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黄昏の部屋(別館)

こちらでは、某投稿サイトで投稿していた小説を中心に扱っております。

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【案内板】

黄昏の部屋(別館)

当サイト、『黄昏の部屋(別館)』へようこそ。
こちらでは某小説投稿サイトで、私TRcrantが投稿していた小説を掲載しています。
読まれましたら拍手や感想などをして頂けると執筆意欲向上に繋がったりします。
(『その力の先にあるもの』と『IS(インフィニット・ストラトス)~破門されし者~』は、本館の方にて掲載されています。)

*注意*
本サイトの小説はすべて二次創作です。
そのため、突然の削除などが行われる可能性がございます。
二次創作が苦手な方は、ご覧になられないことをお勧めいたします。
拍手または感想等を募集しております。
拍手コメントでレスが不要な方は、拍手コメント時にその旨をコメントに明記してください。
明記されてない場合は、HN共々雑記にてコメント返しにて表記されますのでご注意ください。
注意事項はこちらをご覧ください。
他、明記されていない細かい注意点は本館と同じですので、そちらの方をご覧ください。

それでは、ごゆっくりとお楽しみください。

===更新履歴(最新の3日分のみ表示)====
・2月2日
『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』第123話と外伝を掲載しました。
雑記を掲載

・9月11日
『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』第122話を掲載しました。
雑記を掲載

・7月23日
『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』外伝を掲載しました。
雑記を掲載
=======
掲載作品一覧

・魔法少女まどか☆マギカ~革命を促す者~

・魔法少女リリカルなのは~目覚めた力~

・魔法少女リリカルなのはstrikers~失った力~

・DOG DAYS~誤召喚されし者~

・ティンクル☆くるせいだーす~最高神と流星の町~

・魔法少女リリカルなのは~目覚めた力~RB

・To Loveる~二つの人格を持つ者~

・けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~

・二人の神と欲望に駆られた人間たち


・カミカゼ☆エクスプローラー~無を司りし者~

・プリマ☆ステラ~二人のコウスケ~

・スズノネセブン!~魔法が使えない魔法使い~

・涼風のメルト~土地神を補佐する者~

拍手[21回]

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外伝3 そしてそれは宿題となる

翌日、学校が休みであることを前もって伝えておいたため、挨拶をするべくお昼過ぎに例のプロダクションを訪れると、すぐに男性に引っ張られるように置くまで移動させられた。
「それでは、紹介しよう。この子が今日から我がプロダクションのメンバーになった。待望の新人だ」

すでにここのメンバーの人は全員集まっていたようで、僕の紹介が行われた。

「それじゃ、順番に紹介していこうか。まずは……」

社長は次々に事務所に所属している人物の名前を口にしていく。
ここ、”チェリーレーベルプロダクション”に所属しているのは主に二つのグループである。
最初は篠崎(しのさき) 葵(あおい)そして

「私は、中山翠。よろしく」

あの時、弦楽器で演奏していた黒髪の女性……中山さんが名前を口にした。

「わ、私は荻原涼子です。よろしくお願いします」

中山さんの隣で同じ弦楽器を演奏していた銀色の髪の女性……荻原さんが名前を告げるが、視線をあちらこちらに向けて落ち着きのない様子なのが少し気になった。

「僕は太田保と言います。よろしくお願いします」

あの時ピアノのような鍵盤楽器を弾いていた男性……太田さんは静かに頭を下げる。
何となく自信なさげな感じで、頼りなく見えるがさすがに初対面に等しい状況で決めつけるのは失礼だろう。

「俺は田中竜輝だ。せいぜい足を引っ張るなよ」

あの時僕にくってかかっていた金髪の男……田中さんは皮肉交じりに吐き捨てると、僕のほうから視線を外す。
この4人によって結成されたバンドグループ『prominence』である。
昨日、軽く調べてみたがこの二つのグループ名は一切ヒットもしなかった。
おそらくは、全く売れていないと考えた方が正しいだろう。

「私はここの社長の、荻原(おぎわら)  昌弘(まさひろ)だ。よろしく」

そして社長と呼ばれていた男性が最後に名前を告げる。
苗字が銀色の髪の女性と同じだが、もしかしたら親子かただの偶然かと結論付けることにした。

「そして、彼が……」
「社長、どうしたんですか?」

僕のことを紹介しようとした社長が、こちらを見たまま固まる。

「そう言えば、私としたことが名前を聞くのを忘れていたようだ」
「……高月浩介です。若輩者ですがよろしくお願いします」

そう言えば名前を言うのを忘れていたなと思いながら自己紹介をした僕は軽くお辞儀をする。
中身はともかく、外見は小学生なのだから少しばかり固すぎたと思ったが、これ以上砕けた言い方が思いつかなかったのでこれはこれでいいのかなと割り切ることにした。

「ちょっと硬すぎるような気もするが……まあ、いいか」

社長も首をかしげる始末だが気にしないことにした。

「では、皆グラスを持って」
「……」

今気づいたがテレビ台のある側のテーブルの上には,、軽くつまめる程度の物ではあるが食べ物と僕を含めた人数分の紙コップ、そしてお茶やジュースなどが入ったペットボトルが置いてあった。
グラスではないがわざわざ指摘するのも面倒だったので、僕は周りに倣うように無言で紙コップを手にする。

「っと、皆飲み物を入れてなかったね」

という社長の言葉で、各々が苦笑しながらペットボトルを手にした社長のほうへと歩み寄る。

(この和やかな雰囲気が、アットホームというやつか)

社長が飲み物の種類を聞いては、指定された飲み物を注いでいく社長を見ながらそんなことを考えていると、社長はこちらのほうへと顔を向けてくる。

「最後で悪いけど、ジュースがいいかね?」
「……いえ、お茶でお願いします」

なんだか子どものように見られている気がしてむっとしたが、よくよく考えれば外見が子供なので致し方ないなと思いながら、お茶を社長に注いでもらう。

「それでは、乾杯っ」

社長の温度に合わせてその場にいた全員も”乾杯”と口にすると、各々が飲み物を口にする。
これが僕の歓迎会(たぶん)だということを今更だが理解できた僕は、静かにお茶を飲み干す。
別に歓迎会自体が嫌いなわけではない。
いや、嬉しくないという人はよほどいないはずだ。
ただ、

「こんな小っちゃくてかわいい子が、新人さんかぁ~」
「ねえねえ、年はいくつなの?」

質問攻めをされてうれしいと思う人がどのくらいいるのかは別の話だが。

(小さい言うな)

父さんから外見を小学生程度にまで去れているのだからそう見えて普通なのだが、それでも言われると悲しくなってしまうのだ。
我ながらひねくれているなと思いながらどうしたものかと考えを巡らしていると、

「これこれ、あまり新人を困らせるものではないぞ」
「す、すみません。久しぶりの新人さんで、つい」

苦笑しながら注意する社長に、短めに切られた青髪の女性……篠崎さんは下をちょこっと出して片目を閉じながら茶目っ気に応えると僕から数歩離れていった。

「さあさあ、食べて食べて。今日は無礼講だ!」
「社長太っ腹です!」

なんだか僕を取り残して騒ぎ始める事務所の人たちを見ていると、寂しさを感じてしまう。
それは僕が未熟だからなのか、それとも……
色々と課題は山積みだが今はこのパーティーを楽しんでおくべきだと思った僕は、机の上に置かれた駄菓子に手を付けるのであった。










歓迎会のようなものが無事(?)にお開きとなり、片付け終えたころには時計の短針が”4”を指し示していた。

『pinky girls』のメンバーは全員ダンスレッスンのようでレッスン会場のほうに行っているため、今事務所にいるのは『prominence』のメンバーと社長と僕だけになった。

「さて、それでは彼は『prominence』の一員として活動してもらうわけだが……」

そして今行われているのは、今後の活動方針に対する会議だ。

「高月君。君は何が弾けるのかな?」

社長の疑問に思っているように、まず決めなければいけないのは僕が何の楽器を演奏するかだ。

「いや、その前にバンドとかそういうのを理解してねえだろ」
「あいにく、理解できています。ギターとベース、ドラムにキーボードによって構成されているんですよね?」

社長の方に確認の意図を込めて視線を向けると、社長は静かに頷いて応えた。

「それで、お前は何が弾けるんだ?」
「僕は……」

僕の出した答えが正しかったのが気にくわなかったようで、田中さんは不機嫌な顔を隠すことなく問いかけるが、答えに詰まってしまった。
それは別に何も弾けないというわけではない。
ただ単純に何が弾けると言えば良いのかに迷ってしまっただけなのだ。
物心がついたときから始まった、魔法に関する英才教育はさまざまな分野にわたり、その一つに音楽があったのだ。
とはいえ、習ったのはピアノの弾き方と歌ぐらいだが、その分野に見事にはまった僕は、音楽の分野を極めた。
その結果が、どのような歌でもうまく歌え、どのような楽器もうまく弾けるようになった。
尤も、それを知った父さんからは、呆れたような表情でため息をつかれたが。
それはともかくとして、当時はそれで構わなかったが、いざそれを利用しようとなると一つに絞るのは難しい。

(早く決めないと)

いつまで経っても決まらないことに、徐々に焦燥感を感じた僕は

「ギターですっ」

と、口にした。

「ギターか」
「中々にすごいチョイスだね」

周りの感心しているのか、それとも意外すぎて驚いているのかは定かではないが、各々が真剣な表情を浮かべながら口を開いた。

「よし、それじゃ軽く引いて見せてくれないかね。ギターは中山君のを使うといい」
「僕の腕を知りたい……ということですよね?」

僕の言葉に特に否定はしないよと応えた社長は、

「それでは中山君」

と、中山さんに声をかける。
それに“あいよ“と返事をした中山さんは、壁に立てかけられていた大きめのバック……ギターケースを手にすると、中からギターを取り出した。
まるで新品のようなそれは、とても大事に扱っているのが見て取れた。

「本当はアンプにつなぎたいところだけど、時間の都合で無理だからこれで勘弁な」

中山さんの言葉にさん達が社長に視線を向け、社長はそれから逃れるように何もない壁に視線を逸らす。
その一連の行動が、何となくではあるものの時間以外の理由があると思わせたが、それは僕に向けてギターを差し出してききた中山さんによって頭の片隅へと追いやる。
割れ物を扱うように中山さんからギターを受け取った僕は、ひもを肩にかけてギターを構える。

(何を弾こう)

問題はその一言に尽きる。
ここは簡単なものを弾いておくのが無難なような気がするが、それだとここにいる人たちになめられる可能性もある。姿形が子供そのものなのだ。
せめて技術の分野ではなめられないようにしたい。
それが僕の気持ちだ。
だからと言って、高い技術力を披露するのも気が引ける。
そんな複雑な思いで悩んだ結果

(中級レベルの演奏でやるか)

一応ではあるものの引くコードは決まった。

(人前で演奏するなんて初めて)

これまで一人の時にしか演奏をしていないため、どのような反応を見せるのかは予想できない。
もしもうまいと思っているのが僕の妄想であれば赤っ恥は避けられないだろう。
その不安が重圧なって僕にのしかかる。
でも、それは僕にとってはどことなく心地よくも思えた。
一度深呼吸をすれば、のしかかっていた重圧が軽くなっていた。

「いきます」

宣言ののちに始めたのは3つのコードを組み合わせた簡単な物だった。
やや難しめのコードを、素早く弾くことで難易度を引き上げる。
これならば、メンバーとなる人達が馬鹿にすることはないだろう。

(ふぅ……)

そこそこ良い感じに弾けた。
それが僕の最初の感想だった。
“井の中の蛙大蛇を知らす“という言葉もある。
自分の感想が自分よりも上の実力の人からすれば、大きく変わってくるはずだ。

「どうかね?」

暫しの沈黙を破った社長の言葉に最初に口を開いたのは荻原さんだった。

「私はとても良いと思います」
「僕も」
「あたしもいいと思います」

次々に頷いていく中、残ったのは田中さんだけとなった。
その田中さんはため息にも似た感じて息を吐き出すと

「俺もだ」

と
不機嫌な感じで頷くのであった。

「よし、では今日から君はprominenceのリードギターだ」
「………わかりました」

社長の采配に、驚きつつも返事をした。

(まさか、小学生の子供にリードをやらせるとは)

自分で子供だと思ってしまうのはいいのかとも思うが、それはこの際頭の片隅に追いやってもいいだろう。
それだけ、このリードギターというパートはすごい物だったのだ。

「さて、彼のパートが決まったところで今この活動について何だが。まずは中山君、現状について説明してくれるかい?」

社長の言葉を受けて、中山さんが説明を始めた。

「現時点での演奏のオファーはなし。コンテストに応募をするも、すべて予選審査で落選という状況です」

中山さんの口から告げられたのは、予想よりも遙かに厳しい状況だった。

(スキル不足かそれとも……)

いずれにせよ、この状況を変えることがまず先決だろう。

「あの、一つ提案があるんですけど」
「お、早速意見を出すか。やはり君は才能があるね」

それはいったいどのような才能かとツッコミたい気持ちを抑えつつ、僕は提案を口にする。

「バンド名とメンバーの改名はどうでしょうか?」
「は?」

“何を言ってんだ?“といわんばかりの視線でこちらを見る田中さんを無視しつつ、僕は言葉を続ける。

「音楽系統は毎日何組ものバンドが誕生しています。そんな中で輝くにはインパクトが必要です」
「つまり、インパクトが出るようにバンド名を変えるということかね」

僕の頷きに、“でも“と口にしながら荻原さんが意見を言い始めた。

「私たちの名前まで変える必要はないと思います」

その荻原さんの言葉に他の人達も頷く。

「本名ではなく、完全な偽名で、なおかつ正体がわからないという感じにするだけで関心を持って貰いやすくなると私は思いますけど」

音楽の世界は非常に過酷な物だ。
日々数多ものバンドが結成されている。
今日まで有名だったバンドが明日には新たにできたバンドによって埋もれてしまうことだって日常茶飯事だ。
そんな世界に足を踏み入れるということは、それ相応の対策を講じなければならない。
それがバンド名の変更だった。

「……俺は賛成だ」

突如として口を開いたのは田中さんだった。

「田中さん?」
「一体どういう風の吹き回しです?」

他の人達が驚いているほど、田中さんの賛成票は意外だったのだろう。
かくいう僕も、まさか味方になってくれるとは思ってもいなかったので、内心かなり驚いていた。
厳密には感動するほどだが。

「別に深い意味はねえさ。ただ、最近マンネリ化していたのは事実だし、ここいらでイメチェンしてみるのも良いと思っただけだ。ま、このガキと同じ意見なのは癪だがな」
「……」

先ほどまでの感動はなんだったのだろうか。
ものすごく裏切られたような気持ちにもなる。

(やはりこいつは僕の敵だ)

僕は再度田中さんを敵認定した。
ちなみに、この田中さんの言葉は彼なりのからかうという意図があったのだが、そのことに僕が気づくことになるのはかなり後のことであった。
閑話休題。

「それじゃ、名前を変えるとして、案は考えているのかね?」
「……」

当然ともいえる社長からの問いかけに、僕は何も言えなかった。
別に自分の案を口にすることが怖いというわけではない。
確かにバンドの名前というのは、ある意味グループの根幹部分でもある。
それをいじくるのはかなり神経を使う。
だが、今僕が何も言えないのはそれが理由ではない。

「……まさかとは思うが、案を考えてないなんてことはないよな?」
「………」

そのまさかだ。
それゆえに何も言うことができなかった。
だが、僕の沈黙が答えとなってしまったようで、田中さんは一つ深いため息をつく。

「………すみません」
「いや、謝らなくてもいい……っていうより、相手は子供なんだから少しは加減しなさいよ」

周囲からの何とも言い難い視線に、身を縮まらせながら謝るとはっとした表情で慌てて両手を振る中山さんは田中さんのほうに顔を向けると、表情を引き締めながら田中さんに注意した。
言われた本人はそっぽを向いて頬を掻いていたが。

(なんなんだろう、この虚しさは)

自分では子供ではないと思っているのに、子供である立場を利用してその場をごまかそうとしている自分に、何とも言えない虚しさを感じた。
そのような虚しさを感じていると、今までの雰囲気を切り替えるように社長が手をたたく。

「それじゃ、こうしようかな」

僕たちの視線が集まる中、そう前置きを置いたうえで、社長は言葉を続ける。

「浩介君、君に”宿題”だ。新しいグループ名を次にここに来るまでに考えておくこと」

(”宿題”とはまた絶妙な言い回しをしてくれる)

「そうだね……次は楽曲とか方針とかを決める必要があるから明日ということにしよう」
「わかりました」

いい笑顔を浮かべながらさらりと悪魔めいたことを言ってくれると思いながら、僕はそれお受け入れた。
こうして、僕はバンド名を考えるという宿題を課されるのであった。

拍手[0回]

『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』最新話公開

大変ご無沙汰しております。
まずは、お詫びから。

一年以上、サイトの更新を滞らせてしまい、大変申し訳ありませんでしたっ!!
仕事の関係でサイトの更新にまで手が回らない状況が続いておりました。

これからもできる限り定期的な更新を目指しますが、長期間更新が滞る可能性は否定しきれません。
その際は温かい目で見守っていただけると幸いです。


さて、久しぶりの更新は『けいおん!~軽音部と月の加護を受けし者~』になります。
修学旅行編もあとわずかとなりました。
次回も早めに更新できるよう執筆を進めておりますので、今しばらくお待ちいただけると幸いです。

この更新をきっかけとして、他の作品の更新につなげていきたいなと思う今日この頃です。


それでは、これにて失礼いたします。

拍手[0回]

第123話 迷走

「それじゃ、そろそろ帰るか」

色々と騒動もあったが自由行動の時間は、澪の言葉によって終わりを告げようとしていた。
なぜならば、リミットである夕食の時間が迫ってきていたからだ。
青空だった空もオレンジ色の光に染められているので、今の時間帯が夕方であるのは時計を見なくても明らかだった。

「帰りは電車にしましょう」
「そうだな」

ムギの提案に反対する者はなく、僕たちは律の案内の元駅に向かって歩き出した。
色々とあわただしかったが、それでいていい思い出になったと余韻に浸りながら旅館に戻る。





―――はずだった

「あれ?」

それはふいに立ち止った律の一言から始まった。

「まさか迷ったなんて言わないよな?」
「……迷ってない」

僕の問いかけに、僕たちに背を向けたまま律が応えるが、その様子だけで答えているのは明らかだった。
何となくおかしいとは思っていた。
律について行くとだんだん住宅街へと街並みは変わっていくのだから。

「あははっ、もう駄目だよ~」

そんな中、突然聞こえてきた陽気な声に、後ろにいたであろう唯のほうへと視線を向ける

「そんなに舐めたらくすぐったいよ~」

飼い犬であろうブルドック(たぶん)に頬を舐められている唯の姿があった。

「なんだかこっちはものすごく平和だよね」

色々な意味で唯は平常運転だった。

「律」
「だから迷ってなんかいないぞ」

ふと律のほうを見た僕が声を掛けると、律がやかましそうな声色で返事が返ってきた。

「いや、そういうことを言いたいわけじゃないんだけど」

僕はそう言いながら、人差し指を律の後ろのほうに向ける。
その先にいたのは買い物帰りだろうか、手に白いビニール袋を持ちながら歩く女性だった。
ここは住宅街。
買い物帰りの主婦がいてもおかしくはない。

「あの人に駅までの場所を聞いてみたらどうだ?」
「……迷ってないからな」

いまだに迷っているか否かにこだわる律に”はいはい”と適当に相づちを打ちながら行くように促す。

「あ、あの! すんまへんっ」
「な、なんで京都弁?」
「まだ続けてたのか、京都弁ゲーム」

何故か京都弁(?)で話しかける律に首をかしげる僕に続いて、やれやれと言わんばかりの声を上げる澪。
まるで異国の地に来たようにたどたどしく道を尋ねる律に、買い物帰りの女性は困惑した様子でジェスチャーを交えながら駅までの道を律に教えるとそのまま去っていった。

(絶対に変人に思われてるよな、あれ)

「~~~っ、通じたよ~!」
「律ちゃんおめでとう!」

そんな僕の不安など知る由もなく、抱き合う唯と律の二人のもとに、澪が歩み寄る。

「それで、場所は分かったのか?」
「もちろんさ。さあついてこーい!」

自信たっぷりに答えた律の導きの元、僕たちは今度こそ駅に向かって歩いていく。





「……迷った」
「……今更認めなくてもいい」

先ほどよりも小さな声で迷ったことを認める率に突っ込む僕の声にはどことなくため息が混じっていた。
それもそのはずだ。
律についていくこと数分、たどり着いたのは一軒家の前だったのだ。
しかも駅のえの字も感じられない雰囲気の住宅街。
これで迷っていなかったら、確実に故郷に連れて行っていることだろう。
……悪い意味で。
それはともかくとして、問題はここからどうするかだ。

(そういえば、今朝迷った時の対処法を言われていたっけ)

あの時、朝の一件があって、よく聞いていなかった自分をぶん殴りたい。

「あ、そうだ!」

そんな中、唯が何かを思い出したのであろうまるで彼女から光が周囲を照らしているのではないかと思うほどに、笑みを輝かせる。
そんな彼女がおもむろに取り出したのは、何の変哲もない携帯電話であった。

「おぉ!」

どうやら山中先生の携帯に連絡して助けを求めるようだ。

(というより、それを思いつかない僕って……しかも携帯忘れてるし)

ふと気になってバッグの中やらポケットの中を確認してみると、案の定携帯を忘れていた。
携帯などなくても魔法などを使えば簡単に連絡ができるため、持ち運ぶ癖が未だについていないのだ。
どちらにせよ思いついていても、唯の力を借りることになっていたみたいだ。
それはともかくとして、携帯を取り出した唯はそれを耳に当てる。
相手は引率者である山中先生だ。

「――――あ」

しばらくの沈黙ののち、唯の表情が和らぐのを見て、山中先生が電話に出たんだと悟った。
きっとこの後、一言二言注意を受けることになるんだろうなと思いながら、電話が終わるまで待つことにする。

「あ、もしもしあずにゃん? 私たちね今迷子に――――」
「「梓に電話をしてどうする!!」」

予想外の名前に前にずっこけながら唯にツッコミを入れた。

「梓は魔法少女とかじゃないんだから」
「あ、そうか」

澪と同時にツッコミを入れたことが功を奏したのか、唯はなるほどといった表情で頷くとそのまま電話を切った。

(なんとなく、梓が呆れているような気がする)

きっと電話口では半目になって呆れたような表情を浮かべていたに違いない。

(まあ、梓にはあとでフォローを入れとくとして、問題は今この場をどうやって乗り切るか……か)

結局のところ、どうやって駅まで向かうのかという話になってしまう。

「唯ー、澪―!」
「あ、和ちゃん!」

詰んでしまった僕たちに声をかけてきたのは、真鍋さんだった。
まさに救世主のように頼もしく見えた。
それは他のみんなも同じだったようで、澪たちの表情に希望のようなものが満ちていた。
律に至っては感極まって真鍋さんたちのもとに駆け出すほどだ。
だが、この時の僕はあることを失念していた。
このような入り組んだような場所の住宅街に、真鍋さんたちがいるのは不自然だということに。

「助かっ―――」
「駅まではどうやって行けばいいのかしら?」

真鍋さんの問いかけに返ってきたのは、律がヘッドスライディングする音だった。

「そっちも迷ったんだ」
「ということは、高月君たちも?」

律の行動ですべてを悟ったのだろう、真鍋さんは困ったような表情を浮かべながら聞き返した。

「こうして一緒になったのも何かの縁。一緒に駅まで行かないか? というより、行ってください」
「そうね……そのほうがいいようね」

このままだと半永久的に迷子になるという嫌な予感がした僕の懇願が通じたのか、苦笑しながらも聞き入れてくれた。

「ということだから、いい加減起きろ」
「……なんだか、扱いがひどいぞー」

力尽きたといわんばかりに倒れ伏している律に声をかけた僕は、抗議の声を上げる律をしり目に時計を確認する。

(もう時間がないな)

切羽詰まっているというわけではないが、あまり時間をかけることができない状態の時間になっていた。

「和ちゃんについていけば安心だね」
「……ですね」

いつの間に来ていたのであろう、唯がハンカチで律のスカートや顔の汚れた場所をぬぐっていた。
見ると真鍋さんたちは澪とムギを交えて、地図をそれぞれが手を伸ばして指示しながら駅までの道を話し合っているところだった。
確かにこの人たちに任せていれば大丈夫かもしれない。

「ところでさ、浩介」
「何?」

そんな光景を見ていると、律から声をかけられる。
その口調はとても真剣そうだった。

「浩介の力なら、これ一瞬で解決できるんじゃないのか?」
「そうだね! 浩君は魔法使いだもんねっ」

魔法のことをぼかして聞いてくる律と、まるで太陽のように明るい笑みを浮かべながら声をすぼめる唯。
確かに二人の言うとおりだ。
こういう時こそ魔法の出番だと思うのが普通だろう。
この状況でおあつらえ向きなのは転移魔法だろう。
A点とB点の二か所を一直線に結んだ空間(亜空間)を移動することによって可能となる魔法で、僕たち魔法使いが習得する魔法の一つだ。
ちなみにこの転移魔法も、人によってさまざまでA点とB点の空間を強引にくっつけて(亜空間を使わないで)移動するものもある。
亜空間は一瞬で形成でき、それほどのリスクがないのが特徴だが、非常に不安定で出口である軸がぶれやすいデメリットを持っている。
軸がぶれる要因は様々で、対象地点が複雑に移動していたり亜空間の形成・移動時に外部から何らかの干渉を受けたりなど等々があげられる。
ちなみに、”VS”を用いた転送システムによる移動は、このリスクが軽減されているだけで、リスクがなくなったわけではない。
何せ同じ亜空間形成型なのだから致し方がない面もあるが。
 
閑話休題。

「確かにそうだけど、この状況でそれを行うことはできない」
「え? なんでだよ」

納得できないといった様子で首をかしげる率に、僕は軽くずっこけそうになった。

「あのね……いったい何のためにあの宣誓書を書いたと思ってるんだ?」
「それは、浩介を受け入れるという証明のためだろ?」
「浩君もそう言ってたよ」

僕の問いかけに対する二人の答えに、僕は昨年のことを思いだす。

(確かにそんなことを言っていたかも)

自分ではちゃんと言っていたつもりだが、聞きようによっては本来の目的が分からないかもしれない。

「すまない。少々説明が足りなかったみたいだ」
「どういうこと? 浩君」

僕が謝ったことに不安を感じたのか、唯が心配そうな表情浮かべる。

「僕たちの世界では魔法文化のない場所で、魔法が使えない人たちに故郷や魔法のことを知られるのが固く禁じられているんだ」

原因は魔法文化のない世界で受けた”魔女狩り”にある。
魔法のことを恐れた者たちが魔法使いを化け物と決めつけ、魔法使いたちを根絶やしにするため(理由についてはいろいろと諸説がある)に行われた惨い事件。
これによって魔法が使えない人たちへの怒りは計り知れぬほどに膨れ上がったのだ。
一時期は魔法が使えない者たちを根絶やしにする”人魔戦争”なるものまで計画されていたらしい。
もっとも、それはさすがにまずいと判断したのか、魔法連盟によって阻止されたので起こってはいないが。
そのような経緯もあって、何十年も時間が経った現在でさえ、魔法が使えない人間に対する風当たり(差別ともいうが)は強く、魔法が使えない人間(厳密には魔界に住んでいない人だが)と魔法が使えるものが、同じ経緯で罪を犯してもその刑罰は天と地の差があるのがいい例だ。
ちなみに、僕にケンカを売った探偵野郎は、魔法が使えない人たちを滅ぼせといまだに言い続けている者たちの怒りを和らげる目的で生贄として捧げたが、その後の消息は明らかになっていない。
何の情報も入ってこないが、あの男が生きている可能性は皆無であることはなんとなくではあるが悟っていた。

閑話休題。

「魔法を使っているところを見られた場合は、その人物の記憶から魔法に関することを消去しなければならない」
「でも、私たちは消されてないよ」

首をかしげる律だが、それもそうだろう。
そのための宣誓書なのだから

「宣誓書にサインをした者は例外。記憶を消す必要がない」
「なるほど。だから私と律ちゃんは大丈夫なんだね」

納得した様子で相槌を打つ唯を見て、僕はさらに話を進める。
唯が理解できていれば律もちゃんと理解できていると思ったからなのだが。

「ここは住宅街。何時人が来てもおかしくはないし、それに真鍋さんたちもいるからおいそれと魔法は使えない」
「そっかー。残念ですわね、唯隊員」
「なぜにそこまで残念がるんだ……と、どうやら向こうも終わったみたい」

どうしてそこまで残念がるのかが分から図に首をかしげていると、どうやら澪たちのほうも駅までの道を確認し終えたのか、こちらのほうに向かってくるのが見えたため僕は話をいったん終わらせる。

「それじゃ、行きましょ」

そう告げて歩き出す真鍋さんはどことなく頼もしく見えた。

(やっぱり、魔法なんてものがなくても十分やっていけるんだな)

少し前の僕であれば、魔法が使えない人に完全に任せるということはしなかったであろう。
見下しているつもりはないが、どのようなことに対しても魔法にはかなわないと思っていた。
だが、最近は時頼人のみでありながら魔法の効果と同等の……いや、それ以上の効果をはっきりしている場面を見ていて考えが変わり始めていた。
そしてそれは同時に、僕自身がこの場所世界に、馴染み始めている証でもあるような気がした。

(まあ、それよりもまずは旅館に戻ることを考えようか)

僕はいったんそこで考えることをやめると、地図を片手に歩きだす真鍋さんたちの後をついていくのであった。





いろいろと大変ではあったが、何とか駅にたどり着いて旅館に戻ることができた。

「……あれ?」
「さっきの場所だね」

わけがなかった。
僕たちがいるのは、先ほど真鍋さんたちと合流した場所だ。
そう、僕たちは見事に元の場所に戻ってきてしまったのだ。
僕たちの間に何とも言えぬ重苦しい雰囲気が漂い始めた。
唯と律にムギの三名はいつも通りだが

「和ぁ」

澪のほうは涙目になっていた。
誰がどう見ても、僕たちはいまだに迷っている。

「ちょっと待って。もう一度地図を確かめるわ」

そういってもう一度地図を確かめ始める真鍋さんを見ながら、どうしたものかと考え始めると

「しゃれこうべ」

と、全く関係のない単語が聞こえてきた。

「っく……くく」

その関係のない単語に顔をうつむかせながら肩を震わせる澪の様子は、必死にこらえているようではあるが笑っているようにしか見えない。

「しゃ」
「っぷ……あはははは」

その単語を口にした律が再び口を開くと、今度は笑い出した。

「み、澪ちゃんが壊れた」

驚いた様子でつぶやく唯のその言葉はある意味的を得ていた。

(うーん。どうするべきか)

彼女たちに任せておけば大丈夫。
僕の出る幕はないと思っていたが、少々雲行きが怪しくなり始めた。
腕時計のほうにふと目をやると、人知を超えた力でも使わない限り、どうやっても食事の時間までに戻ることは絶望的な時間だった。
要するに、魔法を使うしかないということだ。
だとするとどうやって使うのかが問題になる。

場所は住宅街。
どこから見られているのかがこちらからでは分かりづらいという、魔法を使う上ではあまりいい環境ではない。

人員は魔法のことを知っている人物に加えて、魔法のことを知らない人が数名。
人数的には何人になろうが問題はない。

基本的に増えれば増えるほど消費する魔力量も大きくなるが、そうそう魔法を使わない現在の状況下ではさほど問題はない。
あるとすればやはり魔法の存在を隠匿するという部分だろう。
魔法という文化が存在しない世界において、魔法や故郷の存在を知られることを禁じている法律はどこにも存在はしない。
いわゆる、不文律というやつだが、これを守らないといろいろと面倒なことになる。
主に魔法連盟長からの”ありがたいお話”をいただくという意味で。

(さすがに修学旅行帰りに何時間も説教されるのは勘弁だ)

父さんが一度説教を始めると、軽く10時間位続くというのが、魔法連盟内ではある意味有名な話だ。

(それだとしたら、どうしようか)

真鍋さんたちに魔法の存在を知られずに魔法を使う方法を見つけようと、僕は必死に考えを巡らせる。

(そうだっ)

そこでふと思いついたアイデアが、僕の頭の中にすさまじい速さで作戦を組み立てさせた。

(あれだったらそうそう問題もないだろうし……よし。これでいこう)

こうして僕は、夕食に間に合うように旅館へ戻るべく作戦を開始するのであった、

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新年を迎えて

こんばんは、TRcrantです。

現在、喪中のため新年のご挨拶は上記のようにさせていただいております。

さて、昨年はかなりの間更新ができず大変申し訳ありませんでした。
今年は一作品でも多くの作品が更新できるよう全力で取り組んでいきたいと思います。
どのくらいの時間がかかるかはわかりませんが、今年も一年よろしくお願いします。

そして、重要なお話ですが、現在新作のほうを考案中です。
原作は『DOG DAYS』
タイトルは『DOG DAYS ZERO』です。

内容としましてはアニメ3期で語られた英雄王たちの過去の話を題材として深く掘り下げたものにする予定です。
また、新たなオリキャラ(この作品での主人公)を一人加えていく予定です。

執筆開始時期については決定し次第こちらでお知らせをいたしますので、楽しみにしていただけると幸いです。


それでは、これにて失礼します。

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