健康の意識 忍者ブログ

黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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第12.5話 「それでも、お前は奇跡を望むのか?」

それは、シャルロッテの魔女が現れる数日前の事

「ここか……」

俺、小野 渉は病院のある一室の前にいた。
そこにいる人物の名前は『上条 恭介』
簡単に言えば見舞いだ。

(どんな奴だろう?)

俺が見舞いに来た理由は、さやかの契約の理由にもなる人物を見るためだ。

コンコン

「はい」

ドアをノックすると、中から返事が聞こえたので、俺はドアを開けた。

「失礼します」
「誰だい?君は」

ベッドで上半身を起こしている青年がこっちを見てそう聞いてくる。

「初めまして、上条 恭介。小野 渉だ」
「君が渉君か。初めまして、君の事はさやかからよく聞かされているよ。それと僕の事は恭介で構わないよ」
「だったら、俺も渉でいい」

まずは互いに自己紹介を済ませた。
俺はパイプいすに腰掛けた。
さやかが何を言っているのかが気になったが、それは置いておくことにして、本題に入ることにした。

「ふ~ん。君が”元”天才バイオリストか」
「………君は僕をいじめるつもりかい?」

恭介が目を細めて睨みつけてきた。

「別に。いじめている気はないさ。ただ事実確認をしたまでだ」
「………」
「なあ、恭介。もし生きている中でたった一つの奇跡が起こせるとしたら、君は何を望む?」
「そうだね……もう一度バイオリンを弾くこと……かな」

俺はその答えを聞いて、彼の人となりが分かった。

「バイオリンが好きなんだな」
「そうだね」
「そう言った面での才能は、とても素晴らしいと思う。でも、その奇跡を起こしたら一生死ぬまで、死と隣り合わせの戦いをしなければいけないとしたら、その奇跡を望めるか?」
「……」

俺の問いかけに、恭介は何も答えない。

「奇跡には、代償もあるという事を覚えておいた方がいいな」
「代償?」
「そう。例えば、恭介が遅刻しそうで走っている時に、路地裏から車が来たとしよう。でも、君は幸運にも車にひかれることはなかった……まさに奇跡だよね、これ」
「そうだね」

俺の例えに恭介がそう相槌を打つ。

「でも、この奇跡は”時間”を代償にしている。だから、君は遅刻してしまった」

それが、俺の答えだった。

「どんな奇跡にも、代償は存在する。それは、一歩間違えれば死へと導くものさ」

奇跡の代償、それはとても重くそして切ないものだ。

「それでも、お前は奇跡を望むのか?」
「………」

俺の問いかけに、恭介は何も答えない。
だが、必死に考えている様子がうかがえた。
そんな彼をしり目に、俺はパイプいすから立ち上がった。

「それじゃ、僕はこれで失礼するよ」
「あ、ごめんね、大したおもてなしが出来なくて」
「いや、こっちも変な話をして悪かった」

恭介が謝ってきたので、俺もそう謝り返すと、そのまま出口の方へ歩いていく。

「あ、そうだ」

俺は、出る寸前に言いたいことを思い出したので、振り返った。

「もし、恭介の指が動かせるようになって、コンクールかなんかに出れたら、見に行ってあげる」
「ありがとう」
「それじゃ」

それが俺と恭介が交わした、”約束”であった。

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DOG DAYS~誤召喚されし者~ 最新話を掲載

こんにちは、TRです。

大変お待たせしました。
本日、『DOG DAYS~誤召喚されし者~』の最新話を掲載しました。
内容的にやや強引だったような気がしてなりませんが、何とか形にはなれたかなと思います。
次回で星詠み篇は終わり、宣戦布告関連の話へと入っていく予定ですので、楽しみにしてくださると幸いです。


それでは、これにて失礼します。

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IF-H 第4話 迷いと決断

あれから、俺はベッドで横になっていることが出来ず、上着を着て部屋を後にしフィリアンノ城を歩いていた。

「はぁ……」

思わずため息をついてしまった。
俺らしくもない。
ユキカゼの告白、そしてブリオッシュのキス……他にも色々と考えなければいけないことがあるはずなのに、さっきからこの二つの事が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
まるで呪いの言葉のように、俺に付きまとう。

(一体全体、俺はどうしてしまったんだ)

「はぁ……」
「何ため息をついてるんだ? 渉」

再度ため息をつくと、聞きなれた女性の声が聞こえてきた。
その声の方を見ると、そこには呆れたような目をして腕を組む親衛隊長のエクレールの姿があった。

「何だ、エクレール――かぁ!?」

俺の言葉を遮るようにして、エクレールに軽く頭を叩かれた。

「何だとは何だッ!」
「すみません」

エクレールの怒りように、俺は素直に謝ることにした。

「怪我の方はいいのか?」
「ああ。おかげさまで何とか」

謝ったことでエクレールはため息をつきながら、心配そうに聞いてきた。

「そうか。ダルキアン卿やユッキーがとても心配しておられた。あまり無茶はするな」
「御忠告どうも」

俺のお礼に、エクレールは「ふんッ!」とそっぽを向いてしまった。

「そう言えば先ほどダルキアン卿が顔を赤くして走って行ったが、何かしたのではあるまいな?」
「ッ!?」

エクレールの問いかけに、俺は息をのんだ。
何かをしたのではなく”された”のだが、俺の反応を見たエクレールの視線が鋭くなった。

「渉、貴様まさか本当にダルキアン卿に―――――」

エクレールの声が、意識が一瞬遠くなった。
まるで双眼鏡で景色を見て外した時のように。

「――――かッ! 渉ッ!」

意識が戻ると、俺は地面にうずくまっており、体を揺すりながら心配そうに声をかけているエクレールの声が聞こえた。

「悪い、ちょっとした立ちくらみだ」
「そ、そうか」

俺はふらつきながらも立ち上がり、大丈夫だと告げる。
エクレールは渋々ではあるが納得してくれたようだ。

「渉、今日は大事を取って大浴場で汗を流し、安静にしていろ」
「そうする」

エクレールの言葉に、俺は素直に頷くことにした。
このまま動き回っていたらまた誰かに迷惑をかけるかもしれない。

「一応言っておくが、今は男の入浴時間だがあまり長湯をしていると女性の入浴時間になる。気を付けるように」
「り、了解」

頭の中に、エクレールに追い掛け回される自分の姿を想像し、頷いた。
取りあえずそれだけは防がなくては。
そして俺は大浴場へと向かった。










「ふぅ……久しぶりにゆっくりできる」

それもどうだとは思うが、俺はのんびりとお湯につかっていた。
念のために言うが、俺は体を一通り洗い終えている。

(やっぱり”世界”からは逃れられないか)

俺は自分の手を見つめながら心の中でそう呟いた。
俺の一連の症状、それは世界と契約をしているがために起こったものだ。
物質化抵抗現象と同じだが、このままでは大変なことになる。

「それだけは防がないと」
「それとは、何でござる?」
「それはだな…………」

俺の呟きに答える少女の声に、普通に答えようとして俺は固まった。
そしてゆっくりと横を見てみた。

「うわぁ!?」
「ひゃっ! い、いきなり大きな声を出してどうしたんでござる?」

俺の横には同じようにしてユキカゼがお湯につかっていたのだ。

「どうしてッ! なんで、ユキカゼがここにいるんだよッ!?」
「先回りしてエクレ達を驚かそうと思ったからでござるよ」

俺の半ば叫びながらの問いかけに、ユキカゼは屈託のない笑顔で答えた。

「にしたって、まだ男の入浴時間中に……」
「大丈夫でござる。この時間帯に入るのは渉殿ぐらいでござるから」

ユキカゼの言葉に、俺はあたりを見回してみた。
確かに、人の姿は見当たらない。

「それで、何を悩んでいるのでござる? 拙者で良ければ話を聞くでござるよ」
「……どうして」

ユキカゼの言葉がきっかけとなったのか、俺は静かに口を開いた。

「どうしてユキカゼ達は、俺なんかにそこまで気を許すんだ? 俺に生きる価値なんてないのに、どうして――――」
「それ以上言ったら、さすがの拙者も怒るでござるよ」

俺の疑問を遮ったのは、怒気を含んだユキカゼの言葉だった。

「渉殿は拙者たちを、二回も身を挺して助けてくれたでござる。拙者やお館さまは渉殿の優しい心に引かれたのでござる。だから拙者は渉殿の事が好きになったのでござる」
「でも――」
「だから、渉殿。自分の事を『生きる価値がない』などと言わないでほしいでござる。もっと自分に自信を持ってほしいでござる」

ユキカゼの答えに、反論をしようとした俺の言葉を遮り、ユキカゼはすがるような声色で言ってきた。

「…………善処する」

それに俺が言えたのは、たったそれだけだった。
本当はお礼を言うべきなのに、俺は出来なかった。
自分の愚かさに、俺は悲しくなってきた。

「そろそろ俺は上がるとする。聞いてくれてありがとう」
「また明日でござるよ。渉殿」

ゆっくりと湯銭から上がり大浴場を後にする俺の背中に、ユキカゼはいつもと変わらない声色で言ってきた。
そんなユキカゼに、俺は片手をあげて答えるのであった。

(俺も、覚悟を決めるか)

まだ、他の問題が解決はしていない。
でも、二人から逃げてはいけない。
そう思ったからこそ、俺はある決心をした。
それは男としてはある意味アレであり、”不潔”がられるような選択をする決心を。
俺は服を着ると、そのまま自室へと足を向けるのであった。

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そろそろ

皆さん、お久しぶりです。

これまで、さまざまな作品の移転作業をしてまいりましたが、いよいよ新話の執筆に取り組もうと思います。
取り組む作品は『DOG DAYS~誤召喚されし者~』です。
ただ、色々とおかしなところがあるカモですが、温かい目で見ていただければ幸いです。

『畜生ハーレムもげろ。 けど主人公は苦労してるしそれぐらいの役得あってもいいんじゃないかなーとか。 ……やっぱりもげてしまえ。』

忍者はHENTAIさん、コメントありがとうございます。
まあ、気持ちは分かります。
今後は渉の優柔不断さに悶々とすることになると思います。
もっとも、私自身が悶々してしまって中途半端に省略する気がしますが(苦笑)

ともあれ、最新話完成まで、今しばらくお待ちください。


それでは、これにて失礼します。

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第12話 悲劇の真実

時間はあの日へと戻る。
巴さんに縛られた俺は、それを解除して魔女のいる場所へと向かった。
そこで俺が見たのは……

「ティロ・フィナーレ!!」

彼女の十八番でもある『ティロ・フィナーレ』を放った巴さんだった。

(よし、戻ったら文句でも言ってやる)

俺はその様子を見てそう考えていた。
だが、巴さんが打ち抜いた魔女から大きな生命体が現れて、それが一気に巴さんの目前に迫った。

「なっ!!?」

そしてその生命体は、口を大きく開いて巴さんを飲み込もうとしていた。
巴さん自身もその事態に対処できていなかった。
俺は慌てて巴さんの方へと掛けて行った。

カキン!!

巴さんの前に移動できた俺は、二本の神剣を交差させながら、簡易式の盾を形成する。

「渉………君」
「すみません。ちょっと下がっててください」

俺は驚いた感じの声を上げる巴さんに、そう告げた。

「おいデカ物。お前の相手は俺だ」

俺は目の前にいる魔女(?)を人差し指を立てて挑発する。
そのおかげかは分からないが、目の前の魔女の攻撃対象はこっちに変わったようだった。

「炎天の輝きよ、かの者を守る盾となれ」

俺は念のために巴さんの周辺に結界を作る。
ついでに結界内の声がこっちに聞こえないようにする。
集中力を削がれたら大変だからだ。
さて、今何とかしなければいけないのは、俺の前にいる魔女だ。
突然俺を食べようとしていた。
だが、俺は素早く移動する。
そのために何もないところにがぶり付き、空振りに終わった。

「遅いぞ、デカ物。そんなんでは俺を食べることなんてできねえぜ!」

俺は再び魔女を挑発する。
魔女はそれにやけになってこちらにがぶり付いてくる。
それを俺は俊足で避ける。
そしてまた魔女ががぶり付こうとする。
その繰り返しをする中、俺はあるものを探していた。

(この魔女は本体じゃない。本体はどこだ)

避けながら『真実照らし出し眼』で周囲を見る。

(あった!!)

俺はやや離れた椅子のような場所にある人形のようなものを見つけた。
それから、最も高い魔力のようなものを感知した。
俺はその人形の元へと、テーブルのようなものを伝って誘導していく。
そして最後に避けた時、俺は飛び上がりながら椅子のような所に置かれていたぬいぐるみを素手でつかんだ。
人形が俺に向けて口を開ける。
どうやらこれが本体のようだ。
おそらくだが、これごと倒さなければきりがない。

「そんなに食べたいなら」

俺は右手に本体のぬいぐるみと正宗を持った。

「これでも食え!!!」

それを口を開けていたデカ物に向けて投げ込んだ。
それを飲み込んで、満足そうな表情をする魔女に俺は若干引いが、俺は止めを刺す。

「爆ぜろ! 爆斬剣!」

俺は一言そう叫んだ。
その瞬間、魔女は爆発して消滅した。
地面に正宗が突き刺さった。

「あっけないものだったな」

俺はその剣を抜きながら呟いた。
それと同時に、巴さんの周囲に張った結界を解除する。

「渉君。あなたは一体―――――」
「ごめんなさい。時間がないので………我、輪廻を断ち切る者なり」

俺は両手に持つ吉宗と正宗を頭上に掲げる。

「輪廻断ち切りし光の輪!」

俺はそれを思いっきり振り下ろした。

「あぐ!」

巴さんはそのまま糸が切れた人形のように、地面に倒れた。
俺にはもう一仕事があった。

「あ、あぁ……」
「渉、あんた………」

まどかを魔法少女にしないでほしいと勝手に解釈した俺が、やるべきことが。
俺は、信じられないものを見ているようなまなざしの二人に向けて片手を掲げた。

「眠りの中で、負の夢を見よ。挫折導き負の誘い」

俺の力で、まどかとさやか、ついでにこの場にはいない暁美さん達の記憶を封じながら夢を見せた。
巴さんがあのまま魔女に食い殺されるという負の夢を。
細かいことは知らないが、これでまどかは魔法少女になることはないだろう。
俺は地面に倒れた巴さんを抱えて、その場を後にした。





「さて、どうしましょうかね? この馬鹿2号」

俺はソファーに横たえた、制服姿の巴さんを見ながらそう呟いた。
利口者に差し出す手はあっても、馬鹿に差し出す手はない。
これは俺の持論だ。

「………ま、彼女には助けてもらった借りがあるし、助けちゃいますか」

俺はそう決心すると、術式の準備をした。
それはものの数分で完了した。

「さて………コンタクト」

俺は巴さんの前に手を掲げると、彼女の因果に接続した。
これで、因果と言うのは彼女の運命のようなものだ。
これをいじくれば彼女の死ぬ時期を伸ばしたり縮めたりすることが出来る。
もちろん、そんなことはよっぽどのことがない限りはしないが。
これが俺の持つ最強の能力だ。

「………接続が悪い」

俺の頭の中に入り込んでくる情報は、なぜかノイズが入り混じっていた。
もちろん普通はこんなことはない。

「……彼女は死んでいないはずだから、魂はあるはずだ。なのになんでこんなにノイズが」

因果は彼女の魂にあるので、魂事態に接続することによって、俺は因果を見ることが出来るのだが、なぜかできないのだ。

「………まさか」

俺の視線の先にあるのは、彼女のソウルジェム。

「……コンタクト」

俺は試しにソウルジェムに手を掲げて因果に接続を試みた。

「………出来たよ」

今度はノイズなしでクリアな因果情報が頭に流れ込んできた。

(こいつ、もしかして………)

俺は頭に浮かんだ考えを頭の片隅に追いやった。
今やるべきことは、彼女の因果を調べることだ。
死にかけたということは、彼女の運命はもう終わっているはずだ

(やっぱり止まってるな。……やっちゃいけないけど、因果情報の拡大で彼女の死の時期を遅めるか)

因果情報の拡大は寿命を延ばすことになるので、やってはいけない禁術だ。
やれば、俺も何かしらのペナルティーが科せられることになるが、それを無視して俺は因果情報の拡大処理をした。

(代償は魔法少女でもやめて貰うことだな)

俺はペナルティーを軽くするために、代償を取る。
ついでに、魔法少女をやめさせるのは簡単だ。
因果情報から削除すればいいのだから。

「因果情報の削除完了。後はクローズ」

俺は接続を閉じた。

「………やっぱりあのソウルジェムは」

俺は目の前に浮かび上がる黄色の球体を見ながら、確証を得た。

「彼女の魂そのもの。そして、あいつがやったのは、魂を抜き取ることか」

俺はこの時、魔法少女の正体と絶対的な弱点が少しだけ見えたような気がした。

「まあ、この魂を肉体に括り付けないと」

俺は小さくため息をつきながら巴さんに魂を戻す。
彼女を助ける術式を終えた時、もう深夜の3時だった。
俺は、巴さんに毛布を掛けると、玄関先で寝た。










「う……ん」

次の日の夜。
体中にこびりついた化学薬品の液体によるダメージを回復させている時、眠っていた巴さんが目を覚ました。

「起きましたか? 馬鹿2号の巴さん?」
「馬鹿2号ってどういう意味かしら?」
「そのままの意味です。出来る事をする努力もしない人や、同じ過ちを繰り返す人の事です」

早速険悪な雰囲気になってしまった。

「ところで、ここはどこかしら?」
「俺の家です」
「………なんで助けてくれたのかしら?」

しれっと言う俺に、呆れたような視線を送った巴さんは、そう聞いてきた。

「最初に会った時に助けてもらった借りがありましたからね。借りを作られたまま死なれると、こっちも居心地が悪いもので」

助けてもらったお礼はちゃんとするのが俺の流儀だ。

「一度しか説明しないので、よく聞いてください。あなたの魂の具現化であるソウルジェムを消滅させて、魂をあなたの体に戻しました。あと因果の方もいじくって死の運命を変えましたので」

俺はいちいち説明するのがめんどくさいので、やったことを一遍に言った。

「そういえば、ソウルジェムが見当たらないわ」

巴さんが辺りを見渡しながら呟くと、俺の方を睨んできた。

「ソウルジェムが魂の具現化ってどういう事かしら?」
「おそらくですが、キュウベぇと契約した際に、魂を抜かれたのでしょう。それが形となったのがソウルジェムです」
「………嘘を言っている様子ではないようね」

完全に信じてはいないが納得はしたようだ。

「俺はあなたの運命の情報が詰まったもの……因果に接続して、魔法少女の力を消去し、死の時期を遅らせました」
「………」

俺の説明に、巴さんは俺を信じられないものを見るような目で見た。

「あなた一体何者なの?」
「そうですね……いいでしょう、お話ししましょう。俺の正体と目的を」

そして俺は巴さんに、自分の正体と目的を話した。

「なるほどね……にわかに信じられないけど、目の前で見せられてはね」

俺の話を聞き終わった巴さんは、俺の話を信じてくれたようだった。

「信じるも信じないもあなた次第です。それよりも、今後に関してです」

俺は話題を変えた。
ここからが問題だ。

「とりあえず、あなたはまどか達の中では死んだことになっています。なので、ここから出ることは控えてもらいたいんです」
「………それも、あなたの目的のためかしら?」
「一概にそうだとは言い切れません。あなたがいなくなったことによって、状況が動くかもしれませんので。理解していただけましたか?」

巴さんに俺は、そう答えることしかできなかった。
彼女が死んでいるということが、今後にどのような変化をもたらすかがいまだに不明なのだ。

「そうね……渉様のお言葉にに従わらせてもらいます」
「様付けはやめてください。今(・)の俺はあなたの後輩ですので」

もとより、俺は様付けで呼ばれるのに慣れていない。

「それでは、悪いんだけど、私の部屋から着替えとか持ってきて貰えるかしら?タンスの中にしまってあるはず。あと出来れば中身を見ないで」
「………了解しました」

俺はそう答えるしかできなかった。
つまりはタンスごと持ってこいと言う事か?

「後、あなたには特権で魔法少女になって戦うことが出来ます。ただし1回だけなので、使いどころを考えてください」

俺は彼女にそう言うと、着替えを取りに彼女のマンションに向かった。
ちなみにタンスは俺の力で、移動させました。
戦いのとき以外で力を行使するのは、これが初めてだ。










そして現在。

「それで結局、あれの原因は分かったのかしら」

俺の目的を果たすために、協力してもらっている巴さんが尋ねてきた。

「はい。確証はまだですが一名思い当たる人物が」

俺はそう言って空中に一人の少女の顔写真を表示させる。
それを見た巴さんの表情が険しくなる。

「やっぱり彼女なのね」
「はい。世界の原初物質(プリマテリアル)の不安定化をもたらした、諸悪の根源である可能性が高い最重要候補人物……」

俺もその少女を見る。
絶望をしているようなマイナスオーラを醸し出す少女。

「――――暁美 ほむら」

暁美さんを。

(お前が俺の”敵”なのか?)

俺は心の中でそう問いかける。
その問いかけに、答えは返ってこなかった。

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