまで部活などをやっていなかったので、入部届を誰に出せばいいのかが分からなかった。
情けないなと我ながら思う。

(誰かに聞くか……とは言っても、それが出来るほど親しい奴は佐久間位しかいないんだよな)

何だかさらに情けなく思えてきた。
僕は佐久間の方を見てみた。

「グガー、グガー」

いびきを掻いて寝ていた。
まったくあてにならない人物であることだけは理解できた。

(とりあえず、軽音部の部長に提出しておくか)

先生には部長じゃない時に出せばいいだろうと思い、僕は教室を後にする。

(さて、軽音部はどこだろう)

教室を出てから数秒で、僕は大きな壁にぶち当たった。
壁にぶち当たった僕が向かった先は、『職員室』だった。

「失礼します」

職員室に入った僕は、担任の教師を探したが見当たらなかった。
おそらく多忙なのだろう。

「あなた、誰先生に用事かしら?」

どうしたものかと考えたところに、声をかけてくる人がいた。
見れば人当たりのいい笑みを浮かべているメガネをかけた女性教師が立っていた。
普通の人が見れば、彼女はお淑やかそうに見えるだろう。
そう普通(・・)の人には。

「えっと、軽音部の部室がどこにあるのかを聞きたいんですけど」
「ああ、軽音部ね」

僕の問いかけに、目の前の女性教師はなるほどねと言わんばかりの表情で頷くと職員室の出入り口のドアまで歩み寄る。

「あそこの階段を上った先……校舎の最上階にある音楽室よ。頑張ってね」
「ありがとうございます」

教師からエールをもらい、僕は一礼すると職員室を後にした。










「どうして手すりにこんなものを」

階段の手すりにあるウサギや亀のレリーフに、首を傾げながら一段一段上って行く。
上るたびに樹がきしむ音がするのは、風流と見るべきなのか、うるさいと取るべきなのか。
それはともかくとして。

「ようやく最上階だ」

なんとかたどり着いた最上階で、僕は額の汗をぬぐう仕草をしながら一息つく。

「確か軽音部は音楽室で活動していると言ってたな」

僕は、念のためにと右手を音楽室のドアに触れて目を閉じる。

(いない。ということは……)

人の気配がないのを確認した僕は、左隣の『音楽準備室』のドアに同じように手を触れる。

(いた。人数は……3人か。しかも全員女子だし)

早速懸念していたことが怒った。
女子だけの部活に男が一人というのは、非常に心苦しい。
いや、居心地が悪いということではなく。
接し方が分からないだけだ。

(とりあえずは、話してみないと)

僕は一度頷いて深呼吸をすると、ドアノブをひねった。

「あの、すみません」
「はい、何か用?」

ドアを開け、恐る恐る中に入ると、栗色の髪をカチューシャのようなもので留める女子高生が、そっけない様子で近寄りながら声をかけてきた。

「軽音部はここで―――」
「もしかして、入部希望!?」

最後まで言い切る前に、栗色の髪の女子高生によって遮られた。
先ほどのそっけない態度は何だったのだろう?
今は目を輝かせている。
というより、すごい変わりようだな。

「え、ええ」
「~~~っ! おーい、皆! 入部希望者が来たぞ!」

僕の返事に栗色の髪の女子高生は嬉しそうな声で悶えると、後ろの方にいる女子高生二人に声をかける。

「ようこそ、軽音部へ!」
「歓迎いたします!」

そして立ち上がると、嬉しそうな表情で黒色の髪を後ろに結んでいる女子高生と、薄い金髪の髪をストレートに伸ばす人当たりのいい雰囲気を醸し出す女子高生の二人が歓迎の言葉を掛けてくれた。

「よぉしムギ、お茶の準備だ!」
「はい!」

そして栗色の女子高生の指示に、薄い金髪の髪の女子高生は笑顔で返事をすると素早く支度をした。

(な、何? この熱烈な歓迎)

あまりの熱烈な歓迎に、僕は少しばかり引いていた。

「さあさあ、座って座って」
「は、はい」

栗色の髪の女子高生に言われるがまま、僕は奥にあった椅子に腰かける。

(ま、まさか僕の正体を知っているのか!?)

色々な可能性が頭の中をよぎる。

(もしくは、試験でもするのか? 入部するための面接試験とか)

ありえないとは思いつつも、部活動を生れてはじめてする僕には、想像がつかなかった。

「はい、どうぞ」
「あ、すみません」

そして用意されたのは良い香りの紅茶と、僕の大好物のチーズケーキだった。
なぜ、こうも僕の好みにぴったりなチョイスなのだろうか?

(た、食べづらい)

三人に見つめられながらと言うのは、非常に食べづらい。

「どうぞ、召し上がって」
「い、いただきます」

薄い金髪の女子高生に促らされるまま、紅茶の入ったティーカップに手を伸ばす。
そして、一口すすると柔らかい味が口の中を駆け巡る。

「お、おいしい」

思わずそう呟いてしまうほどのおいしさだ。
人に入れて貰ってここまで美味しい紅茶は初めてだ。
僕はチーズケーキにも手を伸ばす。
フォークでチーズケーキの先を切ると、それを口元に運ぶ。

「はぁ~」

思わずとろけそうになる。
やはり、チーズケーキは神の産物だ!

「お好きなんですか? チーズケーキ」
「え、ええ」

(いけないいけない。しっかりしないと)

とろけ切っていた自分に喝を入れつつ、僕は問いかけに答える。

「あなたは、どんなバンドが好き?」
「え?」
「好きなギターリストとかは?」
「え゛!?」

栗色の髪の女子高生の早速の問いかけに、僕は固まってしまった。
まさか、そこから入るとは思ってもいなかった。
そして正直に言おう。
僕はバンドとかギターリストの名前は知らない。
いや、これでは語弊がある。
正しくは、名前は知っているが好きか否かの判別は出来ないのだ。
カバー曲をするために、曲を聴いたりはしているためバンド名は知っているが、それがそのバンドが好きだということに=にはならない。
ギターリストはなおさらだ。

『他は他、ここはここだ。他者を気にする暇があるのなら、まずは己を鍛えよ』

それが、僕が前にバンドメンバーに言っていた言葉だった。
あの時の自分を殴り飛ばしたい。
少しは興味を持てばよかった。

(ここで適当に言っても深く潜られたら絶対についていけない)

そんな時、明暗が思いついた。

(自分の所属するバンドを言えばいいんだ)

そうすればどんなに詳しいことを聞かれても話についていける。
何せ自分が所属するバンドなのだから。
とは言え、DKと言うのは気が引ける。
自分で自分を褒めるほど、僕は変人ではない。
なので、僕は相方の名前を言うことにした。

「えっと、MR」
「MR!?」

黒髪の女子高生が身を乗り出すほどの勢いで食いついてきた。
その勢いに、思わずのけぞりそうになった。

「あー、なるほど」

栗色の髪の女子高生も納得した様子で呟く。

「どなた?」
「八年ほど前に発足したバンドのギタリスト! 重厚で強く響く演奏をするんだ」

MRに聴かせてあげたら、喜ぶだろうなー。

「だったら澪と気が合うんじゃない? 澪もファンだしな~」
「え、澪?」

今、栗色の髪の女子高生の口にした名前らしき単語に、僕は汗がどっと噴き出るような感じがした。

「澪さんって、お名前は?」
「っ!?」

恐る恐る尋ねると、澪と呼ばれた女子高生は顔を赤くして顔をそむけた。

「あ~あ。ごめんね、うちの澪は恥ずかしがり屋だから」

なるほどなと納得。
細かいところには追求しないことにした。

「あなた、名前は?」
「あ、秋山澪」

その瞬間、時間が止まったような錯覚を覚えた。

(ふ、ファンの子だ?!)

何度も何度も本名でファンレターを送っていたのが、目の前の黒髪の女子高生だったのか。

(よ、よかったDKと言わなくて)

言っていたら、DK解説が始まっていたかもしれない。
自分の事を目の前で言われるのは、非常にむずがゆく感じる。

「私は琴吹 紬と申します。ムギと呼んでください」
「あ、私は田井中 律。よろしくね」

薄い金髪の女子高生……ムギさんに続いて栗色の髪の女子高生……田井中さんが自己紹介をする。

「すみません。僕は高月浩介と言います。よろしくお願いします」

僕も彼女たちに倣い、自己紹介をする。

「あ、敬語じゃなくても良いですよ。同じ学年ですし」
「そ、そうですか。では……これからはこんな感じで話さしてもらうよ」

ムギさんの提案に僕は一呼吸おいて話し方を元に戻した。

「秋山さんのファンって、もしかしてMRの事?」
「いや、ちがうよ。澪はねH&Pというバンドとそこに所属するDKのファンなんだよ」

H&Pと言うのはhyper-prominenceの省略した呼び名だ。
世間一般的にはこの愛称で呼ばれている。

「そのDKさんと言うのは、どなた?」
「ギター演奏で右に出る物はいない、どのような難解な速弾きでも巧みに演奏する、音楽界に革命をもたらしたギタリスト!」

結局解説されちゃうのね。

(革命もたらしてないし)

突っ込みたいのを必死に堪える。
でも、今の一通りの流れで、僕の正体に気付いていないということは分かった。
気づいているのであれば、今頃はすごい騒ぎになっているだろう。
とは言え、さらに僕は気を付けなければ行けなくなったことでもある。

「あ、これ入部届です」
「はい、確かに」
「楽器は何を?」

入届を田井中さんに渡しがてら聞かれたので、僕は少しだけ考えたのちに答える。

「えっと、ギターを少々」

一番いいのはギターを弾かないということでもあるのだが、それ以外だと演奏すらできない可能性があるので、ここはギターを取ることにした。

「そっかそっか~、それじゃぜひ明日持ってきて聞かせてよ」
「そうだな。どのくらい弾けるかを把握するのも必要だしな」

どうやら神様は僕にとことん冷たいようだ。
とうとう来てしまった。
最初の試練が。

「分かりました」

こうして僕は、その試練を受けることになるのであった。

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第3話 部活

入学式も終わり、後はHRだけとなった。
そのHRでは自己紹介をすることになった。
自己紹介の内容は名前はもちろん、趣味も言わなければいけないのだ。

「お、俺は佐久間啓介と申しますです! 趣味はスポーツでしゅ!」

佐久間は誰が見ても分かるくらいに緊張していた。
しかも最後の方で噛んでるし。
そんな彼の様子に、微かではあるが笑い声も聞こえる。

「はい。それじゃ次」
「はい」

とうとう僕の番となった。
僕は何を言うかをまだ考えてもいなかったが、席を立つことにした。

「高月浩介です。趣味は読書です。よろしくお願いします」

僕は無難な自己紹介をすることにした。
嘘はついてないが。
こうして、自己紹介は進んでいき全員の自己紹介が終え、僕たちは下校となった。










「浩介! 一緒に帰ろうぜ」
「はいはい」

HRが終わって解散になった瞬間に、僕の席にやってくる佐久間に僕はため息交じりに頷くと荷物をカバンに詰める。

「お待たせ」
「じゃ、出発!」

何故か佐久間に先導される形で、僕は教室を後にする。

「入学おめでとうございます!」
「うお?!」

靴に履き替え、外に出た瞬間先輩と思わしき女子生徒たちに行く手を阻まれたかと思うと、一瞬で囲まれた。
どうやら部活勧誘のようだ。

「あ、あれ? 俺には?」

女子生徒たちの部活勧誘の声と混じって微かに聞こえる男の声。
女子生徒たちはそのまま何事もなかったかのように去って行ったが、僕の手に残されたのは大量の部活勧誘のチラシだった。
そして両手を上げてチラシを受け取る姿勢のまま、呆然と立ち尽くす佐久間の姿だった。










気が付けば早いもので、学校が始まりもう二週間が過ぎようとしていた。

「何見てんだよ?」
「部活を紹介する冊子」

佐久間の問いに僕はそっけなく答える。

「部活って……二週間経つのにまだ決めてなかったのかよ!?」
「悪かったな」

前の席を占領した佐久間は机の上に広げた冊子を覗き込む。

「そう言うお前はどうなんだよ? 仮入部とかをやりまくっていたようだけど」
「断られました」

新入部員が欲しい中でも断るということは、よほどのことをしでかしたのだろう。
もしくは本能的な何かでこいつの危険なところとかが分かったりもしたのか?

(どうでもいいか)

僕はそう割り切り、冊子に目を向ける。

「僕さ、思うんだが」
「何だ?」
「この学校の校長か理事長なのかは知らないが、馬鹿だろ」

僕の辛辣な言葉に、佐久間は口笛を吹く。

「何故廃部予定何て記載をする? そもそも、廃部するんなら載せなければいいのに」

僕が言っているのは『軽音部』の部活動紹介の項目だった。
しっかりと部活動名の隣に(廃部予定)と書かれている。

「まあ、普通の学校なら軽音部は定番だしな」
「そうなのか? 僕にはよく分からないが」

佐久間の説明に僕は首をかしげる。
今までイギリスにいたためそういったこととは縁がなかったのだ。

「は? 浩介、中学の時に部活動とかしてなかったのか?」
「まあ、勉強とかもあったしな。そもそも留学しているんだから知るわけがない」
「留学!?」

僕の言葉を聞いた佐久間は固まり、そしてなぜか周りで話していた女子の数人がこっちに来ていた。

「高月君って、留学してたの?」
「あ、ああ。三年間だけど」
「どこどこ?」

何故かは知らないが、留学の話に女子生徒たちは食いついてきたようだ。

「イギリスの方に」
「イギリスか~、やっぱり料理はおいしかった?」
「まあ、味云々は感じ方は個人差があるし、数日もすればなれるよ」

やはり食いついたのは料理関連の方だった。
矢継ぎ早に投げかけられる疑問に、僕は丁寧に答えて行く。

「浩介!」
「な、何!?」

そんな中、今まで沈黙を守っていた佐久間が声を上げる。
そのただならぬ雰囲気に、思わず畏まってしまった。

「イギリスの女性たちのバストは! 美人さんがいたのか?!」
「………」

あまりにもくだらない問いかけに、僕は固まり女子たちは数歩後ずさった。

「高月君」

沈黙が教室内を覆う中、茶色の髪の女子生徒が僕を呼ぶ。
目をやると、手でジェスチャーを送ってくる。
僕はそれを左手の親指と人差し指を使って丸を作り、相手に”了解”とジェスチャーを返した。

「佐久間」
「おう、教えてく―――」

僕は脳天に一撃を加えることで、佐久間の口を強引に閉じさせた。
その後、佐久間は自分の席に突っ伏すことになるのであった。










「部活かぁ」

夜、自分の家に戻った僕は自室で考えをめぐらしていた。
内容はもちろん部活動の事。

(運動部は………)

想像してみた。
運動部に入った僕⇒県内ベスト記録を塗り替える⇒世界大会に出場し余裕で優勝。

「ズルだろ」

僕の身体能力を考慮すると、絶対に入ってはいけない気がした。

「となると、残るのは文科系か」

僕は、文科系の部活紹介ページを開く。
だが、やはり僕の目に留まる様な部活はなかった。

「…………」

たった一つを除いては。
それは『軽音部』だ。
確かに今の僕ならばこの部の方が向いているかもしれない。
楽器系、特に弦楽器なら。
特に、軽音楽系は僕が所属するバンドとほとんど同じ感じの曲だった気がするし。
問題とすればただ一つ。

「僕がプロの……H&Pのヴォーカルであることは知られてはいけない」

そう、僕がDKという事を隠さなければいけないということだ。
だが、これは一筋縄ではいかない。
何せ演奏してしまえば一目瞭然なのだから。
いくらワザとミスをしようとしたところで、癖までは隠すことはできない。
ギタリストには各々に弾き癖が存在する。
それが極まって行くと”個性”となるのだが、僕の場合はそれが独特だとよく言われる。
要するに、知っている人が見れば、聞けば分かってしまうということだ。
ならば僕のするべきことは一つしかない。

「楽器の方をいじくる……か」

ギターの方に細工をして”音色”その物を変える事だった。
勿論、音色を完全に帰ることなど不可能だ。

「だからこそ、こいつを使うのさ」

僕はクローゼットに封印してあったギターを取り出す。
白色でやや丸型と四角形の中間の形をするボディだ。
名前はない。
というよりは覚えていないと言った方が正確だろう。
このギターには細工が施されている。
それは弦の部分。
弦全ては主流で使っているGibsonの使い古しだ。
ギターの弦は空気に触れるだけで錆びる。
そして人の汗でもっと早く錆びる。
錆びた状態で引き続ければどうなるかは、想像に難くない。
このギターはその弦を利用しているのだ。
これまでの経験による計算上、中級レベルの演奏法(速弾きなど)をすると、弦が切れる段階まで錆びている弦を使っている。
よくDKとしてじゃないときに弾かなければいけない状態になった際に使っている。
このギターが僕の正体を隠してくれる相棒になる。
その理由は――

「ん? 電話だ」

思考の海に潜る僕を引き上げるように鳴り響く電話に、僕は着信音のする方へと足を向ける。

「この電話という事は、バンド関係か。はい、もしもし」
『おー、出た出た。悪いねDK』

電話口から聞こえたのはMR(中山さんだが)の声だった。
この白色の携帯電話は、バンド関係の要件の際に使っている。
原則としてこの電話の際は、お互いに本名を言わないことにしている。
完全に僕のわがままによる措置だったが、バンドメンバーは快く引き受けてくれていた。

「どうしたMR。ライブの件か?」
『いや。DKに”例の”物を届けておいたから、確認しておいてほしいんだ』

DKとしての時は、僕はタメ口とやや威圧感のある口調で接する。
これは他バンドから舐められないようにする自衛の手段だ。
理由としてはバンド発足当時、僕は小学生だったから餓鬼だと言われるのが嫌だったためだ。
その名残で今もこんな感じなのだ。

「ああ、あれか。分かった確認しておこう。返事は例の場所にいつも通りに発送しておく」
『分かった。では』

完結に用件を言ってMRは電話を切った。
”例の”物とは、リビングに置かれていたA4サイズの茶封筒の事だ。
僕は白い携帯電話を机の引き出しにしまうと、勉強机に置いてある茶封筒を手にする。
差出人は『鈴木卓郎』となっているが、この人物はH&Pと関係のない一般人だ。
バンドメンバーの名前はトップシークレット。
限られた者しか知らない事実だ。
そしてそれを第三者にばれないようにするために、隠ぺい工作は徹底した。
こういった手紙の発送元はMR……中山さんの知人が使っていた私書箱を譲り受けて使っている。
快くOKしてくれた鈴木さんには頭が上がらないのだ。
故に、僕がDKであるとは誰も思わない。
協力者がリークでもしない限りは。

「さて、中身は何かな」
僕は茶封筒を開封すると中を漁る。
中身が紙のようなものであることが分かった僕は、躊躇なくひっくり返して中身を机の上に出した。

「ファンレターか」

それはすべて僕に宛てられたファンレターだった。
何十通もあるファンレターに、僕は一通ずつ目を通していく。

「はぁ……」

殆ど読み終えた僕は、ため息を漏らした。
嫌なわけではない。
むしろファンがいるということは嬉しいことだ。
問題は文面だ。

『DKさんの御復帰を心待ちにしておりました。是非、また良い演奏を聞かせてください』

問題はないようにも見えるかもしれないが、”DKさん”という部分が僕には屈辱でもあった。
勿論、ありがたいことでもある。
僕の事を待っていてくれるファンには感謝してもしきれない。
だけど……

(僕一人がH&Pじゃない)

それが本音だった。
昔音楽評論家が言った一言が原因だった。

『H&Pは、DKその物と言っても過言ではない。逆にDKがいないH&Pはここまで行けないだろう』

H&Pが有名になったのは、僕にも一因はあるが、何よりみんなの努力が実ってのこと。
それを僕のおかげで有名になれたと言われるのは、いった本人は最高のほめ言葉だと思うが、僕にとっては最高の侮辱だ。
僕は、バンドのメンバー全員に頭を下げた。
皆は許してくれたが、僕はそれから決めたのだ。
”DKの正体を絶対に明かさない”と。

「あー、気分悪」

嫌な事を思い出した僕は、振り切るように残り少ないファンレターを読むことにした。

「ん? またあの子か」

僕が手にしたファンレターの差出人に、思わずそう呟いてしまった。
差出人は『秋山 澪』
H&Pのファンだとかで、よく手紙を送ってくれる。
この人物は、一通目で僕たちの印象に残ることになる。
その理由は……

(ペンネームでいいのに律儀だよな)

律儀に本名を明記しているからだ。
ファンレターの差出人は9分9厘、ペンネームなのに、彼女は本名で送ってきたのだ。
その事に思わず笑みがこぼれる。
ちなみに、一応その事を書いたのだがその後も本名だ。
理由までは皆目見当がつかないけど。

『DKさん、御復帰おめでとうございます。これからもH&Pの一ファンとして、楽しみにさせていただきます』

それが、手紙に書かれていた内容の要約だ。
”H&P”と書いてくれていることがとてもありがたいことだった。
僕を、DKをH&Pのメンバーとして見てくれることがうれしかった。

「さて、次は………またかい」

次のファンレターを手にして差出人を見た僕は思わず苦笑してしまった。
差出人には『中野梓』と記されていた。
この人物と先ほどの手紙と同様に、本名でいきなり送ってきた人物だ。
内容も先ほどと同じだが、他にもいろいろ書かれていた。
9割方のファンレターの返事はそれほど大差ない内容だが、この二人に関しては大きく返事の内容が異なる。

(嬉しい手紙をもらうと、書く量が変わる癖は直さないとな)

そんな事を思いながら、僕は気付けば便箋がいっぱいになるまで返事を書上げるのであった。
書き終えた返事を新たに用意した茶封筒に入れて、封をすると翌日発送しようと思い、机の上に置いた。
その後は次の日の教科書などの準備をすると、僕はベッドにもぐりこみ眠りにつくのであった。

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